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「時間屋(9)…灰色の時間さえ」 月島衣音 「時間屋」という不思議な看板を掲げた店先に、ブルドッグのオイラは寝そべっている。 一見、時計屋のように見える店の前、歩道に前足を投げ出し、ダラーンと上唇を垂らし、ボヤーッと寝ぼけまなこで、オイラは寝そべっている。 店の奥で、店主のヨボヨボバアさんは、さっき来た若いカップルの相手をしている。 ここでは、魔女や妖怪が集めてきた、色々な人の余った「時間」を商っている。 「悪いがねぇ、もう、今日は売れ残りの時間しか、ここにないんじゃ」 ここの商品になる「時間」は、人から離れる時、結晶になる。結晶は、その人の瞬間、瞬間の心の色で着色するのだ。 「真っ赤な情熱の時間も、透き通る空色の希望の時間も、ワイン色の大人の成熟した時間も、なくなっちまった」 「あと、どんな色の時間の結晶が残ってるんです?」 女の方が言う。 「残念ながら、こんな汚い灰色の時間しか残っておらん」 「灰色の時間。決して汚い色なんかじゃないわ。灰色はコンクリートの色。 大地の上にしっかり築き上げられた、コンクリートの建物の色よ」 男も言う。 「ウン。これから、家庭を築いていこうとしている僕たちにピッタリの色だ。 頑丈なコンクリートの土台の上に、雨風から守ってくれる立派なコンクリートの時間を築くんだ」 「そ、そうじゃな。灰色、すばらしい色じゃ。ワシも教えられたよ」 バアさんに包んでもらった灰色の時間の結晶を手にして、二人は店を出て行く。 うれしそうに、お互いの手をしっかり握り合って。 見送るブルドッグのオイラは、ホコリのつもった「時間屋」の店先で、今日も寝そべっている。 〈ion〉
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どんな色も・・・それぞれの役目をもっているんですね。
2006/11/29(水) 午前 1:08
なんだか、素敵なストーリーでした。他の人からみたら、つまらない色でも、見る人によって、素敵な色に変わるんですね。傑作ポチです。
2006/11/29(水) 午前 10:18 [ pap*wa*41* ]
待ちに待っていた「時間屋シリーズ」最新版。「灰色」というと。なんとなく嫌なイメージがよぎる色ですが、どんな色でも、それぞれが特別な「オンリーワン」なのですね。
2006/11/29(水) 午後 1:30
黒と白のあわせ色。。。。素敵でした。。。どっちつかずの曖昧さのあるカラーだね。
2006/11/29(水) 午後 5:59 [ rika/rikarudo ]
逆転の発想がいい。人生も良い方へ考えれば、世の中も違って見える。
2006/11/29(水) 午後 7:37 [ たかやん ]
☆ほのかさんありがとうございます。「それぞれの役目」っていい表現。灰色はきっと他の色の引き立て役かな。
2006/11/29(水) 午後 8:37
☆ぱぴわんさん傑作ポチありがとうございます。人が見向きしないものにも価値を見いだすことができる人間になりたい。
2006/11/29(水) 午後 8:41
☆KOKOさんありがとうございます。このシリーズまだまだ、じっくり温めながら育てていきますんで、よろしく。
2006/11/29(水) 午後 8:43
☆rikarudoさんありがとうございます。そうですね。黒と白の配合を変えれば灰色も明るいから暗い色んなバリエーションが生まれる。人生も一緒ですね。一つの人生、色んなバリエーション作って生きたい。
2006/11/29(水) 午後 8:46
☆たかやんさんありがとうございます。ポジティブシンキング♪良い方へ良い方へ♪
2006/11/29(水) 午後 8:47
『灰色の時間こそ』だね ^^ 傑作ポッチでっす。
2006/11/29(水) 午後 11:55
頑丈な基礎の色って地味なもんです。それが好きってエライ!
2006/11/30(木) 午前 1:01