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私は相変わらず駄目人間のままですが、土曜日に新宿で会った後輩は何と、公認会計士になり、大手監査法人に名を連ねているそう。
素直に「凄いね〜、御目出度う!」と祝った後、「すっかり大人の女性になったね…」と褒めていたら、いつものサンダル、無精髭、黒の柄シャツと如何にもチンピラ風な格好の私を見てこう仰いました。
「…先輩は相変わらずですね〜(嘲笑)」
…
……………
…………………………
すいません…m(_ _)m
毎度ながら軽蔑の視線をたっぷり浴び、2時間ほどの間に見下されきった私…orz
ゲーテの世より駄目男は聖なる女性に救われるのしかないのですが、私の前にいつマルガレーテが現れてくれるのか…なんて情けない事だけは言いませんが…(苦笑)。
…取り合えず、今度奢って下さい、と御願いしたのはここだけの話…(爆)。
6/13@サントリーホール
指揮:ダン・エッティンガー
ピアノ:小川典子
テノール:成田勝美
管弦楽:東京フィル
合唱:新国立劇場合唱団
[曲目]
・ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
・シューベルト/リスト:さすらい人幻想曲
[アンコール]
・リスト:ラ・カンパネッラ
・リスト:ファウスト交響曲
さて、けふはファウストを中心に簡単な曲解説も含めた感想を。
無理矢理暇を作って参加したゲネプロ見学&アナリーゼのお陰でこうした知ったかぶりが出来るというのは有難いなぁ…(笑)。
しかしタンホイザーは中々。
フルトヴェングラーのような流れ(アゴーギクと言うべきか)を感じる演奏をしている。
確信犯的な強烈な磁場を感じる演奏で、やはりオペラ指揮者である事を意識させた。
さすらい人は…。
ピアノはキレもなく、オケも無理矢理作ったような流れにイマイチ乗り切れず巧くいかない。
更に、「マエストロがどうしてもと仰るので…」と言い訳めいた口上の後のリストもやはりミスが目立つ。
まぁ、これは仕方ないか…。
来年頭にやるガーシュウィンはこうではない演奏を期待する。
メインのファウスト。
この曲の特徴は、ファウスト物語を描くのではなく、あくまで各キャラクターの性格描写に特化した作品である、という理解は重要だと思う。
上にプログラムから抜粋した譜例を4つ載せているのだが、第1楽章ファウスト冒頭は最も上にあるように12音全てを用いる分散和音。
全ての音律を用いて表現し、世界の全てへのファウスト博士の欲求や完全なる世界(という幻想)と言えば良いだろうか。
1楽章においては主要主題が提示後も頻繁に姿を現す。
次に上げたのは1楽章の主要主題。
この主題はまさにファウスト自身を現すもので、数多の展開を見せ、若々しく流麗にメジャーへと転調したり、グレートヒェンへ語りかける2楽章では柔らかなアプローチも見せる。
全曲を通して、まさにメフィストフェレスに翻弄され、知性とは裏腹な即物的な変容を繰返し地獄へ落ちかける、という性格的要素はまさにファウスト。
続いて3つ目の譜例は、東フィルのプログラムによれば『ドレンテ主題』。
1楽章から既に登場するが、ファウストの中での感情的要素、特に愛に関わる本質部分であろう。
ファウストの行動的、外面的な要素である主要主題と好対照をなす主題であり、これもまた頻繁に出てくる。
グレートヒェンにも登場する事から一方的な愛情というよりは、双方向的な要素が強いか。
そのグレートヒェンの主題は第2楽章に登場。
全音を網羅するファウストとは対照的な、限定的で単純な音階要素にのっとった甘い旋律。
これにはドレド、とかミファミレミ、といった音階の中で巡回する音を使用し、より恋愛的性格を持っている主題になっている。
ここに若々しいファウストとの絡み合いや激しいマイナーへの転調による断罪、罰、死、といった暗転する運命の暗示もなされる。
3楽章のメフィストフェレスでは、新しい主題要素の提示はないものの、シ-ファ、といった不安定な和声を使い悪魔的要素を見出し、第1楽章の主要主題を哄笑するかのような茶化した変奏がなされていく所が非常に巧みだ。
幻想交響曲の第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」と近似な表現方法。
因みに、この曲では幻想とは対照的に、嘲笑われるのはファウストだけで、グレートヒェンはクライマックスには終結部に向かう、救いの使者として完全な形で現れる。
終結部はマーラー8番の恍惚の博士と同じ歌詞。
テノールによる「永遠に女性的なもの」=救いの使者グレートヒェンをクライマックスとしたハ長調の音楽。
こうして見ると、動機表現の重みがよく分かる。
エッティンガーいわく"Baby Wagner Opera"だそうで…。
彼は19歳の時、始めてこの曲に接したらしいが「ホルモンの分泌も活発な時期だけに、訳も分からず心惹かれ、その時から是非やってみたい曲だっただけに初めて演奏出来て嬉しい」というように熱く思いを語っていた(笑)。
ホルモン分泌は置いておくにしろ、確かにワーグナー的要素を有した劇的な大曲である。
まぁ、取り合えず上の譜例を覚えておけば、多分、この曲を理解し易いと思う。
さて、この日の演奏だが、p→ff、ゆっくり→早く、といった原則に従い、大きな流れを演出する演奏。
1楽章は抑制された序奏が、主要主題の提示から一気に怒涛の流れに。
快速だがせせこましさはそれ程なくグングンと進む。
音楽は伸びやかだが情報量が多く、密度が濃い。
ゲネプロでニュアンス付けに気を使っていた部分の硬軟の変化も大きく、非常に楽しい。
叙情的な部分では、対照的な音をなす。
こちらの唄の要素の部分の表現は中々に柔らかで美しく、バリトン歌手の唄心というべき表現だろう。
2楽章のグレートヒェンもやや軽快過ぎるきらいはあるが、メロディラインと共に軟らかな表現が印象的。
それから、ここでのシンバルが非常に効果的。
全曲に渡って、非常に音楽との親和性が高く、影のヒーローの1人だろう。
彼は惜しみなくブラヴォーを叫びたい。
3楽章は再び音楽を急転直下で加速。
疾走するメフィストフェレスの哄笑に翻弄され、運命を見失い、地獄へと誘われそうになる様を激しく抉り出す。
ニュアンスはゲネプロで手が回りきらなかったせいか、予想ほどしっかりとしたものではないため、もう少し深めることは充分可能ではないか、と考えてしまう。
ただ、スピードと広がりのある音はこの曲の多彩なアイロニーをかなりの水準で描き分けていたと思う。
終結部の合唱でもう少し止揚させてくれても良かったかも知れないし、テノールが声が若干裏切った点、また、合唱の内声的なピッチがイマイチ冴えなかったのは残念。
しかし、非常に充実したファウスト交響曲を堪能出来、久々に凄く楽しい演奏会だった。
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