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世の中の男が、一番苦労することは何か?
それは明白である。
答えは「アリバイ作り」である。
俺は産まれてこの方、浮気はした事がない。
コレは、どこまでが浮気か、という定義にもよるのであるが、俺のような美形
であっても、あまりにもマニアックな趣味故に、女が寄り付かない、という事
が大きい要因である。
こんな俺でさえも、アリバイには苦労する。
古本を買いに行く為に、会社の出勤日を嘘の申告をしたことは、数知れない。
大抵、バレる。
それほどアリバイトリックは難しいものだ。
二階堂黎人『智天使の不思議』
コレがまた素晴らしい。
とにかく、装丁が素晴らしい^^;
西澤氏『収穫祭』などと同じ装丁家らしいが、ミステリはこういう装丁であって
欲しい。
先に装丁ばかり褒めてしまったが、内容もなかなかのもの。
二階堂氏には珍しい倒叙モノ。
学生・水乃サトルシリーズであり、俺としては二階堂蘭子が出てこない、という
気軽さもあり、スラスラ読めた。
犯人は当初からハッキリ明記されており、犯人当ての面白さは全くない。
興味は犯人のアリバイトリックを水乃サトルがいかに解決していくか、ということ
なのだが、時刻表や複雑なタイムテーブルもなく、アリバイ物が苦手な人にも抵抗
なく読めるだろう。
だが事件はサトルにも手に余ると見え、学生サトルから社会人サトルへと、受け継
がれるが、現在・過去・未来に跨る大事件・・・というわけにはならない。
当然このような構成にするには理由があるのだが、それぞれに丁寧に散りばめられた
伏線により、概ねの予想は付くのではある。
しかし、おおむね想像がつく、というのと看破できる、ということでは天と地ほどの
差があり、なかなか読者も回答にはたどり着けないだろう。
また戦後の時代を生きるため足掻く登場人物の陰鬱さと、高級マンションに住むサトル
のノーテンキさが対照的に描かれ、本来なら犯人側に肩入れしそうなところであるが、
犯人は「智天使」というよりも「堕天使」のような人間であり、読者は摘発を待つ、
という構成になっている。
肝心のアリバイトリックも、なかなかの出来であるが、作者が「警察」と「読者」に
仕掛けるトリックは、作者が「本格か否か」の論争を捲き起こした『容疑者Xの献身』
と通じるものもあるが、アレと比べると解決はこちらの方がフェア。
フェアということは、真相を見抜きやすい、ということでもあり、衝撃度は薄れて
しまうのではある。
『容疑者〜』への作者なりの返信と見るのは穿ちすぎだろうか。
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『容疑者〜』への作者なりの返信
↑ああ!成る程!ありましたね、そんな論争が!
トリックは「そのあたりの部分」でモヤっとはしていたのですが、結局看破は出来ませんでした。なんだかひっかかるけど見抜けない、という難易度の設定というか、ネタの明かし具合が上手いなあ、と思いました。
2009/10/5(月) 午前 8:01
しら菊さん、一部ではかなりヒートアップしていた論争ですが、そんなにこだわる事もないだろう、という代物でした^^
読んでいる途中に「違和感」は感じていましたし、こういうことだろう、というある程度の予想はついていたのですが、結局感嘆させられました。もう少し読む人が多くてもいいんじゃないかと思います^^;
2009/10/6(火) 午前 0:20