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■第7章にて■
ハルヒのニヤニヤ笑いを浴びながら、俺は土をかき分けて掘り当てた物を地中から取り出した。
四角い箱はどうみても元禄時代のものではない。センベイかクッキーだかの缶製入れ物だ。
三日前に俺と古泉が探したときにはこんな物はなかった。この三日間で誰かがここに埋めなおした物に違いなく、誰が埋めたのかは考える余地もない。
「あけてみなさい」
と、ハルヒが言った。小さい葛籠を選んだお爺さんを見る雀のような顔で。
俺は缶に手をかけ、バカンと蓋を外した。
「・・・・・・・・・・」
黄金でも小判でもなかった。だが宝物と言ってクレームが来ないくらいの物には違いないだろう。
華やかな包装紙でくるまれ、綺麗にラップされた小さな六つの箱が入っていた。りぼん付きなのはいうまでもない。
そしてやっと、本当にやっととしか言いようがない。
俺は今日が何月何日なのかを思い出した。というより気付いた。ある意味、7月7日より重要な日付だ。
一部の男子学生にとっては。
今日は2月14日である。つまり、バレンタインデー。
「手作りなのよ」
ハルヒが横を向きながら説明する。
「昨日の昼から夜までかかっちゃったわ。あたしとみくるちゃんと有希で、有希の家で夜なべしいたのよ夜なべ。本当はカカオから作りたかったんだけど無理言わないでって感じよ。だからチョコレートケーキにしたわ」
包装に貼ってあるシールに三人の手による文字が書いてある。三つずつ俺の名前入りと古泉の名が記されているもの。
スコップを置いた古泉は、几帳面に手を払って箱の一つを手に取った。
「古泉くんへ みくる」と書いてあるからそれは朝比奈さんが作ってくれた宝物だ。
ハルヒは機関銃のように、
「そりゃもう作ったわよ!やってるうちに楽しくなってけっこう張り切っちゃたりもしたわよっ、けどいいじゃないのよ、あたしはイベントごとをことごとく押さえてないと気になっちゃって上の空になっちゃうし、正直言って『仕掛けられたとおりにハマってるんじゃない?』って思ったりもしたけど、それがどうしたって?いいのよ、こんだけ広まってる風習なんだから、わざわざお菓子やさん陰謀論を唱えだすヤツの方が寒いわっ!いいの!あたしも有希もみくるちゃんも楽しかったからね!ホントは唐辛子でも入れようかと思ったんだけど、しなかったけど、何よっ、その目っ!」
いや、なんでもねぇ。ただただ、ありがたい。本気でそう思うんだ。なんせ俺は今の今まで今日が世の男どもにとって妙にソワソワする日であることを完全に忘れていたんだからな。覚えていたら気の利いたリアクションを前もってって考えておいたんだが、純然たる不意打ちをくらって女子団員三人の誰にも何も言えん。たぶん俺にはそれをするだけの人生経験がたりてないんだろう。
体中の力が抜けていく。すべての謎が解けた気がした。二月に入って挙動と情報のおかしかったハルヒ。時間を跳んでやってきた朝比奈さんが宝探しについては言いにくそうだったこと。
谷口のヤサグレ具合とお前はいいよな発言。
ハルヒはあれだ、ずっとこのことを考え続けていたのだ。バレンタインデーにおけるチョコレートの渡し方。全く全然、これぽっちも素直じゃねぇ。部室でくれりゃいいものを宝探しとか言い出して穴を掘らせ、その穴に埋めなおしておくなんて、どんなにヒネクレ者が考えつくんだ。
て、ことは鶴屋さんもグルか。つまり宝の地図も嘘っぱちだ。ハルヒが簡単に宝を諦めたのは、そんな宝など最初から埋まってないのを知っていたからだ。ハルヒにとって宝と呼べるのは、あの時点ではこれから埋めるものだったんだ。その宝とは、すなわち今俺と古泉が手にしている三つずつのチョコレートで、こんなもののためにハルヒは二月の上旬をずっと不安定に過ごしていたってわけか。
長門と朝比奈さんを巻き込んで。
なんという―。
バカ野郎だ。こんなことを企画したハルヒも、それに気づかなかった俺も。
「義理よ、義理。みんなギリギリ。ホントは義理だとかそんなのこと言いたくないのよ、あたしはっ。
チョコもチョコケーキもチョコのうちだわ」
秋の草むらで鳴く変な虫みたいなハルヒの声を聞きながら、俺は気力を振り絞って頭を下げた。
ハルヒが怒りで睨んでいる。朝比奈さんはイタズラ娘のような優しい微笑み、長門は無表情に俺の手元を見つめていた。
□出演□
☆涼宮ハルヒ
☆キョン
☆朝比奈みくる
☆長門有希
☆古泉一樹
☆谷口 バレンタインのお話(●^o^●)ハルヒのツンデレ☆
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