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「時間屋(5)…妖怪・雪隠ばばあ」 月島衣音 スーパーの男子トイレの入り口。小さな女の子がしゃがんで、ドアの下から中をのぞき込んでいる。 ボクは用を足し終わって、トイレを出、しばらく店内をブラブラしていた。 帰りがけにトイレを見ると、さっきの女の子が、同じ姿勢で中をのぞき込んでいる。 あれから、とうに三十分以上は経っている。 「どうしたの?」 声を掛けると、女の子は泣き顔になって言った。 「パパがでてこない」 見ると大便所のドアの一つが閉じたままだ。ノックするが応答がない。店の人を呼んで開けてもらうと、そこに女の子の父親が倒れていた。 泣きじゃくる女の子。すぐに救急車を呼んだが、女の子の父親の命はすでになかった。 返す返すも、あのブランクの時間が口惜しい。 最初に女の子を見かけた時、声を掛けていれば、間に合ったかも知れない。 「時間屋」という不思議な看板を掲げた店の奥、一人の若い男が、店主のバアさんに話している。 「時間売ってくれ。時を取り戻せないか?」 「可哀想じゃが、おまえさんに時間は売れん」 バアさんは、そう冷たく言って立ち上がった。男はガックリうなだれる。 だが、いきなりその首をめがけ、バアさんは空手チョップを食らわせた。 男は床に崩れ落ちる。 「ごめんよ。売ることは出来ないが、ほんのチョビっと、おまえさんの時間の前後をいじくらせてもらう」 バアさんは倒れた男から「時間」を抜き取る。 瞬時に結晶に変わった男の「時間」は、鮮やかな心臓の色をしている。 「ブルちゃんや、『妖怪・雪隠ばばあ』の所へこれを届けておくれ。よろしく頼むって」 寝そべって様子を見ていたブルドッグのオイラの前に、バアさんは結晶を放ってよこす。 それを口でキャッチし、オイラは、店をダッシュで飛び出した。 スーパーの男子トイレの入り口。小さな女の子がしゃがんで、ドアの下から中をのぞき込んでいる。 用を足し終わり、トイレを出ようとする時、その姿に妙に胸を締め付けられた。 「どうしたの?」 思わず声を掛けると、女の子は泣き顔になって言った。 「パパがでてこない」 閉まったままの大便所のドアをノックしたが応答がない。 すぐ店の人を呼び、開けてもらうと、そこに女の子の父親が倒れていた。 救急車を待つ間、店員の手でAEDによる緊急処置が施される。 「大丈夫! きっと助かります」 駆けつけた救急車。救急隊員の言葉に、思わずボクは「よかったね」と女の子の手を握った。 女の子は「コクリ」とうなずく。ボクの手を握り返した小さな手の上に涙の滴がこぼれ落ちた。 〈ion〉 ★ AED(自動体外式除細動器)
傷病者の胸にこの装置の電極パッドを装着し、音声指示に従うだけで、器械が自動的に除細動の適応か否かを判断してくれる。救助者は、器械が除細動の指示を出した時、通電のボタンを押せば良い。 脳虚血状態が4分以内であれば、除細動により血液循環が再開されることで、致命的な脳障害を防ぐことができる。 〈ion〉 |
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時間屋シリーズ。このままだと、一冊の本になりかねませんね。
2006/7/27(木) 午前 3:42
はじめまして おはようございます('д')ノまだ これしか読んでませんが・・・なにげに ちと 目が潤んじゃいました (ノ_<。)グシュ これまで生きてきたなかで ちょっとした言葉や返答によって「もっと別の道があったのでは?」と思う事がたくさんありますねぇ・・・その場で起こす行動によって色んな未来(別れ道)が選択されてるんだなぁと・・・でわ しつれいしましたo_ _)-o
2006/7/27(木) 午前 7:08 [ - ]
☆KOKOさんありがとうございます。また、とっておきの話考えて、書きますのでよろしく。
2006/7/27(木) 午後 10:54
☆えこさんありがとうございます。ぜひ時間屋シリーズ、通して読んでください。また、感想下さい。
2006/7/27(木) 午後 10:56
なんか、、、不思議なストーリーですね。恋愛小説でもギャグでもない、こういう話が書けるなんてすごいですね♪見習いたいです(^^)
2006/7/27(木) 午後 11:20 [ - ]