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日本の敵
よみがえる民族主義に備えよ
宮家邦彦 著 文春新書(2015年)
この本はずーっと前にブックオフで買ったけど、冬の期間は雪山の滑狂にいそしんでいて放置していたやつだ。これと同様に放置してる本がまだ何冊も残ってるんで、そろそろ片付けなきゃいかんなと思って読んでみた。著者は、僕が毎回録画してガン観している「そこまで言って委員会」に出てる宮家先生。元外務省の官僚だ。
内容はひとことで言えば、最近の世界情勢について。つっても、本を放置している間にトランプおじいちゃんが大統領になったり、クネクネが大統領から引きずり下ろされたり、世の中はドラマチックに変わっちまった。そんなことが起こる前の世界情勢っつーことになるな。それでも、現在の状況でも通用するものがある、というより、現在のほうがさらに加速しつつある。それは何かっつーと、「民族主義」の台頭だ。つまり自分たち仲間がワイワイ盛り上がっていこうぜ、他のヤツラは知らねぇよ、って考え方だ。この本には書かれて無ぇが、トランプの「America First !」とか、イギリスのEU離脱とか、フランスのルペン姐さんのアゲアゲとか、そういうのはまさに民族主義チックな事象だなあ。
著者は、こういう世界情勢に対しては「ネットアセスメント」で備えるべきだとしている。なんじゃそりゃっつーと、相手国をいろいろな面から分析して戦略を立てるみたいな感じのものらしい。「いろいろな面」ってのが重要で、軍事とか経済とかだけで1つの方向性を決めるんじゃなく、人口とか文化とか宗教とか、もっといろいろだ。そして、それは常に変化するから、戦略も常に変化させ続けなければならない。日本のインテリは脳みそがコンクリートでできてるから、こういう「1+1=2」的じゃない分野はかなり苦手だろう。それが外交で遅れをとっている原因っつーことだ。
ぼくは「民族主義」ってのは「主義」っていうたぐいのもんじゃなく、人間の本質だと思っている。社会性動物である人間が生物学的に備えた性質だ。同じ群れ(すなわち社会)のメンバーを、後付けで「民族」って呼んで、それはすなわち、現在の「国」と呼ばれるものだ。近代になって、ラブ&ピースとか、ノーボーダーとか、お花畑主義が台頭してきたので、その対義語として民族「主義」と言っているのだろう。だから、民族主義の台頭というベクトルは、本当に正しいものだと思っている。
じゃあ、何がいけないかっていうと、「他のヤツラは知らねぇよ」っていうことだ。「南沙諸島はオレのもんだ」とか「移民とかマジ勘弁」とか言うやつが出てきて、他の国とツンツンし合っている。そのツンツンの仕方をどうするのか。これが国を左右する時代に来ている。このツンツンも日本人がかなり苦手な分野だろうな。
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本の紹介
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詳細
読んだ本を紹介するっぽいところ。
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反省させると犯罪者になります
岡本茂樹 著 新潮新書(2013年)
かなり前にブックオフで買うて、かなりの間放置していた本を読んでみた。犯罪者の更生支援をしているエラい先生である岡本茂樹とかいう人が書いた本だ。常識に逆行しているようなキャッチーなタイトル。こういうのは販売戦略としては非常に有効で、思わず買ってしまうというもの。だが、このタイトルはウソや大げさではなく、まさにその通りのことが書かれている。
犯罪者は悪いやつ。そいつらがブチ込まれてるブタ箱って所は「懲らしめる」目的もあるが、本来は「更生させる」という目的を持った施設だ。更生させるには、自分がどんな悪いことをしたか反省させなきゃならない、っつーのが一般的だ。しかし、そんなのはクソだと著者は言う。犯罪者は犯罪をした彼らなりの理由があるのだ。
親に虐げられて育ってきた。周囲にいじめられて育ってきた。そんな環境で自分を「抑圧」して育ってきた人が、ある日、突然爆発して犯罪行為をする。ある意味、犯罪者は被害者でもあるっつーことだ。そのような者に「悪いことしたんだから」と反省文を書かせる。すると「すいませんもうしません」みたいなすばらい反省文を書く。思ってもないことをつらつら書く。つまり自分をさらに「抑圧」する。それで終了。そんで出所した後、再犯して戻ってくる。当たり前だよね、根本的に何も解決していないどころか、さらに「爆発する力」を与えてるんだから。つまり、本当に更生させたいのであれば「抑圧」となっている原因を引き出して開放してやらなければならない。
これは別に犯罪とかに限らず、日常生活でも同じことだと著者は言う。ぼくも親に叱られて「ごめんなさい」と言いまくって育ってきたけど、はっきり言ってその場を逃れるためにとりあえず謝ってただけだ。謝る演技が上手くなっただけで、反省したことなんかほどんどないね。たぶんそんなこんなで、独りで沖縄とかボードとか行くようなやつになったのかなと思うね(それはそれでめっちゃ楽しいが)。つまり「反省させる」ってことはその後の人生を左右させるもので、やり方を間違えるとウツで首つったり、犯罪を犯してブタ箱行きになったりする。
ちなみに、この本は犯罪者を更生させるという視点に立って論じたもので、悪いやつは☆ねばいい、と言ってしまえばそれまでだ。多くのメディアは悪いやつを晒してフルボッコにしてやろうという意図で報道されているので、世の流れは更生にはほど遠い。悪いやつをフルボッコにしたいのであれば、やり方は簡単。反省文を書かせればいい。
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欲望のすすめ
古谷経衡 著 ベスト新書(2014年)
最近は釣りとかDS版クロノ・トリガーとかばっかやってて、夏に買った本を放置プレイにしていたが、そろそろ片付け始めようと思って読んでみた。著者は、ぼくと同い年の古谷経衡(ふるや つねひら)とかいう人。いかにも「オレは他のヤツとは違うぜ」的な感じのルックスの評論家だ。
タイトルは「欲望のすすめ」だが、内容もまさにそのとおりだ。近年では若者の「草食化」とか「クルマ離れ」とか「持ち家離れ(シェアハウス)」とか言われているが、そういうのはまったくのウソで、みんな欲望のカタマリなんだよ、っつーことが書かれている。最近のヤツは○学生の頃からチョメチョメだし、高級車も一戸建てもめっちゃほしい。でも不景気で金が無ぇから買いたくても買えねぇんだよ、っつーことをデータやアンケートに基づいた事実として提示。そして、政府は経済政策がうまくいってないのを、「最近の若者はクルマも家も持たずに無欲になったねぇ」とかほざいて、若者のマインドの変化のせいにして責任逃れをしている。だから政治家のジジババは☆ねばいいのに。みたいなことが真面目な文体で書かれている。
後半は、今までの歴史において、いかに日本人がガツガツした欲望のカタマリだったかという話を展開。特に、先の大戦では「アジア開放」とか「八紘一宇」を大儀に、いわばボランティア精神で戦ったんだみたいなことを保守系の人は言うけど違うだろ、と。日本の利益を追求して植民地にしたんだ。でもそれの何が悪いっていうのか。当時の世界情勢を見たら、ごく当たり前のことだし、ただの「バカなお人好し」で敗戦したと言うなら、ご英霊に対して失礼の極みだ、と言う。まったくその通りだと思う。
時代の雰囲気ってやつは非常に恐ろしいもので、現代は「何も持たない」こそがオシャレで都会的で洗練された感じにもてはやされてる。けど、ぶっちゃけヘドが出るほどキモいね。「あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しい」って感じのちょっとイカれた時代に戻りたいもんだ。
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自然はそんなにヤワじゃない
誤解だらけの生態系
花里孝幸 著 新潮選書(2009年)
ぼくは学生の頃に生態学をお勉強してたので、たまにはそういう本でも読んでみよう。っつーことで、ブックオフでこの本を買ってみた。自分の知っているジャンルのほうがツッコミが入れやすいというもんだ。
この本の趣旨としては、一般的にいう「生態系保全」ってのは間違ってるよ、ってことだ。たとえば、魚を守ろうと思って、川に浄化施設を作って水をきれいにすると、微生物がいなくなって、結果として魚もいなくなる。まあ、そんなことは「白河の 清きに魚も 住みかねて〜」なんてことで、中学生でも知ってると思うけど、そういうことを生態学の観点から解説している。生物はどのようなつながりを持っているか、これは「食物連鎖」とか「食物網」とか「生物間相互作用」とかいう概念で表されるけど、それを理解しないと生態系保全はできないよ、っつーことだ。
さて、著者の考え方の特徴として、生物のつながりを重要視しすぎているということが挙げられる。多くの生物学者もこれに当てはまるけど、いわゆる「生物多様性思想」の信者だ。つまり、人間も含めて生物は全てつながりを持っているので、生態系を「正しく」保全しないと、人間は生きていけない、っつー思想に陥っている。現実を考えてみれば分かるだろうけど、たとえば、どこかのジャングルで知らない動物が何種類も絶滅しても、人の生活にはまったく影響がない。人にとって重要な生物なんて野菜とかマグロとかほんの一部だ。こういうことを信者の皆さんは理解できない。何とかして「つながり」を求めようとする。著者はミジンコの研究者だ。水域生態系は陸上に比べてわりとロジカルに解説することができる。だから教科書どおりの概念だけで多くのことを説明しようとしているのかもしれない。大学生のレポートなら100点満点だと思う。だが、そこに問題がある。
ぼくの考えとしては、生態系保全なんてもんは、やりたいヤツに適当に遊ばせておきゃいい。魚を放流したきゃさせりゃいいし、外来種の草を抜きたいなら抜かしときゃいい。研究者が出てきて、正しいか間違ってるか、あーだこーだ指導する必要はない。それこそ茶番だ。なぜなら、生態系は複雑すぎて、たとえ研究者が口をはさんだところで予想どおりの結果になるなんてことは絶対にない。そして、そういう問題は政治がからんでいる。民主主義というシステムがあるかぎり、政治というのは多数決で決まる。科学的に間違っているからといって、大衆にそれを理解させて正すことは不可能だ。ただし、よくわからんイデオロギーの保全活動につき合わされるのはカンベンしてほしいけどね。
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反福祉論
新時代のセーフティーネットを求めて
金菱清・大澤史伸 著 ちくま新書(2014年)
ぼくは福祉とかまったくもって興味ねぇけど、仕事上で少しそれに関わることをしているので、教養の意味でこの本を中古で買ってみた。「反福祉論」というタイトルからすると「人に頼らず生きていけよ、弱いやつは死ね」みたいなことが書かれているかと思ってワクワクしてたんだけど、実際に読んでみると、まったく逆のことが書かれていた。要するに、よくありがちなクソつまらん本ということだ。
内容は、具体的な生活困窮者のケースがいくつか紹介されていた。たとえば、生活保護の申請方法とかも知らないようなホームレスみたいな人に対して、キリスト協会が慈善事業として炊き出しを行ったり、礼拝に参加させたりして支援してるというケース。支援された人は、その後に洗礼を受けて信者になったりして「居場所」を得られる。(これは、某カルト教団が信者を獲得する手口と一緒だけどね。)こういうケースを取り上げて、著者はどうやら「現行の福祉制度では人は救えない」ってことが言いたいようだ。今の福祉制度はダメだから「反福祉論」なんだと。そして、後半に行くにつれて、宗教の話になったり、無駄に難しい言葉を使った哲学っぽい話になったりしてわけが分からなくなっていった。
さて、この本のつっこみ所は尽きないが、簡潔に言えば、紹介されている例が「特殊ケース」ばっかだということだ。こういうのを持ち出して「福祉制度がダメ」とか全否定するのはちょっとアレだと思う。実際に、生活保護制度とか障害者支援制度とかで多くの弱者が助かっている。中には、これらの制度を受けられない人もいるだろうが、そんなことは当たり前じゃん。そういうことなら、たとえば、現行の生活保護制度のココが問題だからこう改善しようとか、そういう話になってしかるべきなんだけど、なんか中二病みたいに「世の中を変えよう!」ってな話ばかり書かれていて、結局のところ何がしたいのかまったく分からん。「福祉!福祉!」とか声高に言う人には、たまにこういうタイプの人がいるので温かく見守ってあげましょう。
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