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「時間屋(10)…病魔」 月島衣音 病魔は着実にキミを蝕んでいた。 かなうことなら、病いの進行を止めてほしい。 その日、願いが叶ったのだろうか? ボクは「時間屋」という不思議な看板を掲げた店にいた。 バアさんが現れ、「ブーッ」と水をかけられ、目をつぶって、また目を開けると、ここに来ていた。 古びた店の中は寒い。店の隅に古い小さな薪ストーブがあった。 「病気を治すだって? バカ言うでにゃあ。あたしゃ医者でにゃ。そんなことは出来ゃせん」 「医者には不治の病いと言われた。妻の病気の進行を止めるだけでいいんだ」 赤々と燃えるストーブに手をかざしながら、ボクは店主のバアさんに願った。 「時間なら、売ってやる」 「時間を?」 「この世には時間をムダにしておる輩もおる。そいつらの時間を買い集めて売っておるんじゃ。ここは」 商品の「時間」を見せてもらった。それは赤い美しい結晶だった。 時間は人から離れると、結晶になるのだという。 キミに、買って帰った時間の結晶を呑ませた。 「これで、時間を止めることができる」 呑んで、夢遊病患者のようにキミは一人、魂を浮遊させた。何日も、何日も。 「別世界に遊んだ」 魂を浮遊させている間の時間を、キミはそう表現した。 その世界でキミは、死の病いから解き放たれていた。 確かにキミの中で回る病魔の時計は止まっていた。 だが、止まったままの時は永遠にはいられない。 時間を使い果たすのとほとんど同時に、キミの最期の時は来た。 「幸せだった」 キミは、そう言った。 キミを見送ったあと、 バアさんがまた現れ、「ブーッ」と水をかけられ、目をつぶって、目を開けると、時間屋の店の中にいた。 古びた店の中は寒い。店の隅にあった古い小さな薪ストーブにあたりながら、バアさんに訊いた。 「呑んだ時間の分、人は長く生きたということになるのかな?」 「そうじゃ」 古い小さな薪ストーブは、前に見た時より、サビがかなり進んで、古びている。 妻に呑ませた時間から、ほんの少しだけ頂いたカケラ。それが…、ボクの時間も伸ばしていた。 〈ion〉 |
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すごく切ないです。
別れを惜しむよりも妻への愛、妻の現世での幸せを願う無償の愛、それが本当の愛なのかもしれないと考えさせられました。
だけど悲しいのです。悲しいけれど落ち着いていられるような不思議な感覚を覚えました。感情移入しちゃう物語ですね。
2008/1/15(火) 午後 6:33
うーん・・・・
「幸せだった」かあ・・・・
この世から身を引く最期にこの台詞、言えたらいいなあ・・・
2008/1/15(火) 午後 6:41
おやじです。なんか胸が痛くなりますね。毎日どのようにストーリ考えているのですか?凄いですね!尊敬します。
2008/1/15(火) 午後 8:03 [ おやじ ]
悲しいけど、なんだか、その愛が美しくてうらやましく思えます。
大傑作ぽち。座布団、十枚!
2008/1/15(火) 午後 10:19
☆たかちゃんさんありがとうございます。「感情移入」ウレシイ言葉です♪
2008/1/16(水) 午前 0:01
☆かりんさんありがとうございます。最新医療で命のばしても、不幸せだったらなんにもならないよね…
2008/1/16(水) 午前 0:03
☆oyajiya77さんありがとうございます。毎日雑巾みたいに絞ってストーリー吐き出してます♪
2008/1/16(水) 午前 0:06
☆KOKOさんありがとうございます。お〜っ!こないだ失った座布団一気に回復♪
2008/1/16(水) 午前 0:07