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「ボクの背中の傷」 月島衣音 「にいちゃん♪」 二つ違いの良太が、ボクの浸かっている湯舟に「ドブーン!」と、勢い良く飛び込んできた。 しぶきがボクの顔にかかる。思わずぶん殴って、言ってやった。 「来んなよ! おまえなんか弟でもなんでもない。パパが可哀想だからって引き取ってやってるだけなんだぞ!」 良太が涙を「ポロポロ」こぼす。 またこれだよ。案の定、あとから入ってきたパパが、こわい目でボクをにらみつけた。 ほんとはこんな温泉なんか来たくなかった。USJか、ディズニーシーの方がよっぽど楽しいはずだ。 良太の背中には大きな傷跡がある。とっくに治っているのに、時々「いたい」と言う。 だから、いつも温泉に来る。傷にいいらしいからだ。 ほんとは逆なんじゃないかって、時々思う。良太がほんとの子で、ボクがもらわれたんじゃないかって。そのくらい、パパもママも良太をひいきする。 良太の両親は死んじゃった。パパとママは親戚でもなんでもないのに、良太を引き取った。アパートの隣りに住んでいただけだというのに。 「ばかやろう!」 パパが湯舟のボクに怒鳴った。風呂場には他にもお客がいる。でも、パパは遠慮しなかった。 パパは良太を残し、ボクの腕を掴んで大鏡の前に連れていった。 「これを見ろ!」 背中を鏡に向けさせ、ボクの背中を指してパパは言った。 背中のはしっこに、良太とよく似た傷跡がある。小さくて気付かなかった。 「この傷のことを良く覚えとくんだ!」 良太の一家とは木造安アパートの隣同士に住んでいた。仲の良いつきあいだったという。 その日、ボクは良太の家に預けられていた。 パパたちがプロパンの爆発事故があったと知ったのは、夕方遅くに帰った時。 「ゴオゴオ」いって燃えるアパートの前は、消防車と救急車と、野次馬がごった返していた。 「う、うちの子は?!」 救急車に血まみれで乗せられた良太のパパ、ママを見て、ボクのパパは聞いた。 「大丈夫…、守った」 担架の上で、良太のパパはそれだけ言った。 救急隊員にかかえられ、連れてこられた良太とボクを見た時、パパは力が抜けたという。 良太は背中に大きな傷を負っていたが命は守られ、ボクは小さな傷だけで済んだ。 良太のパパとママは担ぎ込まれた病院でくなった。爆発の時、とっさにふたりは、良太とボクを守ったんだ。 ガスが漏れていたのは、隣のボクの家の方だった。 ボクとパパ、ふたり素っ裸で大鏡の前に立って、初めて教えてもらったその話。 涙を「ポロポロ」こぼして話してくれたパパの話。 初めて知ったボクの背中の傷の話。 「この傷を忘れるな。お前の命を守ってくれた人がいるっていう証だ」 温泉の大鏡に映る、パパとボクの姿は、ボクのこぼれる涙で潤んで見えなくなった。 〈ion〉 ★ 今まで気付かなかった背中の傷、初めて教えてもらったその意味
背中の傷、足の傷、指の小さな傷跡。それぞれ、忘れられないストーリーがあります。 〈ion〉 |
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心揺さぶられるお話です。ボクと良太君はこれから本当の兄弟以上に仲良くなれそうですね。亡くなった良太君のご両親の分まで幸せにね☆
2006/4/10(月) 午前 0:35 [ ささ鳴き娘 ]
私も、パパとボクといっしょに、涙ぽろぽろです。
2006/4/10(月) 午前 5:35
朝からポロポロ泣いちゃいました。でも、この背中の傷が「心の傷」を埋める一番の薬なのかも♪きっと強い繋がりですねっ♡
2006/4/10(月) 午前 7:33
すごく感動しました。もう二度とボクが良太君を殴る事は無いのでしょうね。
2006/4/10(月) 午後 0:36
感動しました〜(T0T)
2006/4/10(月) 午後 1:21 [ aoi ]
※辛いでしょうね( ̄~ ̄;)人間生ていくにはいろんな事があります。その向こうには必ずと言ってよいほど☆幸福なこともあります♪どんな立場になっても強く「生きる」ことを忘れず、社会の役に立つよう心がけ「意志」強く目標を持って頑張りましょうね♪お蔭様の心忘れず!☆感謝 サンQ
2006/4/10(月) 午後 1:53
泣けました!もう、感動です。(涙)
2006/4/10(月) 午後 2:55 [ 風華 桜鈴 ]
心温まるお話ありがとうございます♪気持ちがほんわかしてなんだか優しい感じです♪(*´∀`)ノ
2006/4/10(月) 午後 7:13 [ - ]
偶にやって来て読ませてもらってるんですが、今回の作品見事にやられました。かなり感動。
2006/4/10(月) 午後 7:51
履歴からやってきました。人にはいろんな傷がありますね。とてもじんわり心に染み渡りました。また来ます☆
2006/4/10(月) 午後 10:25 [ - ]
傷は身体以上に、心に深く痛みや想いが刻まれるものですね・・・彼らに、背中の傷以上に深い絆を築いて欲しいです(;_;)
2006/4/10(月) 午後 11:28
☆ささ鳴き娘さん、ありがとうございます。「本当の兄弟以上に」結ばれる縁というものがあるんですね。★つっきいさんありがとうございます。「涙ぽろぽろです」なんて、ブログ書き冥利につきます。
2006/4/11(火) 午前 0:40
☆みよこさん、ありがとうございます。「心の傷を埋める一番の薬」、コメント読んで泣かされました。★山葵桔梗さんありがとうございます。コメントに励まされます。
2006/4/11(火) 午前 0:43
☆AOIさんありがとうございます。うれしいです〜(T0T)。★サンQさん、含蓄ある沢山の言葉、ありがとうございます。がんばります。
2006/4/11(火) 午前 0:48
☆hu_kao_rinさんありがとうございます。そのコメントに泣けました。★沙羅さんありがとうございます。「心温まる話」、お互いいっぱい書きたいですね。
2006/4/11(火) 午前 0:50
☆ロンさんありがとうございます。あったかいコメント感謝です。★ぷ〜ちんさんありがとうございます。「じんわり心に染みる」話、たまにしか書けませんが、がんばります。
2006/4/11(火) 午前 0:53
☆さるたまさんありがとうございます。手のひらにある傷跡、その怪我の時を思い出し、書いた話です。★みなさんの有り難いコメントにさらに「書きたい」意欲が刺激されました。つたない筆ですが、今後もよろしくお願いします。
2006/4/11(火) 午前 0:59
・・・おいら・・・こういうの・・・弱いんです・・・ありがとうございました。。。ポチっと。
2006/4/13(木) 午前 3:51