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四六、キバを剥く大波 わたしたちは、里仁模君の手にした懐中電灯の明かりを頼りに、船着き場に走った。コウモリ猫たちは嵐の中まで追ってこれない。強烈な雨粒が横から降り掛かってくる。わたしの恐怖も最高潮に達していた。 強く襲いかかる雨と風の向こう、船着き場の方からパニック状態のゴンジと、アニキの争うような声が聞こえる。 足元をすくう泥の流れによろけつつ、坂を下り、船着き場に着くと、顔面にしょっぱい波しぶきが掛かってきた。 里仁模君の懐中電灯を照らす先に、半狂乱になったゴンジをアニキが羽交い締めで押さえている姿が浮かび上がった。二人は激しい横殴りの雨と波しぶきに襲われ、頭も服もグジャグジャ状態になっている。 太い木の杭に繋がれた、わたしたちのボートは波の間で、木の葉のように揺れ、「ギャァー、ギャァー」と軋む音を立てている。 その時、ゴンジは羽交い締めにしていたアニキの手をふりほどき、揺れるボートに飛び乗った。懐中電灯の光の中、黒い悪魔の化身の様なコウモリ猫が、ゴンジの首筋にキバを立て、爪を立てて、取り付いているのが見えた。 「だめよー! こんな嵐の海に出て行ったら死んじゃうよっ!」 わたしは、波の音に消されまいと必死の大声で叫んだ。 だが、コウモリ猫に取り憑かれたままのゴンジは、わたしの声を無視して、揺れるボートからアニキを呼んだ。 「アニキー! こんな島逃げよう! 一緒にー!」 つづく いよいよ、物語も終章を迎えつつあります。予定では12月28日が最終回です。クライマックスシーンをお見逃しなく、最後まで気を抜かずにご来訪の程よろしくお願いします。
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ドキドキ出来事「奇っ怪猫島」
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四五、ゴンジ狂乱! けれども、コウモリ猫たちは、次々に飛来し、床に伏せたわたしたちに波状攻撃を仕掛けてくる。里仁模君の超音波銃も追いつかない。 その時、床に伏せていたゴンジが恐怖の余りか、 「ギャーオーッ!」 と、叫んで立ち上がった。 そのゴンジにコウモリ猫たちが飛びつく。一匹、二匹、三匹、急に立ち上がったゴンジは、コウモリ猫たちの恰好の餌食となった。 「ウギャーーッ!」 と、断末魔のような叫び声を上げて、ゴンジは嵐で狂った屋外へ飛び出して行った。ブタ小屋での恐ろしかった一夜が、ゴンジの脳裏にフラッシュバックして、パニック状態になってしまったのだ。 アニキは、 「クソーッ! あのチクショウども!」 と、怒鳴り、咄嗟に里仁模君が持っていた銃を奪った。そして、そのままゴンジを追って、嵐の中へと飛び出して行った。 「ゴンジー!」 わたしも、里仁模君も、彼らの後を追って、外に飛び出した。 外は、真っ暗闇。雨と嵐は横殴りの最高潮で、目も開けられない。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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四四、コウモリ猫にパンチ! その時、アニキがゴンジのリュックから顔をのぞかせていたミニ猫捕獲用に用意していたタモ網を手に取った。 アニキの目の前で、超音波銃をくらって「ばたばた」もがいている吸血コウモリ猫に、そのタモ網を「バサッ」とかける。 「ピキーッ、ピキー!」「このコウモリ猫!」 叫んで、アニキがコウモリ猫に、素手でパンチを食らわせた。「グジュッ!」といったコウモリ猫は、網の下で激しく痙攣している。だが、ロウソクの明かりに照らされたその顔は、キバは鋭いが猫の顔などしていない。 「変ね。」 けれども、その時「バサバサ!」という不気味な羽音が、いくつも廊下の暗闇の向こうから聞こえてきた。と思った瞬間、何十羽もの「コウモリ猫」が、「ランラン」と光る目で、まっすぐわたしたちに向かって飛んできた。 「里仁模君! 助けて!」「ピシュン! ブィン!」 里仁模君はわたしの前に立ちはだかり、超音波銃でつぎつぎとコウモリ猫たちをなぎ払った。 「ピキーッ!」「ピキキーッ!」 コウモリ猫たちは次々と打ち落とされていく。 コウモリは超音波を発信し、戻ってくる波を聞き分け障害物を探るという。この銃は、そんなコウモリを狂わせ、撃退するのにピッタリなのだ。 もしかすると、博士はもともと、こういうコウモリ脱走に備えて、こんな銃を造ったのかも知れない。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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四三、吸血コウモリ猫襲来 建物の中はすっかり暗くなってしまった。わたしたちのいる、ロビーの高い天井は、心細いロウソクの明かりは届かない。奥の部屋に続く廊下も、漆黒の闇が垂れ込めている。 突然、その廊下の漆黒の向こうで、「バサバサ!」という羽音がした。 「なに?」 わたしの声に、ゴンジが震える声で反応した。 「き、きたよ〜っ」 「来たって?」 「吸血コウモリ猫だぁ!」 叫んで、ゴンジもアニキも両手で頭を覆い、テーブルとソファの間の床に伏せた。 「バサバサバサーッ!」 廊下の向こう、闇の中から、光る二つの目が、すごいスピードでこっちに向かってきた。 「ウギャーッ」 叫んだのは里仁模君だ。吸血コウモリ猫がキバを剥きだし、直撃してきた。思わず頭を下げたわたしたちの間を飛び抜けて、Uターンしてまた戻ってくる。 里仁模君が構えた超音波銃を発射する。直撃を受けた吸血コウモリ猫は、 「ピキーッ!」 といって、わたしの足下に落ちてくる。 「キャッ」と飛び退いたわたしに、里仁模君の声が飛んだ。 「捕まえるんだ!」 「やだっ!こわい!」 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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四二、ブタ小屋崩壊 恐怖感が募り、誰もが、首をすぼめて緊張に震えていた時だった。 「バリバリバリーーンッ!」と、外で、何かが壊れたような大音響がした。 「何? 何の音?」 「ブタ小屋棟の方だ。」 里仁模君が引きつった顔で言った。直後、遠くで「パッシャーーーンッ!!」という音が聞こえた。 「里仁模君、今度は何?」 ロウソクの炎が揺れ、陰影のハッキリしたみんなの顔が怪しく揺らぐ。 「最悪の状況が起こったのかも知れない…。」 浅くソファーに掛け、両膝に頬杖した肘をつき、里仁模君は不気味に揺れる表情の下から恐ろしいことを言った。 「ブタ小屋棟の屋根が剥がされて、飛んで行った。後の音はその屋根が海に落ちた音だ。」 「なにいーーーっ!」「なんだってーっ」「ど、どうなるの?」 みんな身を乗り出してわめいた。納得のいく説明にだれも反論ができない。 「ということはぁ? 吸血コウモリ猫が放たれたということかぁ?」 アニキが大口を開けて里仁模君に迫る。 「………。」 里仁模君は固まったように何も応えない。 「最悪の事態だな…。」 応えない里仁模君に代わってアニキは自分で呟いた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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