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「あっ、所長、足ケガしたんですか?」 「いっ、いや、なんでもない」 「あー左足の甲が水ぶくれしてるー。変なところヤケドしてますね」 私は渡辺いっこう。フリープロデューサーである。 アシスタントの片桐くんに目ざとくケガを見つけられてしまった。マルサさながらの追求につい白状してしまった。 実は湯たんぽでヤケドしたのである。あっ、商品に問題があったわけではない。最近電子レンジ加熱タイプで事故があったというがそうではなく、私の不注意というかバカさかげんが原因だ。 京都の友人の長谷繁さんが東京に来て、晩飯をご一緒した。 長谷さんは、京都の貸しビル業No.1の長谷ビルの役員である。父上は、昨年11月惜しくも亡くなられた。滋賀県長浜出身で、ガラス工芸で有名な「黒壁」は同氏の発想であり、初代社長。長浜城歴史博物館の提案と財政支援などに尽くされて、長浜名誉市民に表彰されておられた。 お別れの会に参列させていただいた時は銀杏の葉の黄色が鮮やかな晩秋だった。その後、河原町の「たん熊北店」で食事をして、祇園もカウンター・バーの名店「いそむら」でグラスを傾けた。折りしも南座での公演を控えた中村勘三郎さん、中村橋之助さんが相次いで現れたのには驚いた。 この店のマスターは、歌舞伎・芝居・映画・ミュージカルに造詣が深くて有名な御仁。そういえば、以前に友人の松坂健さん(西武文理大学教授にして外食・ホテル旅館コンサルタント、ミステリ評論家。映画・演劇関係にも相当詳しい)をお連れした際には、マスターとあわやうん蓄大戦争になりそうだったなあ。 その長谷さんが、銀座の名店・青木鮨に誘ってくれたのである。 青木は、先代が中田で修行された後に京都に出店。同地の舌のこえた人たちを魅了して、東京に帰ってきた。「最後は銀座で勝負したい」といまのところ(銀座6丁目)に店を出した直後に病に倒れ、帰らぬ人となってしまった。私も最終盤のところで、名人芸を味わわせてもらった。 いまは2代目が格段に腕をあげていて、もはや堂々たる名店の大将だ。鮪も最高級のものだが、この店は上方での経験があるので白身も抜群に美味い。その日は、なかでも鯛がよかった。 「渡辺さん、お久しぶりです」 酒は控えているのだが、伏見の銘酒「月の桂・柳」(純米吟醸)がスッと出されて即降参だ。数ある日本酒を飲んできたが、この酒がもっとも好ましい。より香りの高い酒は多々あるが、それらは白身の鮨を打ち消してしまうだろう。ほどよい吟醸香と、キレとコクのほどよいバランス。う〜ん、いつもながら美味い!鮨ネタが引き立つね。 蔵元の増田泉彦さんも大親友だ。最近人気のにごり酒は、この蔵が初めて商品化した。クオリティの高さは他の追随をゆるさない。 ここの「純米吟醸にごり酒」を味わってほしい。極上のシャンパンを思わせる。また、10年熟成酒の「琥珀光・特別酒」も実に滑らかなテイストで、ソテーしたフォグラに合わせたらまさに絶品だ。 ※ちなみに、「柳」のラベルの字。 「増田さん、この字は上手だねえ。父上、会長の手跡かな?」「ちゃうちゃう、小野道風やねん」 「・・・!」
cf.「月の桂」です。
いささか話が長くなったが、さんざん食べて飲んで(ご馳走様でした!)、楽しく話を交わして帰宅した後に事件は起こった。http://www.tsukinokatsura.co.jp/ http://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/html/gallery2/kura/seishu/tsukinokatsura/indext_tukinoktr.html 風呂に浸かって湯たんぽ用意して寝入った翌朝、左足甲に水ぶくれ発見。どうやら、左足を湯たんぽに長時間乗せたままだったらしい。ずいぶん飲んだからな。う〜ん、天気晴朗なれど浪高し。 「えー、湯たんぽ使うんですかあ?まったく。ほんとオヤジですね」 「う、うん。最近足先が冷えて。で、でも、湯たんぽって近年のヒット商品なんだぞ。ネットで検索してごらん、ヤフーでも楽天でもたくさん出ているから」 「そんなの知ってますよお。カバー、サイズなど色々バリエーションがあって、小さな子供や女子高生からお年寄りまで人気なんですよ」 そうそう、湯たんぽは偉大なり(ただし、加熱のし過ぎには注意しましょう)。 「でも、所長のは昔ながらのものでしょう?それに、たらふくご馳走になって、いぎたなく眠りこけてヤケドするなんて恥ずかしいです」 「・・・・・・」 今日も精進の日々である。
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出来事/雑感
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