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P1064(三九ウ)
事ハ候ベキ』ト、サシモイナミ奉リシカドモ、女ノ身ノハカ
ナサハ、思ノ外ノ事共ノ有キ。『タトヒサリトモ、アレ躰ノ
人ノ習ナレバ、一スヂニハ思給ハジ。アマタヲコソ見給ハンズラ
メ』ト思シホドニ、其義モ無テ、打捨奉リシ事ノアヘナサ、
申ハカリ無リキ。余リニ心苦シカリシカバ、度々申シカ
ドモ不叶一ハ。コレヲ人ノ上卜思ハザリシカバ、又イカナル人ニカ
ト、ナニハノ事モアヂキ無テ、『只身ノ暇ヲタべ』ト申シカド
モ、ユルシ給ハザリシカバ、昨日ノ昼程ニ隙ノ有シニ逃出
テ候也。諸共ニ後生ヲ祈り、此ノ日来ノ恨ヲモ休メ奉ラント
               マドヒアリキ
テ、ウハノ空ニイゾ方トシモ分力ズ、迷行候ツルホドニ、
P1065(四〇オ)

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P1063(三九オ)
ズゾ泣ケル。其時義王ハ更ニウツヽトモ覚エズ、只夢ノ心地シ
テ、野干ナドノバケテ来ルヤラム、オソロシナガラ義王申ケ
ルハ、「其後ハナニハノ事モ覚エズシテ、ヨロヅアヂキナクノミ
有シカバ、只一筋ニ思切テアカシクラス草ノ庵ヲバ、イカニ
シテ聞伝テヲハシタルゾ」ト申ケレバ、仏泪ヲ押へテ、「サレ
バコソ。ワラハガ入道殿ヘ推参シテ、御気色アシクテ罷
帰リシヲ、ソレニ申サセ給ケルニヨリテ、召シカヘサレタリシカバ、
思ノ外ニ入道殿ニ見参ニ入ニキ。猿程ニ入道殿心ヨリ外ノ
気色ニヲハセシカバ、アマリニ浅猿ク覚テ、『只今入道殿ニ
見参ニ入ルモ、ソレノ御故ニコソ候ヘ。イカヾハウシロメタナキ
P1064(三九ウ)

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P1062(三八ウ)
土、往生極楽ト祈ル外、他事無テ、既ニ三月許ニ成ケルニ、
アル夜、々半バカリニ、庵ノトボソヲホト/\ト叩ク者アリ
ケリ。此人々思ケルハ、「コハナニモノニテカ有ラン。都ニモ
サルべカリシ人々モ皆カレハテヽ、誰レ事トフベシトモ覚エ
ズ。カヽル柴ノ庵ノスマヰナレバ、ナニノタヨリニカ尋ヌベキ。
サナクハ後生菩提ヲ妨ムトテ、天魔ナドノ来ルヤラム。ナ
ドカハ山神トカヤモアハレミ給ハザルべキ。サリナガラモ」
         ミ
トテ、オヅ<柴ノ編戸ヲアケタレバ、「イカニヤ。イタクナ
怖給ヒソ」トテ、指入タルヲミレバ、仏御前ニテゾ有ケル。「サテモ、
イカニコノ日来ノ御心ノ中共ハ」トバカリ云テ、泪モセキアヘ
P1063(三九オ)

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P1061(三八オ)
泣マデハ思モヨラズ。暫ク有テ、入道イカヾ思ハレケム、
会尺モ無テ内へ入給ヌ。其後義王ハ人々ニ暇申テ、
泪ト共ニゾ出ニケル。宿所ニカヘリ、母ニ向テ申ケルハ、
「サレバコソ、ヨク参ラジト申ツルヲ。母ノ仰ノ重クシテ
参タレバ、ウキ目ミル事ノ悲シサヨ」トテ、ナキヰタリ。サ
テ其後、世ノ人、「入道殿ステハテ給ヌ」ト聞ケレバ、心ニ
クヽ思テ、我モ<ト文ヲカヨハシ、縁ニ付テ契ヲ結ブベキ
由申ケレドモ、不聞入シテ、義王ハ廿二、義女ハ廿、母ハ五十七
ニテ一度ニサマヲカヘテ、皆墨染ニ成ツヽ、嵯峨ノ奥ナル
山里ニ、草ノ庵ヲ引結、三人一所ニ籠居テ、偏ニ後生浄
P1062(三八ウ)

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P1060(三七ウ)
今一ナゲシサガリタル所ニゾ居ヘラレケル。是ニ付テモ悲ノ
涙セキアヘズ。心ノ中ニハ母ヲノミゾ恨ケル。重盛、宗盛已
下ノ人々、目モ当ラレズシテ、サバカリカタブキ申サレ
ケレドモ不力及一。「イカニ<。何事ニテモトク<」ト宣ケ
レバ、義王ハ、「参ルホドニテハ、サテシモ有ベキナラネバ」ト思
               1         レラ
テ、今様ノ上手ニテ有ケレバ、「仏モ昔ハ凡夫ナリ。我等モ
終ニハ仏ナリ。何レモ三身仏性具ル身ヲ、ヘダツルノミコ
ソ悲ケレ」ト、押返<三反マデコソ歌ヒケレ。是ヲ聞ク人、
ヨソノタモトモ所ロセキテ、仏御前モトモニ泪ヲ流シ
ケリ。サレドモ入道ハ少シモ哀ヲカケ給ハズ。マシテ
1 以下、『梁塵秘抄』 巻二−二三二 「ほとけも昔は人なりき。われらも終にはほとけなり。三身仏性具せる身と、知らざりけるこそあはれなれ」に近い。
P1061(三八オ)

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