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普段、何気なく使っているものの、本当は間違っている日本語。
正しい意味を誰も知らないのであれば問題もありませんが、知っている人もそれなりにいるとなれば話は別。
一瞬にして知識の底を見られてしまい、正式な場で使おうものなら陰で笑われるのは必至です。
では、今回もまずは前回のおさらいから参りましょう。
<役不足・力不足>
実力に見合わない低い役目が「役不足」、実力が伴わないことが「力不足」。
<お疲れさま・ご苦労様>
目上には「お疲れさま」、目下には「ご苦労様」を使う。
<耳ざわり>
耳障り(目障り・気に障ると同様)と書き、「手触り・肌触り」とは違う意味から「〜が良い」とは用いない。
さて、同じ間違いでも一番問題なのが「全く逆の意味」で使ってしまうことですよね。
大きな誤解を与えてしまうばかりか、とんでもないトラブルを引き起こす危険もります。
さあ、今回も3つの言葉。部下と課長のやりとりで進めましょう。
おっとり刀
彼が担当する取引先で問題が起こり、休日の朝一番で上司である課長から連絡が入った。
課長「先方の社長はカンカンだぞ」
彼「すみません。どうすればいいでしょう」
課長「俺は今から詫びの菓子折を買うから一時間で着くだろう。お前は『おっとり刀』で行ってくれ。いいな?」
彼「はい、わかりました」
(おっとりか・・・。俺が今行ったら火に油を注ぐようなものだから、誠意を見せるために上司が先に行くんだな? 担当の俺は少し遅れて顔を出し、おっとりとする事で先方の気を静めるという作戦か。よし、シャワーでも浴びるとしよう!)
「おっとり刀」
文字通り「おっとり」と「ゆっくり」と・・・などと考えたら大間違い。
これは全くの逆で、取る物もとりあえず、大急ぎで駆けつけることです。
漢字で書くと「押っ取り刀」。
「押っ」は「おっ始(ぱじ)める、おったまげる」の「おっ」。強調するときに用います。
つまり、急いで手に取る、勢いよくつかみ取る「押っ取る」の連用形「押っ取り」。
刀だけ掴んで大急ぎで駆けつける、という意味なのです。
さて、のんびりと到着した彼を待ち受けているものは・・・。冷や汗が出てきますね。
知恵熱
課長がシステムトラブルの処理を終え、真っ赤な顔をして戻ってきた。
課長「いやぁ、どうなることかと思った。頭がフル回転し過ぎて、熱が出てきたよ」
部下「お疲れさまです課長。それはきっと『知恵熱』ですよ(笑)」
課長「ほぅ、俺もやっと知恵がついたという事か?」
「頭を使いすぎて知恵熱が出た」
こんな表現を時々耳にしますが、これも誤りです。
知恵熱とは赤ちゃんに対して使う言葉。
生後1歳までの時期に母親の免疫が切れ、「突発性発疹」にかかって高熱が出ます。
生まれて初めて熱を出し、この頃から知恵が付き始める事から、この発熱を『知恵熱』と呼ぶようになりました。
大人に対して変な使い方をすると、「あなたもやっと知恵が付いて来たね」などと捉えられかねませんので注意が必要です。
なし崩し
まとまった金が入り用になった彼は、思い切って課長に相談してみた。
課長「構わないよ。明日全額貸してあげよう」
部下「ありがとうございます。来月に全額お返ししますので」
課長「なぁに。競馬で当てた金だから、無理な時には『なし崩し』にしても構わないからな(笑)」
「あ、ありがとうございます・・・」
(えっ、『なし崩し』にしてもいいって? 「くれてやる」と言わなかったのは、俺の自尊心を気遣ってのことなのか? さすがは課長。出世払いにさせていただきます!)
おや、彼はすっかりもらった気でいますね。これで大丈夫なのでしょうか?
「なし崩し」
これは、テレビのアナウンサーも「ずるずると『無いものにする』」という意味でよく使っていますが、とんでもない間違いです。
「なしくずし(済し崩し)」を広辞苑で引いてみると、「借金を少しずつ返却すること。 物事を少しずつすましてゆくこと」と書いてあります。
つまり、「済す」を「崩す・細かくする」。一度に行わずに少しずつ行うという意味。
例えば、会社の体質を「少しずつ変えて行く」を「済し崩しに変えて行く」というように使います。
「借金を済し崩しにする」とは、「踏み倒す」事ではありません。「分割にする・少しずつ分けて返す」事ですので、くれぐれも御注意を・・・。
今回は反対の意味で使われる誤用でした。
世の中の安泰のため、平和のため? 頭の隅に置かれることをお勧めいたします。
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