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「お姉さんのおまじない」 月島衣音 少年の大事なもの。それは死んだパパが彼に残してくれたカメラ。 休日のその日、少年は、その大事なカメラを持って、自転車で撮影にでかけた。 パパが死ぬ前、少年を連れて行ってくれた公園で、いつも撮すのは草花や、鳥、昆虫だった。 少年はパパと同じように、その日、公園の池や、花畑に舞い飛ぶ、トンボたちを撮していた。 場所を変え、夢中でトンボたちを撮していて、レンズキャップを落としたのを、少年は気づかなかった。 少年がそのことに気づいたのは、家に帰り着いて、自転車のカゴに入れていたカメラを取り出した時。 ストラップに掛けていたはずのレンズキャップがなくなっていた。 自転車の振動で外れたのなら、カゴの中に残っているはず。 少年は公園で撮影に夢中になっていた時、落としたものと思い至った。 その日は、すでに夕方遅くになっていて、探しに戻ったら暗くなってしまう。 レンズキャップがなくても、撮影に支障があるわけではない。 落としたものは仕方ない。そう半分あきらめかけていた。 けれど、学校のある一週間、少年の心の「モヤモヤ」は消えなかった。 パパは物を大切にする人だった。 そのパパの残してくれたカメラの価値を、キャップを無くしたことで下げてしまった気がした。 次の休日、少年はカメラを持って、今度はキャップ探しをかねて公園に出かけた。 少年は先週自分がたどった道を逆戻りして、心あたりの場所を探した。 だが、レンズキャップは見つからない。 週の途中に大雨の日があった。小さなキャップは側溝に流されてしまったのかも知れない。 少年はすっかり気落ちしていた。 その時、ふと、少年は思いついた。 公園は、「市民の憩いの公園」で、スタッフも置かれ、市によってしっかりと管理されている。 管理事務所の落とし物センターに行けば、誰か拾って、落とし物として届けてくれているかも知れない。 少年は急いで管理事務所の落とし物センターに行った。 そこには、案内のお姉さんがいた。 彼の願いに、やさしく、落とし物の届けがないか調べてくれた。 けれど、彼のレンズキャップは届けられてはいなかった。 たかがレンズキャップひとつに、でも、お姉さんは優しく、少年に応対してくれた。 落とし物届けを書いて出せば、見つかった時連絡してあげると言う。 優しいお姉さんの応対に、つい、少年は、カメラが死んだパパの形見であることを話した。 すると、お姉さんは、心から言ってくれた。 「そっか、パパの大事なカメラだったんだ。キャップ見つかるといいね」 それから、お姉さんは、おもむろに彼の額に指を当てて言った。 「おまじないかけてあげる。もういっぺんがんばって探してごらん。今度はきっと見つかるよ」 「もう一度探せばきっと見つかる」 お姉さんのおまじないに、少年は、ほんとうに見つかる気がしてきた。 さっき探した池や花畑の周辺に戻り、少年はもう一度必死で探した。 「あった!!」 散策路の雨水を流す側溝の格子の枠フタの所に、草や土砂にまみれてレンズキャップはあった。 少年は、落とし物センターのお姉さんの所へ駆け戻った。 「あったよ!!」 見つかった喜びをめいっぱいに表して、報告に戻った少年に、お姉さんもめいっぱいの喜びを込めて言った。 「よかったね♪ ほんとに、ほんとによかったね♪」 〈ion〉
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きっとお姉さんは、こんな呪文を唱えたのでしょう
「あきらめないで」
ちょっと泣けそうになっちまいました。ポチ進呈です。
2009/6/28(日) 午前 11:29
あきらめなければ、失敗にならない、と誰かが言ってました。
信じてあきらめない、この少年のような気持ちを忘れないようにしなくちゃ
2009/6/28(日) 午後 1:10
ほんと に 窮した時に、 ほんとう の おまじない が ^^
最高! ぽち !
2009/6/28(日) 午後 3:23 [ ang*a*ugen ]
☆TENさんありがとうございます。「あきらめないで」、だれにとっても大事なおまじないかも。
2009/6/29(月) 午前 2:31
☆ぽこたんさんありがとうございます。人を、そして自分を信じる気持ち、あきらめずに持ち続けること。大事だ〜っ♪
2009/6/29(月) 午前 2:33
☆angyamugenさんありがとうございます。最高!だなんて、恐縮です♪みなさんのぽち! 改めて「ありがとうございます」。
2009/6/29(月) 午前 2:36