††† 独り言 †††

バルセロナという街に、恋をしてしまいました。

ちょっと、きみたち。

 人それぞれが持つ「距離感」というものはその人によってまちまちなんだと思う。これはなにも物理的なものに限ってでわなく、人との付き合いのそれに対しても言えるよーな気がする。たとえば、みんなでお酒を飲んだ時にたまたま居合わせた人でも友達の友達なら、そりゃ友達だよね、ってなタモリ的な感覚の人もいれば、同じクラスや職場の人でも、ぶちゃっけトークができなきゃそんなの他人ですしフフン、ってな人もいらっしゃる。おいでになる。で、あんたわどーなのよ、と聞かれると、そりゃ時と場合によりけりなんだけどねアハハ。

 しかーし。最近ちょっと気づいちゃったんだけど、っつーか、ずいぶん前から気づいてたけど、ここでこっそり囁いてみると、物理的な観点から見ても対人関係の観点からちらりと覗いてみても、日本人の「距離感」はその他の国の人に比べて鬼のよーに遠ぃいんぢゃねーだろーかと。

 さっきオレが自ら書いた「そりゃ時と場合によりけりなんだけどね」ってゆーのも思いっきり日本人的な回答っぽい。ソニーの国の人の回答っぽい。「アハハ」っつーのもごまかして笑っているよーで、こちらもまた思いっきり日本人的な笑いっぽい。トヨタの国の人の笑いっぽい。答えをその場でハッキリ出さない。……ま、オレの場合はハッキリ出せないだけなんだけどね。えーん。

 しかし、欧米人…とひっくるめて言っていいのかどーかよくわからんのだが、とにかく日本人以外の人と話すと、例えば一緒にどこかに行こうという話になった時、「イエス?ノー?」「どこに行きたい?」「何がしたい?」「何が食べたい?」「何が見たい?」「何時がいい?」「それからどーしたい?」これが彼らなりのやさしさだと気づくまでに時間が必要だった。しかし、日本的な心のやさしさを持つオレは「いやぁ、そんなにいろいろオレ一人が決めてもねぇ。ぶっちゃけ、何でもいいんだけど」と心の中で独りごちながら、考えてるフリをして、周りの人が答えを出すのを待ちつづける。

 一人の人に決定権を与える欧米的なやさしさと、周りの人が納得いく答えについて行く日本人的なやさしさ。やさしさが背中合わせ。おなかと背中がくっついちゃう。ま、意味わかんないけど。……って、ぜんっぜん話がまとまらねぇ!堂々巡り。ドゥードゥーめぐり。おそらく彼らからしてみれば、「あまりノリ気ぢゃないのか?心を開いてないのか?こいつわ」と思われても仕方ないハメになっちまうのであった。

 物理的な「距離感」にしてもしかり。オレはゆっくり座って話をしながら飲みたい。しかーし。バルに入ると、いすがあっても、こいつら座らない。テラス以外は立って飲んでも座って飲んでも料金は一緒なのに、たぶんそーいう細かいこと抜きに、動物的な本能で「人の側がいい」と思っているんだろう。片手にビール、片手にタバコ。満員電車ばりの込みまくりの場所に嬉しそーにしゃべりながら自分の場所を確保する。……いや、確保できてなくてもしゃべれればこの人たちオッケーなよーですねアハハハ。人ごみ大スキ。しゃべるの大スキ。踊るの大スキ。人ごみで。

 わかった。君の言うことはよくわかるよ。ただ……顔が近い。

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*エピローグ

 暑く、熱い、つゆだくな1ヶ月が終わってしまった……。まだ、はなたれ小僧の青二才とわいえ、今までの人生で一番濃ぃい1ヶ月になったのは間違いない。帰ってきてからも、いい意味でも悪い意味でも、オレの体内にわスペインの風が渦巻いていた。正確に言うと、体内時計が、生活のリズムがスペインのそれになっていること、山の如し。夏休みの続きだというのに、朝8時には目が覚めてしまう。そして、当然のよーに、おひるゴハンを食べた後は……zzz....シエスタ!お昼寝しなきゃ、夜までもたねぇ。ま、その生活リズムも、だんだんと日本リズムへと直ってしまうんだけどね。悲しいかな。

 そしてまた、一人旅という旅のスタイルにも味をしめまくった。友達との楽しい思い出作りは出来ないけど、とりあえず、友達は現地調達ってことにして、何がいいって、フットワークが軽い。ノープランだろーがなんだろーが、自分の行きたいところに行きたい時に行けて、そこにいたいだけいれる。フリーダム・オレ。就職する前に、コレだけは見とかなきゃな、と思い、ギザのピラミッドを見るためにエジプトに赴き、カイロからナイル川を南に下り、途中またも行き当たりバッタリで、紅海でダイビングライセンスを取りつつ、ルクソール、アスワン、アブシンベルを制覇したと思いきや、その勢いで、アテネまで飛んでみて、アクロポリスで歴史の重さを感じつつ、メテオラの山中で野犬に足を激しく噛まれ、道に迷っていた心優しいイギリス人に本気で心配され、そいつのバイクの後ろに乗っけられつつ、「オレ、こんなとこで血だらけになって何やってんだろーなー。」と思いながら病院に連れてってもらい、サディスティックなグリーク・ナースに「あら、アジア人、ちょっとオシリを出してごらんなさい♪」とか何とか言いながら、オレのシリに思い切り注射の針を突き立てながら、彼女は楽しそーに笑っていた。もう、この文の主語がダレだったのか、もはやオレにわワカラナイ。とにかく、外人になれる快感が、一人旅にはあった。

 しかし、現実の時の流れは、そんな放浪の旅を愛する少年から甘い感傷と、生ぬるい夢物語を一気に奪い去った。就職。そして、忙殺。もう、なにがなにやら。毎日が、音も立てずに過ぎ去ってゆく。季節の移り変わりすら感じることが出来ない。何かがオカシイ、何かが。あなたのよーになりたいが、会社とわなんだ、人生とわなんだー!・・・おー、たみお!君もか、ブラザー!このままぢゃ、この鼻血だらけの激務薄給のスパイラルから抜け出せない。……スペインで何かやってやる。

 「っあ、なんかもう、くだらねぇから、辞めるわ、オレ。」

 というワケで、2006年11月26日、スペインへの留学、しゅっぱーつ。1年間、必死で汗かいてきます。大学生の留学とはワケが違う。会社を辞めて、自腹をきっての留学。まさに切腹。気合を入れて死ぬ気でやらなきゃ、オレの留学に反対したヤツラの言うとーり、オレはただの大バカヤロウで終わってしまう。てめーら、ナメんなよ。この歳からだって、夢の続きを見れるってのを見せたるわ!


 ……あのー、誰かボクに、計画性をください・・・。エピローグなのに、なんかプロローグっぽいとことか。

 欧米の人々が抱いている「典型的な日本人観光客像」とわ?それは、休暇中にもかかわらず、セミフォーマルな服装で首から日本製のカメラを提げている姿。……そー思ってた。しかし、それは「日本人が抱いている『欧米人が抱いているであろう典型的な日本人観光客像』」であり、日本人はそのスタイルにコンプレックスを抱いているためか、ところかまわず写真を撮りまくる人はいなかったように感じられた。ま、ヘネラリフェで遭遇した関西人は、それわそれわもっすごかったけどね。逆に、欧米人のほうが、デジカメやインスタントカメラ、さらにデジタルビデオなどで終始その場の雰囲気を記録に収めていた。

 でね。何が言いたいかっつーとだね。オレはどーせアジア人まる出しのモンゴロイド系の顔をしているから、スペインの街を歩けばどっからどー見たって観光客にしか見えないため、べつに周りがどー見ているかなんかは気にしなかった。だから感動したポイントや記録に残したいところはシャッターを切りまくった。このモチベーションのおかげで、この旅のはじめの目的である、サグラダ・ファミリアに行った時は飽きるぐらい写真を撮ることができた。しかし!そこであの事件が起きたのであった。のであったー!

 サグラダ・ファミリアの目の前でカメラを盗られて以来、写真に対する絶対的かつ盲目的信頼をなくしたと言うか、写真を撮ってでしか人は記憶に残せないものか、と考えまして、ハイ。結果、自分の中で答えは「否」!カメラを盗られ、ビジュアル的に記録ができなくなった状態。ならばオレは、経験という名のファインダーから覗いたモノを、心の一眼レフに、印象という名のフラッシュをたき、記憶という名のシャッターを切ればいいでわないか。でわないかー!

 写真は確かに、連続の中の一瞬を切り取ることができるという点ではすばらしい。しかし、記録に残せるというところから来る甘えによって、記憶に残すことを怠ってしまいかねない。プリクラの前で無邪気に喜んでいる中学生たちよ。大いに語り合え。プリクラでは、見えないものは写らないんだから。

 まぁ、ぶっちゃけ、カメラを盗られた後、インスタントカメラを買って、写ルンですで写しちゃったんですけどね。

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 ヤヴェ・・・今日、朝のフライトで帰らなきゃいけないってのに荷物が全然まとまってねぇ。昨日のうちに終わらせとこーとわ思ってたんだが、途中で豪眠しちまった。もう、最後の最後までオレってヤツわ・・・。というワケで、身支度をさっさと済ませ、朝メシもそこそこにバラハス空港へと向かうことに。

 バスで空港まで行くより、もう最後だからタクシーを使っちまおう。まだ寝ぼけている街の空気の中、大通りに出てタクシーを捕まえる。このタクシーのオヤジが朝からテンションが高かった。と、言うより、寝グセがスゴかった。まぢ、アトムが運転してんのかと思った。このアトムがまたよくしゃべるしゃべる。「おー、でけー荷物だな。今日帰るのか?コゾウ。」「そうそう。午前の便で。」「スペインにはどのくらいいたんだ?コゾウ。」「ちょうど1ヶ月だね。」「ずいぶん長ぇーな。マドリーだけか?ほかはどこ行った?バルセロナは?コゾウ。」「バルセロナも行ったよ。それから、バレンシア、グラナダ、マラガに行って、トレモリノスにも海見に行って、そのあとアルヘシラスからモロッコ行ってから、セビージャとトレド行った。」「そりゃいい旅だったな。にしても、オマエそれ、やりすぎだ。コゾウ。」「ちょー楽しかったもん。」「どこの航空会社で帰るんだ?コゾウ。」「KLM。」「KLMは安くていい航空会社だ。KLMで来る観光客いっぱいいるぞ。コゾウ。」「うん。安かったからね。」「オマエ、なに人だ?日本人?中国人か?コゾウ。」「オレ日本人。」「……。」

 ……って、オマエ、しかとかよ!そこでいきなり黙っちゃうのかよ!オマエが聞いてきたから答えたんだろーが!おもしろすぎるぞ、このアトム。

 「っえ?で、なに?日本では何やってんの?コゾウ。」……って、オマエ、聞いてたのかよ!だったらさっきなんかリアクションしろよ!ま、いいんだけどね。「大学生。」「じゃ、夏休みでスペインに来たんだな?コゾウ。」「そうそう。でも、帰ったら友達とわ早く会いたいんだけど、大学に行かなきゃならんからね。だから、まぢ帰りたくないんだよね。」っつーか、アトム。リアシートに座ってるオレの方は見なくていいから、頼むから前を見て運転してくれ。「はっはっは。だったらまたマドリーに来りゃいいよ。そーだろ?コゾウ。」「また来たいね。」「ぉおっと、もうそろそろ空港に着くぞ。コゾウ。」

 アトムのすっとぼけた絶妙な“間”を楽しみながら、タクシーは空港に着いてしまった。それにしても・・・。なんだかんだで、アトムの言ってることがなんとなく理解できて、言いたいことがなんとなく言えて、なんとなく会話になってたな。そりゃ、オレが外人だから簡単なわかりやすい言葉を選んでくれていたんだろーけど、こんぐらいだったらノリで何とかなるもんだ。逆に、おそろしい。

 最後に、アトムが荷物をオレに渡しながらでかい声で言った。「コゾウ!またスペイン来いよ!じゃあな!ステキな空の旅を!」「グラシアス!」

 旅の最後を「ありがとう!」と言って終われるってのは、なんて気持ちいいんだろう。待ってろよ、エスパーニャ。いつかゼッテーまた来てやるゃ!

 とりあえず、夢の中で「ゲルニカ」の牛やら馬やらにうなされまくって、汗だくで目覚めたって話は置いといて。あ゛ー、まぢ死ぬかと思った。昨日、トレドから帰ってきて、その足で国立ソフィア王妃芸術センターに行き、ピカソの「ゲルニカ」の迫力に圧倒され、ダリのCGのよーな「記憶の固執」のとろりと溶けた時計を鼻先5cmの距離でガン見し、ミロのオレでも描けそうな絵を堪能していたら、どーやらそれが脳裏に焼きついてしまった模様。プラド美術館でさんざん懲りたハズなのに、また気合を入れすぎてしまった。

 汗をふきふき、明日帰らなけりゃならんっつーことで、今までめんどくさくて先延ばしにしていたおみやげを買いにいく。しょーがないから買いにいく。……っつーか、おみやげなんてハッキリ言って旅行してきたヤツの自己満足なんだよなー。何にしよーか考えるのもめんどくせーし。ま、しゃーねーから買ってくるか。

 家族にはテキトーにチョコでも買うとして、まずわ、自分自身へのものを。なんと言っても、「音」がほしい。バルセロナで入ったバルでかかってた曲、マラガでのお祭りで流れてた曲、この旅を彩ってくれた曲たちをなんとしても日本に輸入したい。fnacという、日本でいうHMVみたいなところで目当てのCDを探す。今まで何度かCDショップに入って目をつけていたCDを選ぶ。ほかのCDにも目移りしてしまうが、結局オムニバスみてーな4枚組みを2つ買うことにする。CDプレイヤーを持ってきていないので、日本で聞くのが楽しみだ。

 次は、友達へのおみやげ。大学の友達には……タバコでいいな、アイツラには。DUTY FREEで買うと1カートンまでしか免税されないから、もうフツーに街のタバコ屋で買って脱税しちゃおっかな。ま、スペインには税金払ってるってことだから、脱税とわ言えますまい。で、幼なじみと高校の友達には……何にしよっかな。んー・・・ムズカシイ。というより、めんどくせー。とりあえず、もっかいfnacに行って考えよう。ってことで、fnacをぶらぶら歩いていたら、見つけました。心揺さぶるものを。日本が世界に誇るもの……“MANGA”!決まりだな。幼なじみには「ドラゴンボール」。やべー、ウーロンがスペイン語しゃべってやがる。高校の友達には「ドラゴンヘッド」。世紀末的なクセして、スペイン語だとなんかまぬけだ。そして、自分には「火の鳥」。手塚治虫、あんた、偉大だよ。それにしても、マンガ高いなー。一番安くてもだいたい€7は下らない。なのに、スゲェ売れてるっぽいし。ま、本棚の前で立ち読みしてる人種も……いわゆる“オタク”っぽいヤツばっかだけどな。オタク・エスパニョール。

 よし。これでおみやげ終了。……いーのか、これで。ま、いっか。めんどくせーし。

 よーし。今日もいい天気だ!おし!トレドに行くぞ!……というワケで、コルドバにいる時にさんざん悩んだ結果、日帰りでトレドに行くってことだけわ決めていたのでわあるが、行き当たりバッタリゆえ、天気もいいので今日行くことにしてみました。紅芋アイスをロシアンクレープで包んでみました。・・・包んでみるな!

 バスに揺られること小1時間。トレドといえば、城塞都市。バスターミナルからどーやって城壁の中に入るんだ?とりあえず地図を頼りにそれらしい方向に歩いてみる。「……この道、あってんのかよ?」この旅で何度この独り言をつぶやいただろう。スペインでしゃべった日本語ランキング独り言部門、堂々第1位。やっぱりDHCだねっ!途中で道を聞いたおばちゃんは「坂を道なりに上っていけば、あと7分で着くよ。」なんてテキトーなこと言いやがるし。でもこれまでの経験で、だいたいの場合、道はあっている。知らない道だから、辿り着くまでに我慢ができなくなって不安になるってだけだ、ということをオレは知っている。熟知している。はたして、城塞への入り口が突然オレの前に現れた。ビンゴ!

 さらに街の中心へと歩みを進めていると、絶景ポイントに到着。さっきまでいたバスターミナルが、眼下に小さく見える。だいぶ上ってきたんだね、オレ。だいぶ歩いてきたんだね、オレ。もうそろそろ、この気ままな旅も終わるんだね、オレ。……オレ。もぅ、オレ、アピールしすぎ。近くにはタホ川が悠然と流れている。この川がポルトガルに入るとテージョ川になる。どっかで聞いた話だけど、ま、いっか。

 いかにもゴシックな感じの白亜のいかついカテドラルを出た後、サント・トメ教会に行ってみる。小さくてかわいい教会。オマエ、かわいいなー。エル・グレコは晩年をここトレドで過ごした。教会にはグレコのあの有名な葬式のドでかい絵が置いてある。どーでもいいが、グレコの絵に描かれてる人って、みんな顔ちっちぇな。アイツ、乱視だったって話もあるけど、そのせいか?イヤ、むしろ、その成果?もっと言っちゃえば、卵子の成果?……ヤベ、図らずもまたウマいことを言っちゃうこの才能がにくいよね。憎しみの連鎖だよね。1回、死ねばいいよね。

 っつーか、この街、ドラクエに出てきそうだな。何が多いって、武器屋が多い。もちろん、みやげ物だけど。とりあえず、オレは勇者だからかたっぱしから覗いてみよう。意味もなく武器屋めぐりをするオレの姿は、勇者というより、職業は遊び人。少年時代、男ならば誰しもがあこがれる中世ヨーロッパの騎士たちの武器が目白押し。その中でも、ひときわオレのいたいけなハートをわしづかみにして離さなかったのが・・・ボーガン。カッコよすぎる。値札を見ると、€16。・・・え、まぢで!?安くね?「おい、オヤジ。このボーガンどーやって使うの?」と聞くと、オヤジがイヒヒと嬉しそうにボーガンに槍をセットする。そして、次の瞬間!店の柱にマンガみてーに、“ヴィー…―ン”と槍が突き刺さった。……ア!アブネーだろーがスットコドッコイ!!こんなの持ってたら飛行機に乗る時、ゼッテー捕まるわ。言い訳できなすぎ。殺傷能力ありすぎ。遊び人にわ装備できないな。っつーか、柱のいろんなところにたくさん傷やら穴やらがついてるけど、オマエの店、いつか倒れるぞ。いろんな意味で。

 バスでの帰り道、バルセロナにいた時以来のスコールが降ってきた。15分ほどの土砂降りの後、カラッと晴れた蒼空に今まで見たこともないぐらい大きく鮮やかな虹が架かった。決して届かない虹をめがけて、バスはまた一つギアを入れなおした。

 ……うあ、なんか、うさんくせー小説みたいになっちまった。

もとわと言えば。

 泡沫の昼下がり。そろそろ家の中の食料も底をつきかけてきたので、買いだめをせねば。さーって、ちと散歩ついでに行ってくるか、ってことで近くのスーパーに赴く道すがら。幼稚園のお散歩の列と遭遇。・・・なにやら、フツーの幼稚園キッズとは様子が違う模様。……いまどき珍しい、黒いゴミ袋かぶってやがる。っえ、君、服がないの?隣のリトルボーイはスパイダーマンの格好をしてやがる。おいおい。親のセンスを疑うぞ。って、思ってたら、引率の先生……「千と千尋」の顔なしのお面かぶってやがる!顔なしなのに。イヤ、顔なしだからか?っえ、君、なにやってんの?しばらくその列に付いて行ってみると、おもむろにキッズたち一行がインド料理カフェの中に入っていき、口々に「Trick or treat!!」と。

 ハロウィン。こんなイベント、日本ではゼッテー普及しないと思っていた。あたし、そんなふうに思ってたの。ハロウィンがいつかもわからない。キリスト教のイベントとして、クリスマスとバレンタインは日本で完璧に市民権を得たけど。にしても、その普及の仕方がまた日本っぽい。クリスマスは家族と過ごすのでわなく、恋人たちのイベントになっている。なぜかラブホもこの日ばかりは強気な予想外の価格設定。ジーザス誕生の日に、オマエラ、何を誕生させようというんだコノヤロウ。バレンタインもなぜか日本ではチョコレートだけが一般化している。どっちにしても、お金を使わせる戦略が実にウマイ。そんな中、ハロウィンはほかのイベントに比べてあまり経済的効果が得られそうにないんぢゃないのか。

 イヤ、それでも・・・と、ふと思う。幼稚園の頃からハロウィンという刷り込みを施されているこのキッズたちは、おそらく大きくなってもこのイベントを思い出すんぢゃねーだろーか。10月31日の夜、死者の霊が家族を訪れる。これと似た日本の行事にお盆があるが、今まで日本人はその霊たちが道に迷わないように迎え火、送り火をたいてきた。しかし、ハロウィンは、この霊たちから身を守るために、仮面をかぶってみたり、かぼちゃのランタンに蝋燭で火を灯す。……この違い。これからどーやって普及してくのかな?商業的に何と結びついて普及してくのかな?テクノかな?……関係ないけどね。

 買い物からの帰り際、さっきのキッズたちにまた会った。もらったお菓子を食べながら笑顔でトンボの羽根をむしり取る、無邪気で残酷なキッズたちのかわいい笑い声を聞きながら、ゾッとした。「Trick or treat!!」

 北朝鮮と、やってること全く同じぢゃねーか!

 「食べ物くれなきゃ、イタズラしちゃうぞハムニダ!」

 ……じょんいるくん。核実験は、イタズラでわ済まされないよ?・・・頼むぜ、おい。

 “TOROS NO”闘牛のメッカであるセビージャの街にこんな落書きが書いてあった。人間が寄ってたかって1頭の牛をぢわぢわ殺していく。そう、すばらしく残酷なショー。しかし、せっかくスペインに来たのだから、見ないで帰れるワケがない。と、いうワケで、オレはベンタス闘牛場に向かった。

 闘牛場内に入る時、昔オヤジと一緒に神宮球場に入る時に感じたよーな懐かしい興奮があった。客は満員にはほど遠い、というよりけっこうガラガラめ。っつーか、日本人多すぎ。ケイン、濃すぎ。ピーコが、おすぎ?……んなワケないが、やっぱ、みんな闘牛見たいよね。

 場外で売っていたピーナッツをばりばり喰いながらビールを飲んで待っていると、隣にいた「ホセ」と呼ばれているおっさんが話しかけてきた。「おい、日本人のコゾウ。スペインの闘牛はすごいぞ。マタドールが牛をかわしたら『オーレ!』と言うんだ。もし、しくじったりでもしたら、その時はブーイングを浴びせてやれ。」イヤイヤ、ホセ。そんな話より、オマエの耳はどーなっている。え?耳の穴から、ものすごい長い毛がごっそり生えてるぞ。風に揺れているぞ。毛深すぎだろ。毛深いと言う言葉が陳腐なぐらい耳の穴じゅう毛だらけだろ。こんなすごい穴、見たことがない。2002年、夏。全米が、泣いた。

 そうこうしてるうちにマタドール達が入場してきて闘牛開始。マタドールの挑発に猛り狂う漆黒の牛。それを華麗なムレタさばきで何度もかわす。その度に場内からは「オーレ!」の大合唱。ホセの言うとおり、失敗すれば大ブーイング。オモシロイ。何がおもしろいのかわよくわからんが、気がつけば完璧にハマッているオレ。そしてよく見ると、マタドール達の動き……似ている。非常によく似ている。フラメンコによく似ている。まぁ、いい。特に腰つきとか。まぁ、いい。

 で、結局、2時間で6頭の牛を殺って大興奮のうちに幕を降ろした。えー、結論です。

 闘牛、賛成!殺ってヨシ。

 どーしてかって?きっと動物愛護者はこう言うんだろう。「この牛たちは見せモノで死ぬために生まれてきたワケぢゃない。」と。・・・知っとるわ!タコ!そう。この牛たちは実は食用なんです。だからどーせ食べられちゃうんです。闘牛に出場しようがしまいが、結局人間に食べられちゃうんです。そうすると、きっと動物愛護者はこう言うんだろう。「ぢゃぁ、この牛たちは食べられるために生まれてきたのか?」と。・・・アホウか、オメーわ!たまたま牛は生きるために角が発達したの。たまたま人間は脳が発達したの。それで武器を作ったの。あとは弱肉強食ってヤツだ。自然の摂理だ。至ってフツーだ。そもそもテメーわなんなんだ。牛が死ぬのがかわいそうだとぅ?あ゛?コラ。テメーはスーパーマーケットで切り身になってる牛しか見たことねーんだろ?“ウシ”っていうか、“ギュウ”だろ?死ぬなんてことはテメーが気づかないだけで、けっこう身近にあるんだよ。「動物の命を奪うのには反対なので、ベジタリアンです。自分、ベジタリアンやってます。ちっす。」・・・イヤイヤイヤ、待て待て待て。オマエにとって、命とはなによ?命って、なにかね?誠意って、なにかね?ウルサイ!菅原文太は黙っててくれ。動く動物を殺すのは抵抗があるけど、動かない植物なら何の問題もなく殺せるんだね?動くか動かないかが、そんなアホなことがオマエの判断基準なんだね?あぁ、もうやってられん。本当に他の命のことが気になるんだったら、何も喰わないでそこで死んでゆけ。その方がよっぽど周りのためになるしな。オマエが一人で生きていく分のたくさんの命が救われるだろーし、空気もきれいになる。

 って、偏見と無知が前面に押し出された極端な思考だけが一人歩きしてしまい、「人間ってほんとにエゴイストだよ。」なーんて思ったら、オレもその人間でした。はっはっは・・・闘牛サイコーだなっ!うは。

 今日は芸術に浸る。そう決めていた。プラド美術館に行き、そのあと、国立ソフィア王妃芸術センターに行く。そう決めていた。決めていたけど……。いろんな意味で芸術に溺れたね。完敗。むしろ、溺死。

 プラド美術館は、土曜の14:30〜は無料とのことなので、15:00くらいに着き、30分ほど並ぶ。そう。入場は15:30。ここがポイント。まずは1階から攻める。ゴヤ、ベラスケス、エル・グレコなどは2階、3階とのことなので、ここでもやはり、おいしいものは後回し。なんてったってプラド美術館。世界のプラド美術館。1枚、1枚、画家とタイトルを確かめながら歩く。はりつけにされたキリスト。迫害されるキリスト。十字架にかけられるキリスト。十字架から降ろされるキリスト。聖母マリアに抱かれるキリスト。そして、白目を剥くキリスト。……あー、もう、わかった。みんなキリストのことが大スキなんだね。オレも大スキだ。だって、通りすがる人の顔が全員キリストに見えてきましたし。だからもう、カンベンしてくれ。っつーか、なんなんだ、この絵の多さわ。というより、部屋の多さわ。しかも、キリストばっかりときてやがるから、どの部屋を見て、どの部屋を見てないかなんぞ憶えちゃいねぇ。もう、状況そのものが宗教勧誘なんぢゃねーかと思えてきた。

 そして、1階全て見終わった頃にわ18:00前だったよーな気がする。ヤベェ・・・ぢっくり見すぎた。そして、あまりにも疲れすぎた。あげくにゴヤの絵、まだ見てないっぺぇ。それからのオレはスゴかった。一応、全室見てまわったのだが、その姿は惰性かつやっつけ。そのまま2階終了。……あれっ?ベラスケスはやっつけながらもぢっくり見たでしょ。グレコも有名なやつ見たし。……おい、ゴヤよ。オマエはいったいどこにいる。まだ5枚ぐらいしか見てねーぞ。……えー、ゴヤ部長代理は主に3階にいらっしゃいました。“黒い絵”を足早に見たところでtime up。19:00。閉館です。あ゛ー、疲れた。目が筋肉痛だ。首の筋肉が硬くなっている。硬くなってんのが首だけだと思ったら大間違いだぞオマエラ!

 しかし、プラドはスゲェ。絵画のことはよくわからんが、教科書に出てきたヤツだけでも、もうおなかいっぱい。3時間半もかけちまった。そのあと、これから国立ソフィアに行って、また絵を見るなんて、あの時のオレには到底不可能だった。

 嗚呼、世の中が、油絵に見えてきた・・・。

 とうとうこの旅最後の街、マドリーに来てしまった。トゥートゥー来てしまった。うれしーよーな、悲しーよーなってトコですかね。悩みに悩んだ末、トレドはマドリー滞在中に日帰りで行くっていう、画期的かつアバンギャルドな思いつきに従ってみることにした。行き当たりバッタリっぷりがこの旅っぽいし。

 で、オスタルなんだが、まず行こうと思ってたとこはSHくんに教えてもらった“COMERCIALの上”ってとこ。ここならPuerta del Solからも近いし、€15だって言うし。何の苦労もせずCOMERCIAL発見。SHくんの言うとーり階によって経営者が違うらしい。まずわPrimeroのCOMERCIALから。えー。空き部屋アリ。€20。もう5泊しかしないオレにとってわ痛くもかゆくもない値段。決っ定ー。部屋もビミョーなシャワー付ですごい清潔。女将が一人で切ったり盛ったりしてるっぺぇ。まぁ、きりもりしてんだけど。

 “2泊”と“2日”のギャップに4苦8苦しながらも、パスポートを持って女将の部屋へ。まず、女将が入り、オレが入る。そして、ドアを閉めようとしたその刹那!「ドアは閉めないで!」女将、大焦り。オレ、大驚愕。……そーか。そーだった。初対面の男女が2人だけで部屋に入る時、ドアは絶対閉めてはいけない。どこかで聞いたことがあるよーな気がする。それがマナー。と言うよりも、常識。そーでしたー。ごめんなさいー……っつーか、奥さん。アンタ、なに身の危険感じちゃってんの?は?っつーか、あ゛?いくら金積まれても、手ェ出したくないんですけど。きもいんですけどー。ちょーウケるんですけどー。

 …まだまだ、知らないことが多すぎるヨーロッパ。

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