ラスベガスを離れるにしたがって、ラジオの電波は悪くなっていき、道は真っ直ぐに延びるように続き、周りには小さいが這いつくばりながら生きる木々が所々に這いつくばっていた。遠くを見ると砂漠の向こうには雪をのせたロッキー山脈の山々が連なっている。砂漠と雪を一度に確認できるこの大自然の偉大さを感じ撮りながらジャックはアクセルを踏み続けた。人は自然の存在を肌で感じ取ると、全ての事がちっぽけな物に感じてしまう。ニューヨークの高層ビルもラスベガスのきらびやかなネオンも自由に走るエルラルドも愛用のマルボロも、そして、何よりも自分自身がとても小さなつまらない存在に感じてきて、つまらない悩みはもちろんコールとジーナの事もどうでも良く感じて来ている。しばらく、彼は暖かい風に髪を靡かせて、何も考えずにひたすらアクセルを踏み続けた。ジャックは途切れ途切れに聞こえるオールディズを止めるとコンビニエンスで買ったレナード=スキャナーズのカセットテープを取り出した。初めから”Sweet Home Arabama”が流れ出し、ジャックの奥深くに眠る世代の血を躍らせた。