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五〇、里仁模君のカノジョ〈最終回〉 「わ、わしは、ちょ、ちょっと、コーヒー飲みたくなったから、コ、コーヒー缶、買いにちょっと…。」 博士は立ち上がって、その場を離れて行ってしまった。その博士を振り返ってもう一度、「博士ーっ」と、里仁模君が呼ぶ。 「アンポンタン次第ということで。わしゃ知らん。」 廊下の向こうで博士が手を振って応えた。 「ジュリちゃん」 「里仁模君?」 「ボ、ボクは、えーっと、せ、正式におつき合いを申し込みたい訳で…。」 「え?、でも、里仁模君にはカノジョが…。」 「いないよ。」 「いない?」 「いないよ。いるって言ったのは、博士から、ジュリちゃんにもしものことがあったら絶対、赦さんって。彼女いるってことにしておけって、きつく言われて、それで…」 「なんぁ〜んだ、そうだったの。『禁』って、そのことだったの?」 「そう。」 病院の廊下にはだ〜れもいなくなっていた。里仁模君のわたしの手を握る力が強まる。わたしもこらえていた気持ちがいっぺんに爆発する。 「じゃ、いいのね? 誰に気兼ねなく、里仁模君、好きになっても。」 「誰にも気兼ねなく。ボクも好きにならせてもらいます。」 わたしが肘を引いて里仁模君に「グッ」と顔を寄せると、里仁模君もそう言って、そのわたしの唇に自分の唇を重ねてきた…。 「ちょっと。もしもし、お取込み中悪いんだけどね。」 誰かが肩を叩く。今、邪魔しないで欲しい。 「あんたらにも事情聴取させてもらわなかんのやけど。」 刑事さんかよ。あっち行って。恋愛小説のクライマックスよ! 大事なシーンでなんなの、もう。 「はい。なんなりと。」 やだ〜っ! もう、里仁模君! 世渡り上手もいいけど、熱いわたしの気持ち置いて、刑事さんなんかのお相手、始めちゃって……。 アニキとゴンジは、博士が赦してあげると言ったので、警察の方でも軽い処罰ですんだみたい。 猫島のバイトは、ブタと吸血コウモリは処分してもらって、ミニ猫や、母猫、それに父猫のアビーの世話を、今も続けている。もちろん、大好きな里仁模君と一緒に。 ミニ猫は無事出荷されて、ペット市場で大人気となり、博士はまたまた大もうけで笑いが止まらなくなっている。バイト代は増額してもらいたいけど、まっ、いっか。このバイトで、わたしはいっぱい幸せもらっちゃったんだから……。 了 とうとう今日が最終回になってしまいました。ずっと、ご愛読くださった方々、ありがとうございました。良かったら、ご感想などをお寄せ下さい。
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2005年12月28日
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「不思議キャンディ」 月島衣音 街角で出逢った不思議な占い師から、「あなたに変化をもたらすキャンディ」をもらった。 一週間、毎日一粒づつ舐めれば、きっと、「幸せな変化」をもたらしてくれるって言われたキャンディ。 「幸せな変化」っていうからにはきっと、見違えるような美人に、変えられるのかも知れない。 お目当ては、同期入社のあこがれの彼。美しくなって彼の気持ちを手に入れたい。 一日目、二日目、まだ、何も変化をもたらさない。 給湯室で、キャンディを口に入れ、鏡に向かったけれど、美しくなったようには見えない。 三日目、四日目。洗面所でキャンディを口にした。 もうそろそろ効き目が出てきても良さそうなのに、相変わらず、いつものさえない自分のまま。 五日目、六日目。 休日、鏡を穴のあくほどジックリ見ても、どこと言って取り柄のない自分のまんま。 きっと、最後の七日目でいっぺんに効き目が現れるに違いない。 七日目。 昼休みに、机の上に置いて、「これが最後の一粒」と、にらめっこをしていた時、 「も〜らい!」 背後で声がし、「ヌッ」と、手が伸びた。 わたしの大事な最後の一粒。キャンディを手に取ったのは、あこがれの彼だった。 そのまま、包みをむき、自分の口に「ポイッ」と放り込んでしまった。 「ああ〜〜〜〜〜っ!!」 なんということ。最後の七粒目で、いっぺんに結果が現れると期待してたのに、 その最後の一粒を盗られてしまった。 それも、こともあろうに、お目当てのあこがれの彼に盗られてしまった。 彼が、これ以上カッコよくなったら、ライバルが増えるだけ。 ショックに打ちのめされ、「ガックリ」机にうなだれた時、彼の手がわたしの肩に優しく触れた。 「好きだ…」 振り向くと、うっとり美しいものを見る目でわたしを見つめる彼がいた。 「わたしに変化をもたらすキャンディ」は、男に効く惚れ薬? キャンディは確かにわたしの状況に幸せの変化をもたらしてくれた。 〈ion〉
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