日日是精進〜わたなべ企画事務所物語

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私は渡辺いっこう。フリープロデューサーである。

10月30日に、元アサヒビール会長の村井勉さんが亡くなられたとの報道を読んだ。
住友銀行(現三井住友銀行)で出身で、1976年に東洋工業(現マツダ)に出向し、経営の立て直しに成功。副頭取となったが、82年朝日麦酒(現アサヒビール)社長に転じる。経営危機に陥っていた同社を立ち直らせ、奇跡と言われる躍進の土壌をつくった。87年JR西日本の初代会長。

躍進の指揮をされた樋口廣太郎さんとは何度かお会いしたが、村井さんとはお目にかかることが出来なかったな。
村井さんこそ、アサヒビール再生の真の立役者なのだが。

私は、80年代半ばから後半のアサヒビールについてよく知っている。
もしかしたら、一般の社員より詳しいのではないか。それは、2人の人物を存じ上げているからだ。

1人は、元マーケティング部長(その後、常務、専務、アサヒ飲料専務、アサヒフードアンドヘルスケア社長、退社)の松井康雄さん。
彼が、「コクがあるのにキレがある」生ビール、そしてスーパードライを開発し、強力に市場に押し出した張本人である。
当時の同社マーケティング部は商品開発と宣伝との両方を担当していていた。
松井さんは、“干されていた時期”(本人談)に万巻のマーケティング書を読み漁り、かつ熱く会社の再生を語っていた人。並みいる広告代理店の浅薄な理屈を片っ端から論破し、非常に恐れられた。
その当人から色々と話が聞けたのは財産だ。

○「コク・キレ」ビール(86年2月発売)のコピーの原案はオレが考えたんだよ。「コクがあるのにキレがある」。代理店の付加価値は「のに」。ゴルフの青木功とジャンボ尾崎を候補にあげたのも自分だ。
○4社しかないのに(オリオンビールを除く)シェアが9.6%なのは、味が支持されていないということ。味を変えなくちゃダメ。
スーパードライ(87年3月発売)は生産本部長とオレが企画した。会議では「ビールに辛口なんかあるか!」とボロクソに叩かれた。それでも頑張ったら、樋口さんが「サンプルはあるのか。まず飲んでみようじゃないか」と。それで製品化に漕ぎ着けたんだよ。
○樋口さんは“瞬間湯沸かし器”。すぐカッとなる。「おまえはクビやっ」と30回くらい怒鳴られたよ。前に向かって突進するには樋口さんのようなトップがよかった。マスコミも連日のように樋口さんを採り上げた。しかし、会社の基礎を立て直したのは村井さんだ

ビールの大量広告宣伝は松井さんに端を発する。パワー・マーケティングだ。大成功を収めはしたが、宣伝費の増大はいまや経営を圧迫し、またミニ・ロットの市場開拓が疎かになるなどの弊も生んだ。しかし、業界として松井メソッドをいまだに超えられていない。

もう1人は、現同社常務取締役の泉谷直木さんだ。当時は、CI事務局長兼広報課長だった(85年10月CI導入宣言)。
CIに係るコンセンサスづくり、各メディアへのデータ提供と露出のチェック、取材への対応、社内へのフィードバック、経営トップまわりのサポートと八面六臂の大活躍をしていたなあ。
泉谷さんは、私が幹事を務める勉強会のメンバー。現時点で開催回数は142回だが、第100回記念に泉谷さんにプレゼンテーターをお願いした。そこでの印象的な話。

村井社長・会長の出張に度々随行した。村井さんは、そうした折にいつも本を手渡された。
(テストやな。このくそ忙しい時に参るなあ)と思ったが、本を見るとメモが挿入されている。(ここ読めばいいんだ)。新幹線の中で必死に読み、考えた。しかし、試問はない。
次の時、また本を渡された。今度はメモがない。ウーッと唸ってたら、所々傍線が引いてある。(ここだな)。でも問いはない。
さらに。この時はメモも傍線もない。(やれやれ)と思ったら、いくつかのページの角が折れている。(そうか!)。
いくつも啓発を受け、勉強もした。そして、本は真っ白になった。
つまりは、部下を育てていたということ。村井さんは実に懐が深かった
ちなみに、樋口社長の場合はこんなことがあった。
廊下、エレベーターで顔をあわせる度に大きな声で「おい泉谷、なにか(要求・希望は)あるか?」と。「大丈夫です。ありません」と答えたら、「バカモン!問題意識なし」。
次の時にはアンサーを用意しておいたら、「バカモン!1つだけなのはオマエの単なる不満だ」と。
(なにくそーっ)と3つ用意しておいた。「バカモン!優先順位をつけんかい」(笑)。

1984年、アサヒビール(朝日麦酒)のシェアはわずかに9.6%。はっきり言って倒産寸前だ。
経営に対する不信、現状への不満でネガティブなエネルギーが充満していたことだろう。コンサルティング会社に依頼して、現状分析と改善方向については出ていたようだが、しかし、人間は感情の動物である。理屈通りにはいかない。
「私は悪くない。周りがダメなんだ」
そうしたバラバラの構成要素をすべて抱きかかえ、一つのベクトルに形づくる。至難のマネジメントである。
村井勉さんは、それに幾度も成功した包容力に富む優れた経営者だった
ご冥福をお祈りいたします。

今日も精進の日々である。

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たいへん興味深いお話を有難うございます。
今、日経ビジネス「私の履歴書(復刻版)」で樋口さんの話が掲載されていて、第4回に出てきた村井勉さんのお名前からここに辿り着きました。何ごとも、様々な視点から見てみるべきだと改めて思いました。

2013/5/30(木) 午後 1:19 [ Ice_Plants ]


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