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受賞作は読んでないのですが、桜庭一樹の小説は数作読んだ事があります。
因みに、本人のサイトは確か「シェヘラザード」だったはず…。
流石は少女好きを自認するだけあります(笑)。
138回 直木賞受賞 桜庭一樹「私の男」↓
http://www.bunshun.co.jp/award/naoki/index.htm
それまでの代表作と言えばやはり「赤朽葉家の伝説」でせうが、私はこれも読んでいない…(爆)。
なので私が読んだ中で印象深いのは、「少女七竈と七人の可愛そうな大人」と「少女には向かない職業」だろうか。
特に後者の方はライトノベルのある意味完結した作者読者の関係から所謂『大人』をターゲットに移行した頃の作品…と位置付けられるかな?
この作品で最も印象深いのはやはり冒頭。
「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」
これは非常に明快で衝撃の強い文章である。
『中学二年生』、『十三歳』、『あたし』と名乗る少女が『殺す』という衝撃。
『大西葵』というある程度ありふれていそうな名前の少女が『殺す』という衝撃。
『一年間』で『ふたり』を『殺す』という衝撃。
そして、そこまで全て漢数字を使っているにも関わらず、人間を数える時の『ふたり』にだけ平仮名を用いている事に現れる殺人のリアリティ、失われた少女の魂の哀しみへの衝撃。
この1行は明らかに秀でている。
更に、この印象的な冒頭を締めくくるのはこの2行。
少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏たまたま、あたしの近くにいたのはあいつだけ。
宮ノ下静香(※「さつじんしゃ」のルビ)だけだったから。
因みに、「少女七竈〜」では、「わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」と全く同じ形式の中で性格の異なるヒロインを1行で書き分けて見せる能力もある。
更に印象的な言葉としては「君がそんなに美しく生まれてしまったのは母親がいんらんだったからだ」などもある。
はっきり言って作家として必要な要素の1つである構文の数は多くは無さそうだが、もう1つ重要な言葉のセンスにおいてはかなりのレベルにあると思って良いだろう。
さて、「少女には向かない職業」は内容としては簡単である。
冒頭の文章そのままに、大西葵の1人称で語られながら、少女の持つ思春期のみの焦燥、純粋、諦念、などの姿を抉るほどに見せ、本人と周囲の人間の様々な感情に晒されながら「殺人」に至るまでをリリカルに描いた作品である。
そこには思春期の少年少女の瑞々しいまでの内面を描かれた大西葵と彼らの年代の多くを占める『学校』の枠をはみ出してしまったミステリアスな少女宮ノ下静香が印象深く焼き付けられている。
まさに少女の魂の懺悔、といった濃密な趣がある。
若々しい感性の詰まった物語として、一度読む価値はあるでせう。
それから今回の受賞作も、粗筋を聞く限り、更に濃厚で深化した男女の関係の小説になっているようなので、ちょっと興味が湧きますね。
ただ、それとは別に、個人的には今回直木賞を取って欲しかった別の作品があります…。
…という事で、それはまた別の機会に…(笑)。
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