ここから本文です

書庫全体表示

スロースリップと大地震の関係を考えてみましょう。

大地震の前にスロースリップが観測されている場合があります。
これをもって、前兆現象としてスロースリップが注目されたようです。
そこで、少し深掘りしてみましょう。


スロースリップ』とは何か?
簡単に言うなら、地震に似た現象ですが、地震よりはるかにゆっくりと滑る点が違います。非常にゆっくりと動くので、有感の震度を計測することはありません。

具体的な現象ですが、ここからは私見で書きます。
地震とは違い、おそらくは岩盤の破壊は起きていないだろうと思います。
静止摩擦係数と動摩擦係数の差が小さい境界面において、ある一点で静止摩擦係数を超える力が加わることから始まると推測します。
一点で滑ると、周辺に加わる力が増えるので、連鎖的に滑り始めます。しかし、動摩擦係数との差が小さいので、一気に加速するのではなく、緩やかに加速していくのだろうと考えています。
このように、滑る範囲が広がっていくと、どこかで滑りにくい岩盤に行き当たります。
この部分が、スロースリップの外縁となります。
やがて、スロースリップの震源域が支えていた力が周辺に移り終わると、スロースリップは完了すると考えています。

さて、滑りにくい岩盤側から見ると、スロースリップの震源域が支えていた力が、新たに加わります。
加わった結果、限界に達したなら、岩盤の破壊が起き、地震となります。
これが、スロースリップに伴う余震です。


ここで、『前震、本震、余震の定義』を確認しましょう。
まず、本震です。
本震は、一連の地震活動の中で最大規模の地震を指します。
従って、厳密には、地震活動が終息するまで本震を確定することはできません。
本震が決まれば、本震より前に起きた地震は前震で、本震より後に起きた地震は余震に分類されます。
前震、本震、余震には、物理的な性質の違いはありません。

   熊本地震の前震の後に本震が来ることを予知できたと主張する地震予知会社がありますが、
   物理的な性質から予測したのではなく、統計的に予測したようです。
   もちろん、熊本地震の例はまぐれ当たりで、統計的な処理で算出される地域特性を示す係数を
   用いたデタラメ予測法です。実際、別の地震では同じ手法を用いて外しているそうです。


スロースリップとその後に起きる大地震との関係に戻りましょう。

大地震の前にスロースリップが発生している」との考えがありますが、因果関係を踏まえると正しい表現ではありません。
未来の事象(大地震)が、過去の事象(スロースリップ)に影響を与えるはずがありません。
となると、前述の表現は「スロースリップによって大地震が引き起こされる」と改めるべきです。

では、スロースリップが起きると、必ず大地震が起きるのでしょうか。
房総沖では、1996年、2002年、2007年、2011年、2018年と、何度もスロースリップが起きています。
ですが、スロースリップを超える規模の地震は発生したことがありません。
スロースリップが起きても、大地震を引き起こすことは稀だと言えそうです。
ただ、スロースリップの震源域周辺では、小規模の地震が頻発します。
スロースリップが発生すると、スロースリップの震源域が支えていた歪みが周辺に移り、限界に達した場所で余震が発生すると考えられます。



大地震の前にスロースリップが観測されていることは、確かにあります。
この事実は、どう説明すればよいのでしょうか。

この問題を考えるために、一度、『前震と本震と余震の定義』に戻りましょう。

この定義では、最も規模の大きな地震を本震と呼ぶことを確認しました。
規模の大きさ以外に前震・本震・余震の区別はないのですから、スロースリップと大地震の関係も同様に捉えることができます。
つまり、スロースリップを含めた一連の地震活動において、最大規模の地震がスロースリップではなく、その後に起きた地震だったと考えるのです。
ちょうど、熊本地震における前震と本震の関係に似ています。
この場合、「大地震の前にスロースリップが起きていた」ように見えます。

大地震は、スロースリップが起因している可能性はありますが、大地震になるのは偶然と見るべきです。
たまたま、スロースリップの震源域の近隣に大きな歪みが溜まっている領域があり、スロースリップによって歪みが増えて地震に至ったと考えるのです。
そうであれば、色々と説明ができます。

通常、本震に比べて余震は小さいのですが、最大余震の規模と本震の規模との比率は、概ねM1.0程度です。
ただし、確率として言えるだけです。
地震の規模は、マグニチュードが1大きくなると、発生回数は1/10になると言われています。地震の10回に1回程度は、本震とほぼ同じ規模の余震が発生すると考えて良いでしょう。
でも、実際の地震では、一連の地震活動で最大の地震を本震とするので、本震より大きな余震が発生した時点で、『本震』は『前震』に、『余震』は『本震』に、扱いが変わります。なので、本震より大きな余震の存在は消されてしまいます。

閑話休題!

スロースリップの規模は、M6〜7くらいですから、10回に1回程度はM6〜7の地震が周辺で起きても不思議ではありません。
100回に1回は、M7〜8の地震が起きても不思議ではありません。
大地震の前にスロースリップが起きている」との事実は、単にスロースリップより大きな余震が起きただけと考えるべきでしょう。
この考え方で、スロースリップが起きても大地震が起きることは稀である事実も、うまく説明できます。



いつものように、ごちゃごちゃと書いてきましたが、スロースリップで大地震を予測するのは無理だと考えた方が良いように感じます。

この記事に

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
  • 名前
  • パスワード
  • ブログ

開くトラックバック(0)

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事