ブログという名のちょっとした書き物の場

ちょっとした、あまり重要ではないかもしれないけれども、暇な時にちょっと読もうかなあと思えるようなお話を書いていこうかと思ってマス

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短編【悪魔の祭壇場】



――
は?ルームシェア?私と、お前がか?
 ――うん、どう?
 ――嫌だね。ルームシェアなんてしたら男を自由に連れ込めなくなるじゃないか。それにお前のファンにも恨まれる。得することが全く無い。
 ――………家事は全部僕がやるよ?
 ――何っ?!
 ――洗濯も掃除も料理も全部僕。そんで加奈は家賃と光熱費半分払うだけでいいよ?
 ――…………
 ――どうする?
 

 
「何か用か?というか私の部屋に勝手に入ってくんなと何度言えばわかるんだ。最低限のマナーとしてノックぐらいしたらどうだ?」
「うわその反応ひどいよ加奈っ!!その態度、いつもよりも冷たいよ?!」
 目の前にいる一般的には美形と呼ばれるであろう腐れ縁の青年は幾つになっても精神年齢が低いままだ、と思う。
「こっちは折角の休日の一時を楽しんでたんだよ。それを邪魔した蒼に私の機嫌についてとやかく言う権利は無い」
 ソファーにふんぞり返って座っている私を見て、蒼は盛大に頬を膨らませた。
 おいおい。それは二十を過ぎた、もう社会人になっている男のやる行動じゃないぞ?まぁその無駄に整っている顔のおかげで、きっと他の女の人がみたら庇護欲なるものをそそられるのだろうが、それはあくまでも『私ではない他の女の人』が見た場合であって、私にとってそれは今まで見た気持ち悪い顔ベスト一位ものだ。
ついでに言うと気持ち悪い顔ベスト十は全て蒼が占めている。
「そんな気持ち悪い顔をするぐらいならどっか行ってくれ。今日は同僚と鍋パーティーをする予定なんだ」
 同僚の婚約祝いなんだ、と付け加える。
「ここで?」
 蒼はかなり機嫌が悪そうだ。さっきよりは小さくなったが、まだ頬が膨らんでいる
 しかし、まぁ、仕方ない。
「ああ。皆一人暮らしの狭い部屋だから無理なんだと。良いだろ?ここは私と蒼の二人暮らしにしては広すぎるぐらいだし」
 事実、二人暮らしで4LDKは十分な広さだろう。蒼の叔父さんがこのマンションのオーナーだから、その関係で家賃もかなり良心的な値段になっているし。
 実家を出るにあたって一番心配だった家事は蒼がやってくれているから今の生活はかなり快適だ。
 ――ただし、ある一つの事を除いては、だが。
「何で僕に何も言ってくれなかったのさ。」
「さっき決まったばかりだからな」
 しれっと答えると蒼は憮然とした感じで「どっちにしろ僕が加奈に話し掛けなかったら何にも言わなかったくせに」と言った。
 いやはや、学習能力があってよろしい。うんうん。
 私が満足そうに頷いているのを見て蒼は更に頬を膨らませた。
 ………だから気持ち悪いんだって、その顔。
「いつから?」
「もうすぐ来ると思うが……パーティーの間蒼はどっか行っててくれないか? …というか今日は外で女でも捕まえて外泊してきてくれるか?」
 そう言うと蒼は一気に顔を赤くさせた。
 あーからかいがいのある可愛いやつめ。
「な………っ!!なにそのあけすけな言い方っ!」
「いや私もこんな事は言いたくないさ、勿論。だけどお前、未だに彼女いないんだろ?彼女の家に泊まれ、とも言えないじゃないか」
 蒼は律儀にもうっ、とつまった声の返事をくれた。
 素直でよろしい。
 

 蒼は人生で一度も彼女というものが出来たことがない。
 それはその整いすぎた、下手すれば女よりも美しい容姿に原因がある。高校、大学時代に蒼とその周りを見て学んだが、女達は自分より綺麗すぎる男はそうゆう対象にはしないようだ
 たまに蒼にアプローチをする女もいたが、皆、勘違いも甚だしいぞと言いたくなるような自意識過剰な女ばかりで流石に蒼もそんな女を彼女にしようとは思わなかったようだ。
 それにもしても本人は彼女が出来た事がない事を本気で気にしている様子でもない。どちらかというとのんびりとしている。いや、のんびりしすぎだろ、と言いたくなるくらいに彼女を作ろうとしない。こいつ同年代の友達の多くががそろそろ結婚するか、と言っているのを全然知らないのだろうか。
「もっと積極的にいかないと彼女なんて一生できないぞ」
 ぼそりとそう言った瞬間、蒼の目がキラリと妖しく光った(ような気がした)
「積極的にいっていいの?」
「はぁ?蒼は積極的じゃないから彼女ができないんだよ。お前が行動しない限り、今までみたいに女の子達はお前の事を高嶺の花だと思ったままで終わるぞ?」
「ふぅ〜〜ん」
 私が真剣に言ったというのに、蒼ににやにやと笑いながら返事された。
これにはちょっといや、大分ムカついた。
「お前に彼女ができないと私も告白してきた男達に満足な返事ができないじゃないか。昨日告白してきた奴なんてかなりの優良物件なんだぞ?」
 腹立たしい気持ちをそのままに、強い口調で当て付けるように言った。
 そうだ、蒼はともかくとして私に今彼氏がいないのは蒼のせいなのだ。
 
快適であるはずの生活の中で、一つだけ、不満がある。
 
 
 
 ――家事は僕がやるし家賃とか光熱費とかは半分で良いんだけど、一つだけ、条件があるんだ。
 ――…………何だ?
 ――僕が彼女ができるまで加奈も彼氏を作らないで?
 ――はぁっ?!なんだその理不尽でお前の我が儘でしかない条項はっ!!
 ――だってノロケとか聞くの嫌なんだもん。
 ――そんなのがあるなら……っ!!
 ――家事は全部僕がやるんだよ?
 ――………ううっ。
 ――加奈、自分で自分がどれだけ家事ができないか、わかってない訳ではないよね?
 ――………ううっ。
 ――どうする?
 
 
 
 そうだあの条項の存在からしておかしかったんだ。でも蒼に彼女さえできれば全て解決、オールオッケー。
 さらば禁欲生活
「へぇ、優良物件ねぇ。あの約束が無かったら直ぐに付き合ってた?」
「ああ、勿論だ。給料も顔も性格もセックスも申し分無い奴だぞ」
 ふん、とふんぞり返って答えたら蒼に思いっきり睨まれた。
「加奈?そいつと寝たの?昨日は残業で遅くなるって言ってたけど、まさか……
 しまった。女遊びもとい男遊びも禁止されているんだった。
 まぁここは堂々とした者勝ちだろう。
「昨日だけだ。それもこれも蒼のせいで溜まっていたからだぞ。今までもった事を誉めて欲しいぐらいだ。もう我慢の限界だから蒼も早く彼女を作れ。女なんてディープなキスでもかまして微笑んでやればどんな相手でも落ちると思うぞ。というかお前に好きな女なんているのか?」
 蒼は私と違って硬派だから好きでもない女にどうこうするつもりはないだろう。
「いるよ。ずっと前から好きな女の子。僕の気持ちに全然気付いてくれないけどね」
 とても拗ねたようにそう言うところからして、その女は相当なにぶちんなんだな。蒼も可哀想に。
「そんな鈍感な女にこそディープなキスをかまして微笑んで『愛してる』とか言いながら押し倒すのが一番なんだよ!!」
 早くこの禁欲生活から解放されたい。その一心で蒼を説得しようと試みた。
 
 ――後でこのことを激しく後悔することを知らずに。
 
「やっぱりかなり強引なくらいがいいの?」
 キラキラと瞳を輝かせて聞いてくる。
 よし、のったな!
「ああ、勿論だ」
「加奈も?」
「ああ勿論……ってなん」
 何でそんな事を、という言葉が発せられる事はなかった。
 
 蒼の唇に私のそれが塞がれたから。
 
「んんっっ………蒼っ!」
 唇が離れた時にそう叫ぶように言った。なのに蒼は。
 にこりと無垢な笑みを浮かべて「加奈が言ったんだよ?」と言った。
 両手首を顔の横で抑えられているから抵抗もできない。しかもソファーがふかふかのやつなので身体が沈んでいて立ち上がる事もままならない………それ以前に蒼が私の膝に跨がり、に覆い被さるようにして私と向き合っているのでどちらにしろ抵抗はできない。
「私は好きな女にやれ、と言ったんだ。私にやるな。私で練習していいなんて一言も言ってないぞ」
 そう言うと蒼は妖艶に笑った。
 こんな笑い方もできるのか、と感心する一方で身体がぞくりとする。
「加奈が練習な訳無いじゃん。本番だよ、今が」
…………は?」
 本番?今?どうゆう事だ?
「鈍感だなぁ。好きだって事だよ、加奈が」
 呆然としている私に蒼はディープなキスをかましてきた。ぽかんとしていて口が開いていたからさぞかしやりやすかっただろう。
 ………っておい待て嘘だろう?!なんでお前はそんなに巧いんだっ!!私が知ってる多くの男の中でも上位に入れるぞ?!それよりも私を好きだなんて嘘だろう?!うわちょっと待て!手が服の中に入ってきたぞ?!おいこらっ!!
「っつ……
「お前お前一体全体いきなり何をするっ!!」
 きっと年甲斐も無く私の顔は今真っ赤だろう。
 蒼相手にこんな風になるなんて…不覚だ。
「それは加奈が感じた通りだよ?ってか舌を噛まなくても………
 ちぇー、と言いながら唇を尖らせている。
 ……だからあんたのその表情気持ち悪いんだって。
「お前……何を……
「ん〜……求愛行為?」
 お前は野生動物かっ、という言葉を何とかして留める。
………私はお前なんて何とも思っていない」
 蒼を睨みながら言う。
 本当は、蒼からキスをされて私は心臓の音が蒼に聞こえないか心配なくらいドキドキしている。
「別にそれでも良いよ」
………は?」
「加奈はもう僕無しじゃ日常生活もままならないんじゃない?それに家事が全然できないなんて知ったら加奈に好意を抱いている人の態度も違ってきたりするんじゃないかな?」
 蒼はにこにこと至近距離で微笑みながらもざっくりと毒舌をはく。その内容も私が普段から気にしていたものだから余計に胸に突き刺さるものがある。
 くそっ、蒼のくせに痛い所ついてきやがって。
「それに………僕なら加奈を満足させられると思うよ?身も心も」
 耳元で甘く囁く声に惑わされそうだ。
「愛してる」
 うわ。この状況でその言葉は反則だろ。
 やばい。普段攻めじゃない奴が本気になって攻めるとかなりの威力がある。
「お前……今まで私が男遊びしてても何も言わなかったじゃないか」
「言っても聞かないだろうと思って。それに、ルームシェアするようになればやめさせようと思ってたし」
 その言葉でふと気付く。
「蒼……もしかしてあの条項って……
「勿論、他の男に加奈を取られないようにする為だよ?僕が彼女を作らない限り、加奈も独り身だし。三十路を越えた頃になったら結婚しよう、って言おうと思ってんだけど……
 蒼は不自然に言葉を切って、私を熱っぽく見つめる。
「何だよ」
 未だに蒼によってソファーへと押し付けられているような体勢の為、その妖しく光る瞳を間近で受け止める。
「このまま放っておくと昨日みたいに僕に内緒で遊びそうだし……それに
 微笑みながらまた熱っぽく見つめてくる。
 ……こいつ、こんなキャラだったか?!
「それに、なんだよ」
「加奈が積極的で良いって言うからさ」
「はぁっ?!」
 確かにそう言ったけど、何か違う気がするぞ?!
「今日の夜は寝させないからね」
 にっこりと蒼は綺麗な顔をより魅力的にみせるような笑顔をみせた。
「げっ」
 
 ピンポーンピンポーン
 
「あ〜あ。鍋パーティーがうちでやるんじゃなかったらこのままベットに行けたのに……残念だね」
 そう言って蒼は妖艶に微笑んだ。
 やばいっ!やばすぎるっ!!こいつ今日は無駄にフェロモン出てるぞ?!ってかこいつ実は超のつくケダモノ?!ずっと草食動物だと思っていたのに実は肉食動物なのかそうなのか?!!
「なななな………何を……
「加奈顔真っ赤だよ?今から期待してるの?」
「ちっ違うっ!!」
 蒼はくすりと笑いながら私の頬に手を滑らす。
 とても艶かしく、愛情を込めているのが私にも分かるような動きで。
「愛してる」
 そう言って私の唇にキスを一つおとす。
―――――っっ!!」
 
 ピンポーン……ピンポーン
 
「あ、加奈が昨日寝た男って今日来るの?」
 無邪気に笑いながらそう聞いてくる。
 ………その笑いが前みたいに無邪気そうに見えないのは気のせいだろうか。
「ああ、来るぞ」
 その答えを聞いた蒼の笑みはもう無邪気さの欠片も無く。
 その瞳に見える光は嫉妬、というような軽いものではなくて。
「そっか」
 にたり。
 その表現が一番似合うであろう笑みを残して蒼は玄関へと向かって歩いていった。
 
 
 
 
 
 呆然とした私を残して。  
 
 
 
 

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