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「お告げの少女」 月島衣音 とても愛らしい、慎ましやかな少女がいた。 ある時、突然、少女に神霊が宿った。 少女が筆を手にし、紙に向かっていた時、母親が何気なくつぶやいた。 「今度の首相、誰がなるんだろうね」 不思議に、少女の手が勝手に動き、「何乃誰兵衛なり」と書いた。自分で書いたつもりはない。 首相が「何乃誰兵衛」に決まった時、母親は背筋に戦慄を覚えた。 少女に筆を持たせ、手近な所で予言させてみた。 株価の予測、競馬の予想、スポーツ選手の成績、政治・経済の動向まで、知るはずもない事柄すべて、少女は的中させた。 一躍、少女は有名人となり、少女の元にお告げを求めて、大勢の人が訪れた。 少女の神託はことごとく的中し、感嘆と称賛の声が集まった。 ほどなくTV局にも知れ、TV局はこぞって取材に押しかけ、番組で少女を取り上げた。 少女には大好きな、アイドルスターがいた。 あるTV局は、このネタを掴み、レポーターとして、少女に、そのアイドルスターを送り込んだ。 あこがれだったスターが目の前にいる。少女は、天にも昇る気持ちだった。 いくつかの質問の後、アイドルスターは、少女にとっての究極の質問をした。 「キミ自身は、将来だれと結婚するんでしょうね?」 途端に、少女の神託のチャネルは断ち切られた。筆は、少女の意志によって動いた。 「少女は、あなたと結婚するでしょう」 アイドルスターは、心の中で笑った。 すぐ後に、彼は売れっ子女優と結婚した。お告げは外れた。以後、少女に神託が下ることはなくなった。 * * * * * * 少女はおとなになった。普通のOLになっていた。 あのアイドルスターだった男も、すっかり落ちぶれ果てていた。アイドルの命は短く儚い。 売れっ子女優とも、とっくに破局を迎え、今は、だれも彼の名を口にすることはなくなっていた。 全盛期の面影を求めて、昔、マイク片手に取材に来た街を訪れた。 誰も知らないはずの駅の改札口に、あの時、少女だった娘がいた。 「待っていました。結婚する約束だったでしょ」 男はその街に職を求め、彼女と結ばれ、平凡な、だが幸せな一生を送ることができた。 〈ion〉 日本ブログ大賞2006「読み物部門」に応募登録しました。
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訪問、ありがとうございます!!このお話、面白かったです(≧∀≦)なんだか少女を自分に重ねてみたりして(^_^ ;)私もアイドルバカなのでwwまた、遊びに来てくださいね〜♪
2006/1/20(金) 午前 11:50
PANAさんありがとうございます。自分で書いていながら「平凡な、だが幸せな一生を…」というところ気に入っています。
2006/1/20(金) 午後 2:40
なんだか、このまま、長編小説になりそうな波乱の物語ですね。感動的でした。
2006/1/20(金) 午後 2:44
平凡だけど幸せな一生……案外送れないもんです(笑)^^
2006/1/20(金) 午後 6:59
彼女のお告げは、平凡な幸せを手にするためのものだったのですね。神託が下らなくなったのも、平凡であるため。深いなぁ。ぽちっと押させていただきます。
2006/1/21(土) 午前 4:24
このお話、いいですね。登場人物と同様、幸せな気分になれました♪
2006/2/3(金) 午後 6:03
アップしてから何日もしても、コメントが頂けるのは嬉しいですね。ありがとうございます。
2006/2/4(土) 午前 1:54