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「おじいちゃんの盆栽」 月島衣音 あたしを可愛がってくれたおじいちゃんが死んだ。 小さな家の庭におじいちゃんが大事にしていた盆栽の棚がある。 朝と夕方、おじいちゃんはその棚に沢山並んでいた鉢植えの盆栽たちにお水をやっていた。 「盆栽の世話をだれがやるの?」 あたしはお父さんに訊いた。 お父さんは答えた。 「もう、ぜんぶ始末するよ…」 あたしは、庭に出て盆栽棚を眺める。 初夏の日射しがまぶしい。 松や楓、他にもいろんな種類の、形のいい盆栽の鉢が並んでいる。 目を細めると、 おじいちゃんがジョウロを持って水をかけている。 一つ一つ丹念に、植木に話しかけながら水をあげている。 「おじいちゃん」 あたしが声をかけると、おじいちゃんが振り向いた。 うれしそうに、でも、なにも言わず、ただ笑っている。 初夏の日射しがまぶしい。 あたしは、盆栽棚を眺めている。 松や楓、いろんな種類の盆栽の鉢が並んでいる。 だれも水をあげない盆栽の土が乾いている。 あたしは、ジョウロに水を汲んで来た。 おじいちゃんがやっていたように、一つ一つ丹念に、盆栽の鉢に話しかけながら水をかけた。 振り向くと、うしろにお父さんが立っていた。 お父さんがつぶやく。 「おじいちゃんの大切な盆栽だ」 ジョウロの水を盆栽の鉢にかけながら、あたしもつぶやいた。 「…盆栽の世話、あたしするから」 〈ion〉
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2010年05月31日
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