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「時間屋(7)…最後の海水浴」 月島衣音 「もっと、もっと生きたいよ! もっとユウと一緒にいたいよ」 そう、彼女は「ユウ」と名乗るその若者に言ったという。 でも、今、その彼女は病院で昏睡状態なのだ。 「金は? いくら払えるんじゃ?」 ユウ君は月末にもらえるはずのバイト代の額をバアさんに言った。 「だめじゃね。全然足らん」 ユウ君はガックリうなだれる。 「でも、いい方法がある」 バアさんはユウ君に言った。 「愛しているんなら、お前さんの元気な『時間』と彼女の昏睡の『時間』を足して二で割ればいい」 うなずいたユウ君の首筋に、バアさんはいきなり空手チョップを食らわせた。 一時的に気失ったユウ君の「時間」を引っぱり出し始めたところで、バアさんの手が止まった。 「だめだね。こりゃ」 ユウ君の「時間」に問題があったようで、眉間にしわを寄せて、バアさんは何事か考えている様子。 バアさんは、ウィッチに頼んでユウ君の彼女の「時間」を持ってきてもらう。 小さなテーブルの上で、二人の「時間」の結晶をこね合わせる。 作業をし終えた頃、ようやく目を醒ましたユウ君に、 オブラートにくるんだ小さなふた包みの「時間」を、持たせて帰した。 「可哀想だが、仕方ないやね」 「時間屋」という不思議な看板を掲げた店先に、ブルドッグのオイラは寝そべっている。 そのオイラに向かって店主のヨボヨボバアさんは、話しかける。 「でも、きっと今頃、彼女も最後の海水浴を楽しんでいる…」 夜になって、つけたテレビのニュースが、溺れた海水浴客を救おうとしたアルバイトの監視員が、共に命を落とすという事故があったと報じていた。 「こういう運命だ。ユウ君ちゅう若者も。でも、いいじゃないか。二人手を取り合って海の滴になったんじゃ」 〈ion〉
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「心中もの」 みたいですね。
2006/8/3(木) 午後 5:29
時間屋シリーズ、乗ってきてますね。がんばってください。
2006/8/3(木) 午後 11:51
☆KOKOさんありがとうございます。がんばって続けます。★Yosshyさん、応援ありがとうございます。時間の不思議をどこまでも追求してみたいです。
2006/8/3(木) 午後 11:54