|
「涙」 月島衣音 ケツメイシの「涙」を聴くと、涙が溢れる。 “溢れた感情は、単純に、こぼれる涙、止めずに泣いて、涸れるまで…” “溢れた感情は、単純に、疲れたキミをそっと包んで忘れるため…” 俺の責任だった。俺が、幼い美希の命を断ってしまった。 あれほど冴江に「気をつけてね」って言われてたのに…、あれほど「お願いね」って頼まれてたのに…。 あの日、女房の冴江は早番で朝が早かった。 美希を心配しながら、何度もその言葉を口にしていた。 出がけにも「お熱計っといてね」って言う冴江に、面倒くさかった俺は「ああ」と生返事して、グズる美希を放っておいた。 保育園の支度をさせ、冴江がトースターに放り込んで行った冷めたトーストを、マーガリンも塗らずに口に押し込んでいた時、美希は軽い引きつけを起こした。 前にも一回あったことだ。「熱性けいれん」と医者に言われ、「熱冷まし」を与えたらすぐに治った。 俺だって、今日は朝の企画会議は絶対外せない。「いい加減なヤツはプロジェクトから外れてもらう」と、課長から言われていた。 「前の時の熱冷ましが残っていたはずだ」 薬を見つけ出し、ムズがる美希の口にムリヤリ押し込み、水を飲ませ、言い聞かせた。 「いいかい、今日はパパも忙しい。お利口さんで保育園に行くんだよ」 なおもムズがる美希を、「帰ったら、美希の好きな絵本読んであげるから」となだめた。 にっこり笑って、「ウン」とうなずいていた。 まさか、こんなに命がはかないものだなんて、思いもしなかった。 美希…、 俺を赦してくれ、いいかげんだった、パパを赦してくれ。 真剣におまえのことを心配してあげられなかったパパを赦してくれ。 おまえのことを守れなかったパパを赦してくれ。 冴江…、 俺を責めてくれ、どれだけでも、責めて、責めて、俺を苦しめてくれ。 それで、償えるなら、赦してもらえるなら、どれだけでも俺を責めてくれ。 車に乗せ、保育園まで連れて行き、 先生に、熱のことを内緒にして、空元気になった美希を預け、 あとはすっかり忘れて…、 会議に夢中だった時、電話を受けた。 まさか、こんなに命がはかないものだったなんて、知らなかった。 「すぐに来て下さい」と、保育園の先生の病院からの連絡を受け、 必死で祈って、車を走らせた。 あっけなく、美希は逝ってしまった。 「すいません。ごめんなさい」と保育園の先生が、何度も泣いて謝った。 先生は悪くないんです。俺が悪いんです。 ケツメイシの「涙」を聴くと、涙がこぼれる。 “泣いて、泣き疲れるまで、湧いて湧き溢れ出てくるだけ…” 自分を責めて、黙って肩を震わせ、俺の胸に顔をうずめた冴江。 お前が悪くない、みんな俺が悪い。 俺が、幼い美希の命を断ってしまった。 俺を責めてくれ、どれだけでも、責めて、責めて、俺を苦しめてくれ。 それで、償えるなら、赦してもらえるなら、どれだけでも俺を責めてくれ。 ケツメイシの「涙」を聴くと、涙が溢れ出てくる。 “溢れた感情は、単純に、こぼれる涙、止めずに泣いて、涸れるまで…” “溢れた感情は、単純に、疲れたキミをそっと包んで忘れるため…” 何遍聴いたか、何百遍、繰り返したことか。 聴いても聴いても、涙が溢れる。自分を責めて、何度も、何度でも悔やむ。 悔やんで悔やんで、聴きながら何度でも涙を流す。 “目にいっぱいに溜め込んだ涙と引き換えに、この機会に…” “また一つずつ、強くなりつつ、古い靴脱ぎ捨て歩いてゆく…” “溢れた感情は、単純に、こぼれる涙、止めずに泣いて、涸れるまで…” “溢れた感情は、単純に、疲れたキミをそっと包んで忘れるため…” 〈ion〉 ★100話目は悲しい話になりました。笑えるバカ話をと思ったけど、記念碑的100話目は、これがふさわしいと決めました。ケツメイシのこの曲が大好きなもんで…。
★連続100話達成! 「ドキ出来ショート」は、とうとう、今日で100話目! 輝かしい偉業(って自分で言うな)を達成しました! これも、ひとえに、読んで下さり、コメント下さり、応援下さった皆様のおかげです。ありがたくお礼申し上げます。 あ、でも、こっから先どうするか全然考えてませんでした。…とりあえずボチボチまた続けていきますんで、今後もご支援の程よろしくお願い申し上げまする。 〈ion〉 |
全体表示
[ リスト ]





4話をいっきに読んだのですが、他の3話は100話に向けて急ぎすぎっぽかったんですが。。。これは親としてグッと来ます。うちは上が喘息と、下はアレルギー持ちで、元気に産んであげなかった事を、どうしようもないですが悩んだ時期もありました。
2006/2/22(水) 午前 2:17 [ - ]
子供の病気を妻にまかせっきりで、心が離れそうになった時もありました。でも、そんな時救ってくれるのは子供の笑顔なんですよね!結婚5年目が終わろうとしてますが、家庭とは子供の為に有る物なんだと実感しています。
2006/2/22(水) 午前 2:20 [ - ]
長くなるとまずいんでこの辺にしときますが(笑)子供が健やかに、のびのびと成長できる親になりたいですし、そんな環境を大人が作っていきたいですね!100話ご苦労様です。悲しい話ですが、心が洗われました。
2006/2/22(水) 午前 2:24 [ - ]
おめでとうございます。そしてありがとうございました。記念すべき100話目は、切なく悲しいお話でしたが、感慨の思いと複雑に絡み合い、思わず目頭が熱くなりました。ゆっくりでいいです。また同じ時間を過ごさせていただけるのを楽しみにしています。
2006/2/22(水) 午前 3:28
100話目達成おめでとうございます。多彩な切り口の創作ショート、圧倒されそうです。2月22日、ぞろ目の今日、ionさんにとって記念すべき日になりましたね。
2006/2/22(水) 午前 7:48
100話完成おめでとうございます。胸にグットきたお話でした。ぐっときたのですが、保育園は少しでも熱があると預かってくれないと思うのですが。。。(無認可保育はべつですけど)お熱は何度だったのかなあとか保育園は厳しいという印象があって気になってしまいました。
2006/2/22(水) 午前 10:45 [ - ]
久しぶりに来てみたら、100話目なんて、なんだか喜んでしまいました(笑)改めて、おめでとうございます!これからも楽しみにしてますね♪
2006/2/22(水) 午後 1:38 [ aoi ]
以前、保母をしていたのでこのお話、リアルに受け止めさせていただきました。大人からするとちょっと具合悪いだけと思っても子供からすると具合の悪いときに預けられるって辛く寂しい現実です。なかにはコロっと元気に遊んでいるコもいますが、立場上安易なことはいえませんでしたが働くご両親のお仕事の立場も大変ですよね。でもやっぱり子供は大人とは違うから子供の体調を一番に考えて上げられるといいなぁって思います。
2006/2/22(水) 午後 3:01
100話達成おめでとうございます。毎日、今日はどんなお話やろか?と楽しみしてました。明日からどうなるんでしょ〜(^o^) まずは、お疲れ様でしたっ、今後も楽しみにしてますっ(><)/
2006/2/22(水) 午後 4:12
みなさんのコメントありがとうございます。人はいつどんな不幸に見舞われるか分かりません。今、とても悲しい事件が続発しています。この話は、近い経験から書きましたが、フィクションです。でも、今も娘を駅まで送っていくような時、車を降りて行く娘の姿に、もしかしたら、これが、元気な姿を見る最後になるかも知れないと思うことがあります。人は一瞬一瞬を大事に生きねばと思う瞬間です…。
2006/2/22(水) 午後 4:14
お疲れ様。100話達成おめでとうございます! まずはゆっくりご静養なさって下さいね。 今回はつらいお話ですね。宝石のような子供達は例えば40度の熱を出しても倒れるまではしゃぎまわる。事前にそれに気付くのが親の責任。 でも、日々の忙しさに・・・ついつい。 身につまされるお話です。
2006/2/22(水) 午後 9:39
こういうお話、弱いんですよね。子供の音読に付き合っていて、悲しいお話だと時々うるうるしてしまうんです。また、泣けるやつ、お願いします。
2006/2/22(水) 午後 11:29
実話かと思ってしまいました。私は息子と二人なのですが、ついつい仕事を優先してしまいがちだから、この作品を読んで改めて自分の行動に反省しました。こどもの話になると、自分と重ねてしまい涙がこぼれてしまいました。
2006/2/22(水) 午後 11:38 [ nob*po*1*72 ]
100話達成おめでとうございます。この話を見たら、面白かったという表現は不謹慎な気がしちゃいますが、、ドキ出来ショート、お話も、その試みも、すばらしいです。お疲れ様でした。
2006/2/23(木) 午前 0:23
みなさんのコメントに逆にグッときました。あまりたくさんのコメントを頂いて、すべてにお応えできなくてごめんなさい。フィクションと書きましたが、子を持つと際どいと言うか後から背筋を冷やすことが何度もあります。最近の幼子が犠牲になる事件のご両親のことをつい考えてしまいます。守ってやれなかったと言う気持ちがどれだけ重いか、お察しします。
2006/2/23(木) 午前 0:45
100話おめでとうございます!!!これからもがんばってくださいw楽しみにしています♪なんだかすごくせつないお話しでしたね…将来自分もそんなことになったらなんて考えるだけで恐いです…
2006/2/23(木) 午前 2:00
100話達成(*≧∀≦)ノ・:*:・・.。*・.。*才×〒”┝゚+。゚+。・:*:・ 記念の話に自分に戒め・・・親なら(*゚Q゚*)ドキィー とされたのでは?これが日常なんですね。こーゆー事故だってあるってこと、常に頭の隅にある私。異常か?過保護か?そう思っていたけどアクシデントはどこで遭うかわからないから。
2006/2/23(木) 午前 11:38
ほんの不注意なだけに、悔やんでも悔やみきれないものでしょうね。。1つの生命を預かっていると言う気持ちを持っていないといけませんね。。100話達成おめでとうございます☆無理をしない範囲で、この記録を伸ばしていってほしいです!
2006/2/25(土) 午前 1:53
私は…産んであげることの出来なかった、二人の子供に赦しを請いたいです…
2006/2/25(土) 午前 3:07 [ dol*h*n_smi**_to*me ]