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四七、キバを剥く大波 突然、アニキが、こちらを向き直り、いきなりわたしの腕を掴んだ。そのまま、わたしを片手で抱え、銃を突きつけ、里仁模君に向かって怒鳴った。 「キーを! ボートのキーをよこせっ! 持ってるんだろ!」 里仁模君はポケットからキーを取り出し、アニキに向かって投げた。 宙でキーに手を伸ばして掴み、アニキは、わたしを突き飛ばした。同時に高く跳躍し、次の瞬間、アニキはゴンジの乗っているボートに飛び移っていた。 激しい波に翻弄されながらも、ボートはエンジンを始動し、爆音と共に、嵐の海に飛び出した。 だが、直後、海は恐ろしいキバを剥いた。わたしの背丈の何倍もあるような大波が、ボートを追うようにしてその背後から襲いかかった。 「ドドドッパーーンンン!!」 里仁模君の照らす照明の輪の中、ボートはあっという間に転覆し、船底を見せて、そのまま白い波に呑み込みまれていった。 「ゴンジーッ、アニキーッ」 わたしにとって最初は悪党だった二人。その二人をわたしは声を涸らして呼んだ。 「里仁模君! 助けてっ! 助けてあげてーっ! おねがいーっ! 二人を助けてーっ!」 大波の吼え狂う海に体を乗り出して叫ぶわたしを、必死に抱き留めて、里仁模君は怒鳴った。 「だめだっ! ジュリちゃん! だめだよっ! もう助からない!」 「だって! だって、死んじゃうよ! 助けてあげないと死んじゃうよう!」 「キミまで、波にのまれちゃったら、だめだーっ!」 恐ろしい大波は、わたしの声もかき消して、里仁模君の声も呑み込んで、懐中電灯の光の輪の中でいつまでもいつまでも吼え狂っていた。 つづく いよいよ、物語も終章を迎えつつあります。予定では12月28日が最終回です。クライマックスシーンをお見逃しなく、最後まで気を抜かずにご来訪の程よろしくお願いします。
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ドキドキ出来事「奇っ怪猫島」
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