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Y部長と原型製作のM君との打ち合わせの場。
「体の節や関節を深くする形で作る必要がある」Y部長は言う。
「かなり、ディテール付きます?」 M君は聞く。
「作りこむ必要はあるね」
(あまり深くなるとまずいな・・・) 私は思った。
板の上にダニが置かれているとする。板の縁に沿って枠を作る。
そこへ石膏を流す。出来た石膏型にシリコンを流し、
硬化後に取り出し完成。それが私の頭の中にあった作業手順だ。
ここで石膏型について述べたい。
ご存知の方も多いと思うが、石膏は最初粉状である。
水を加えた石膏を作りたい物へ―つまり原型にかけていく。
硬化すれば基本的にこれで型が出来るが、石膏のみで作る事は
意外と少ない。石膏は確かに硬い材料ではあるが衝撃に弱い。
高いところから誤って床に落としてしまえば、場合によってはバラバラになってしまう。
そこでスタッフ、サイザルと呼ばれる繊維状の麻材で補強する。
これで欠けにくくなり、また落としてバラバラになるような事は
避けられるのである。
まず、原型に石膏のみを薄くかける。
全体が見えなくなる程度である。この状態で15〜20分待つ。
表面が半乾きになったところでさらに石膏を溶く。
その石膏に麻材を浸しそれをのせていく。
これを数回繰り返す。これで硬化させると丈夫な型が出来る。
多少欠けたりしても麻材が入っているため、
バラバラにはなりにくい。
だが、あまり原型に起伏が激しい部分が出ると
麻材が効きにくくなる。原型と型は凸と凹の関係だ。
原型で出っ張る部分は、型では引っ込む形になる。
逆に引っ込んでいる部分は型では出っ張ってくることになる。
もしダニの原型で深く掘り込まれるような部分が出てくれば、
型の方で出っ張る部分が多くなる。
原型と接する部分、つまり最初にかける石膏には、
麻材の補強がかからない。一層目に麻材を混ぜてしまうと、
正確に原型のディテールを再現できなくなるからだ。
つまり凹凸の差が大きいと欠け易くなるのである。
これに流し込むシリコンの硬度が関わる。
シリコンという素材はゴム材としては低硬度の部類に入る。
しかし、この時使用を考えていたシリコン―実際に使用した―は、型取り用であった。
型取り用である以上グニャグニャになる様では困る。
一定の硬度は必要になる。(そういうシリコンもあるが、それはひとまず置いておく)
このシリコンはゴム材としては比較的低硬度ではあるが、
型取り材としては高硬度という素材なのだ。
原型の凹凸が激しいと麻材の補強が効かなくなる事。
使用するシリコンが高硬度である事。
「石膏型が複数回の使用に耐えられないのでないか?」
これらの理由から私はそう考えた。 続く。
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