過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2010年01月11日
全1ページ
[1]
|
「スクープ」 月島衣音 スクープを求めて必死になっている同僚の記者がいる。 あまりの成績の悪さに、一度でもスクープをモノにしてみろ、と上司にドヤされ続けているのだ。 その彼から突然、社に連絡が入った。 「早く来てくれ! 今、殺人事件現場に遭遇した!」 オレはカメラマンと現場に急行した。 パトカーすら今来たばかり。 まだどこの新聞社もTV局も来ていない。 だが現場に、電話してきた記者の姿はない。 「犯人は?」 居合わせた刑事に訊くと、すでに逃走したもよう。 「被害者は?」 訊くと、到着したばかりの救急車に載せられたが、すでに絶命の様子という。 あたりを野次馬が取り囲み始めている。 警官が「立入禁止」の黄色いテープを張り始めた。 「すいません! 被害者のプロフィールが分かるものありますか?」 刑事に訊く。 「被害者の所持品がそこに落ちている」 刑事の言葉にアスファルトの上を見ると、チョークで囲った輪の中に、血の付いた免許証がある。 近づいてそれを見ようとした時、オレのケータイが鳴った。 電話をくれた記者からだった。 「おまえ、どこにいるんだ?」 「そんなことより、刑事に教えてやってくれ」 「なにを?」 「野次馬に紛れて犯人がまだ、そこにいる」 オレは振り返って野次馬の群を見た。 そこに、グレイのスーツの裾が血で汚れた男がいる。 受話器から「グレイスーツの男」と声がした。 すぐさま、そこにいた刑事にそれを伝える。 グレイスーツの男が駆け出す。 刑事たちがすぐに後を追った。 「大丈夫! すぐ捕まる」 ケータイに向かって言う。 だがすでに電話は切れていた。 オレは再び、足元に目を落とす。 しゃがんで、チョークの輪の中の殺された被害者の免許証を確認する。 血の付いた免許証の写真は、たった今 話していた電話の記者だった。 免許証に向かって、オレは言ってやる。 「よかったな。 やっとオマエもスクープをモノにできた…」 〈ion〉
|
全1ページ
[1]




