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「足音」 月島衣音 《 ウィーーーーーーン 》 オフィスのドアの開く音。 部屋から駆けて出て行く彼。 その足音が一旦止まった。 振り返って、彼が、ドアの外からあたしを見ている。 やがてゆっくり歩き出した足音。 《 ウィーーーーーーン 》 オフィスのドアの閉じる音がして、すぐに、足音は聞こえなくなった。 この部屋で、殺人事件が起こった。 オフィスの奥、机の陰にこのオフィスの主が死んでいた。 《 ウィーーーーーーン 》 オフィスのドアの開く音。 事件を捜査している刑事が入って来た。 「警察の者だが、 キミの彼が疑われている。 昨日、キミの彼が、この部屋から出て行くところを見なかったかね?」 「イイエ、見ません。 あたしが見るハズないでしょ」 「訊き方が悪かった。 教えてくれ、 昨日、キミの彼が、この部屋から出て行くところを聞かなかったかね?」 「イイエ」 目の見えないあたしは、刑事の声の方に向かって応えた。 「聞いてません」 彼を守るために。 〈ion〉
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