|
※文責は小生のみにあります。個人用の記録であり、内容について責任を負いかねる事を御了承下さい。また、素材としている文章の公開に問題が生じた場合、非公開とさせて頂く可能性があることも付記致します。
1 平成22年11月末に自動車部品工場をリストラされた甲(42歳)は、妻には「職探しに行く。」と言ってパチンコ店「ハッピーランド」に通いつめるようになった。平成23年3月4日午後8時過ぎ、甲は3万円ばかり損をして財布が空になったことから、いつものようにパチンコ仲間の乙(49歳)に酒を奢ってもらおうと考え、同店景品交換所前で乙を待っていた。そこにヤクザ風の丙(32歳)が通りかかり、「こら、そこどかんかい。」と言いながら近寄ってきて、「何だお前、しけた面しやがって。」などと因縁をつけてきた。甲は、パチンコで損をしてムシャクシャしていたこともあり、腹立ち紛れに足元のコーヒーの空き缶を丙に向けて蹴りつけた。缶は丙の足元をかすめて壁に当たった。 2 丙は、甲の意外な態度に驚くとともに腹を立て、「この野郎、ふざけんな。」などと叫んで左手で甲の胸倉を掴み右手拳で甲の左側顔面や頭部をいきなり5、6発殴りつけた。甲はこのままではさらに殴られると思い、丙の左手首を掴んで腕をねじ上げその脇腹にひざ蹴りを加えたところ、はずみで丙が床に倒れ込んだ。丙が起き上がってなおも甲に殴りかかる気配を見せたことから、二人はその場で睨み合う状態になった。 3 そこへ乙がやって来て2人が対峙しているのを見るや、「どうしたんだ、甲。」と聞いたところ、甲が「こいつが因縁をつけてきたんだ。」と答えた。乙が丙の顔を見ると、以前に何度か乙の席を横取りし、また頭を小突くなどしてきた男だったことから、「この際、甲と2人なら痛い目に会わせることができる。」と考え、甲に加勢することにした。 4 乙は、「この野郎、調子に乗りやがって。」などといいながら丙の胴体に組み付き、壁際に押しつけて丙を床に倒した。乙は甲に「何してる。やっちまおうぜ。」などと声をかけ、甲もこれに応じ、二人でこもごも丙を足蹴にするなどの暴行を加えた。しばらくして丙が動かなくなったことから二人が丙から離れると、丙は再び立ち上がってなおも二人に攻撃を加えてくる気勢を示した。甲は咄嗟に丙の胸辺りに思い切り前蹴りを加えたところ、丙はそのはずみで体勢を崩し、頭部から落ちるように転倒して後頭部を床面に強打し、仰向けに倒れたまま動かなくなった。 5 甲は動かなくなった丙をしばらく見ていたが、いきなり殴られたことで憤激を押さえ切れなくなっていたこともあり、倒れている丙にさらにその腹部や頭部を足で蹴りつけたり踏みつけたりするなどの暴行を加えた。丙は、付近の病院へ救急車で搬送されたものの、5時間余り後に死亡した。 6 丙は、肋骨骨折、脾臓挫滅、腸間膜挫滅などの傷害を負ってはいるものの、直接の死因は、胸に前蹴りを加えられて倒れる際の後頭部打撲による頭蓋骨骨折に伴うクモ膜下出血によるものと判明した。 甲・乙の罪責を論じなさい。 考え方メモ 甲:第1暴行と第2暴行は時間・場所的には連続しているといえども、丙が甲に対し更なる侵害行為をする可能性はなく急迫不正の侵害に対する一体の防衛行為とはいえないため、第1暴行については正当防衛が成立するとしても、第2暴行は量的過剰を論じる余地もなく傷害罪(204条)が成立。また、因果関係の問題から傷害致死罪(205条)の適用は出来ない。 乙:第1暴行について、甲の身体を法益とした他人の利益を保護する目的で、犯罪行為でない防衛行為への加勢であり、丙が年が若く体力が十分にある事から、正当防衛の範囲を逸脱しているとは言えず、傷害致死罪は違法性が阻却される。また、乙は第2暴行に対する共謀がなく、元々犯罪行為ではない正当防衛に加勢したに過ぎないため、第2暴行に対する帰責性はなく、無罪。 |
全体表示
[ リスト ]




