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四八、海上保安庁出動要請 「アンポンタン! おみゃあはだからアンポンタンだっちゅうんや。そんなコウモリから猫が生まれる訳がにゃあがや!」 恐ろしかった台風の一夜が明けて、わたしたちは今、蒲郡市内の病院にいた。 隣り合わせの二つのベッドの中にいるのは、アニキとゴンジだ。死んだように眠りこけている二人に遠慮もなしに、博士はいつもの「宮地佑紀生」節で、ガナッている。 「でも、博士のことだから、遺伝子操作とかでやっちゃったんじゃないかって…。」 「いかな、わしでも、そんなこと出来せんて。神様じゃにゃぁ〜んやで。」 完全にわたしの思い違い、考え過ぎだった。アビーがミニ猫たちの父猫なことは間違いなかった。アビーは突然変異で生まれた、たった一匹の大事なミニ猫の遺伝子を伝える父猫だったのだ。コウモリと猫のキメラ、「吸血コウモリ猫」などは、存在しなかった。 「だけど、なぜ、博士は、吸血コウモリのこと黙ってたのよ? あの吸血コウモリはいったいなんだったの?」 「そ、それはわしも悪かった。あれはインフルエンザワクチンを開発しようと飼ってたんじゃ。隠そうとしていたのは悪かった。」 「インフルエンザワクチン?」 「ああ、ミニ猫たちのな。ミニ猫が完成してから気付いたんじゃが、ミニ猫特有のインフルエンザが発生してな。人間に染ることはないんじゃが、そんなことを言うとおみゃーたが、世話を断るんじゃないかと、それが心配で…」 「それで、隠してたのね。」 博士は強気の態度から一変して、しょぼんとしてしまった。里仁模君が察して、話題を切り替える。いつもながらソツがない。 「でも、博士が海上保安庁にまで出動の要請してくれて、助けにきてくれたのは、ほんと、良かったです。」 ケータイの留守電に入っていた里仁模君の「助けて」の声で、博士が、海上保安庁に連絡して、助けにきてくれたのだ。 アニキとゴンジは嵐の波の上に、助けを求めている姿をすぐに見つけることが出来た。なんと二人は、吹き飛んだブタ小屋のトタンの屋根が、大きな筏状態になって浮いていたのに掴まり、それに這い上がって、命拾いしたのだった。 つづく いよいよ12月28日が最終回です。ずっと、ご愛読くださった方々、ありがとうございます。最後までご来訪、ご愛読の程よろしくお願いします。
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2005年12月26日
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「犯人に告ぐ」雫井脩介 双葉社 警察を悩ます、姿の見えない連続児童殺人事件の犯人。犯人像すら絞れず、いたずらに時が過ぎる中、犯人逮捕のために、警察はテレビを使って直接犯人に呼びかけるという、さまざまな危険と隣り合わせのギリギリの方法を考え出す。 その主役として、白羽の矢を立てられたのは、過去にマスコミの急先鋒との闘いに敗れた、苦い失態経験を持つ「巻島」特別捜査官。 巻島は、過去との葛藤と怨念を抱えたまま、警察組織と視聴率獲得競争に喘ぐTV局との綱渡りの駆け引きの中で、犯人とコンタクトを取ることで犯人をあぶり出そうと画策する。 獅子身中の裏切り行為に、またもや汚れ役的ジョーカーを引かされるハメになるのかという最終局面で、巻島の目論見は的中し、犯人はついにボロを出す。 けれども、その犯人に手が届く所まで行き着こうとした時、家族までも巻き込む、彼の過去の傷をえぐるような、思わぬ展開に向かいます。 ラストで、今まで決して謝罪の言葉を述べることをしなかった巻島が、「申し訳ありません」のひと言を言うシーンは、まぶたが潤むような感動を呼びます。 事件に絡めた、警察やTV局の組織やその中の力関係の描写も面白いのですが、そこでうごめく人間の心理と、巻島の家族や被害者家族の細かな心情の描き方の中に、雫井の人間に対する深い洞察や愛情が感じられ、そういう所を意識しながら読んでいくと、面白さが倍増するかも知れません。 〈ion〉
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「不思議な磁石」(2) 月島衣音 窓の外の木の陰から一部始終を見ていたのは、金々のロン毛男だった。 ロン毛男は、窓が開いて、アカリちゃんの給食お当番セットが、ボクの磁石にくっついたのを見ていた。 「めずらし〜い! うらやまし〜い! ほし〜い!」 金々のロン毛男は下校時間を狙って、ボクから磁石を奪った。 ボクは、くやしくって泣いたけど、どうしようもない。 その晩、警察も驚かす、奇っ怪な事件がつぎつぎおこった。 パチンコ店の売上げを入れていた手提げ金庫が、お空を飛んでどこかへ消えた。 一等・前後賞が当たって、引き換えまでこっそりタンスに隠していた宝くじ券が、お空を飛んでどこかへ消えた。 町一番の大金持ちの自慢のロールスロイスが、車庫を飛び出し、お空を飛んでどこかへ消えた。 夜中じゅうパトカーのサイレンが鳴り、あっちもこっちも大騒ぎ。 朝になると、ボクの前に、マントのおじさんが現れた。 「磁石を盗まれたね。」 「ウン。ごめんなさい。」 おじさんは、ボクに、マントにしっかり掴まるようにと言ってから、 お空に向かって大きな声で叫んだ。 「磁石よ! わしとケン太をくっつけろ!!」 途端に、おじさんとボクは、お空に舞い上がった。 電線にとまっていたカラスもビックリ。 「びゅーーーーん!」 高いビルも、鉄塔も、公園も、線路もひとっとび。 町はずれの川の土手まで来た時、橋の下に立派なロールスロイスが見えた。 おじさんの磁石も見えた。それを手に持っていたのは金々のロン毛男だった。 「あ〜〜〜〜〜〜〜っ!」「ドスーーーーーーーンッ!」 おじさんとボクは、思いっ切り、ロン毛男にぶつかった。 「いてててて〜〜〜〜っ!」 しりもちついたロン毛男の手の中の、不思議な磁石にくっついて、ボクとおじさんは顔を見合わせた。 「てへへへへっ。」「あははははーっ。」 おじさんが警察に電話して、ロン毛男は捕まった。 おじさんはボクに言った。 「ケン太、キミはもう磁石なしでもやれるね。」 「ウン。」 おじさんは、マントをひるがえし、どこかへ消えて行ってしまった。 ……不思議な磁石もいっしょに。 〈ion〉
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