ドキドキ出来事奇っ怪猫島(41)★今までのあらすじ
三河湾に浮かぶ「猫島」で、わたしと、里仁模君は、無茶大路博士から任されたミニ猫の世話をして過ごしていた。侵入してきた二人組の男達を捕り押さえ、あわや、バイト代すべて「ボッシュート」というミニ猫大脱走の危機も乗り越えたのだったが、今また、わたしたちは、新たな不安におののいていた。吸血コウモリ猫と、いつ吸血猫に変身するかも知れないミニ猫たち。島を直撃した台風の中、頼みの発電機は荒波に壊され、明かりは途絶え、泥棒男二人を交えたわたしたち四人は、刻一刻と近づく夜の闇の到来に怯えていた。 四一、近づく嵐の夜の闇 「ビュー、ビュー」と絶え間なく、鳴り続ける嵐の音に混じって、時々、「ドドドドウゥーン」という、波の砕ける音が聞こえて来る。こんな八〇〇メートル足らずの小島は、どでかい大波が来たらそれこそ、一遍で建物ごと呑み込まれてしまうに違いない。 「腹へったーっ。」 その時、ゴンジが体をかがめ、情けない声で、「ボソリ」と言った。 そう言えば、この二人は昨夜からなんにも食べていないのだ。今朝も、この昼も、コウモリ猫騒動で、すっかり二人の食事のことを忘れていた。 「お食事にしよっか?」 わたしの言葉に、憔悴しきっていたアニキもゴンジも目を輝かせた。 わたしは、炊飯器の中に残っていたご飯をお皿に盛り、電気が切れて、ぬるくなってしまった冷蔵庫から、昨夜のカレーの残りを出してきて、それを掛け、二人に出してあげた。 ガス台まで使えなくなったように勘違いしていたら、ガスは問題なく使えた。湯を沸かし、紅茶も入れてあげた。 そんなあり合わせの食事を、二人は「おいしい、おいしい」と言って、嬉しそうに食べた。 わたしたちの食べ残したような、ポテトチップも喜んでおいしそうに、取り合って食べた。 わたしと里仁模君は食パンにジャムとバターを塗って、お腹を満たした。嵐の中のひとときの、そんな、何でもないような時間が、ミニ猫を盗みに上陸してきたはずの悪党たちと、ここを守る立場のわたしたちの間を、「グッ」と近付けた。二人はもともと、こんなことを企てさえしなければ、普通に友達になれるような、そんなどこにでもいそうな若者達だったのだ。 けれども、そんな、ひとときのなごやかな時間はすぐに終わりを告げた。騒がしい外の嵐の音はさらに強まり、波状的に雨戸を打つ激しい雨しぶきの怒声に、わたしたちはすっかり口数が減っていた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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ドキドキ出来事「奇っ怪猫島」
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四〇、流されたボート 「なあ、こんな島、逃げ出そうぜ。一緒に、島捨てて逃げよう? 今ならまだ、間に合うかも知れん。」 アニキが里仁模君のシャツの裾を引っ張りながら言った。 「何を言ってるんだ。外はもうすごい嵐だぞ! 波も発電機の主軸ボッキリ折るぐらいの、すごい大波が押し寄せてるんだ。そんな中、ちっさなボートで、どうやって漕ぎ出すって言うんだよ。それに、言っとくけど、キミたちの乗ってきたボートは、とっくにどっかへ流されて行っちまって、どこにもなかったよ。」 「何だってーっ! てめえ、ゴンジ! あれほど、『しっかり綱、結んどけ』って言ったろうがーっ!!」 アニキは顔色を変え、ゴンジに振り返って怒鳴った。 「すいませんーっ。アニキ。」 この期に及んでも、兄貴風を吹かせて怒鳴るアニキに、ゴンジは首を縮こませて謝っている。 「流されて行っちまったものは、いまさらどうしようもないよ。それより、今の内に懐中電灯や、ロウソクを用意して置かなきゃな。」 わたしたちの腰掛ける応接セットの真ん中に、ガラス板のテーブル上のロウソクの灯がともった。ロウソクの明かりは、高い天井の薄暗いロビーを、余計に陰湿な雰囲気にした。 里仁模君はひっきりなしにケータイで博士に連絡を取っている。その都度、留守電に今の状況を伝えて、残しているようだけれども、一向に博士がでる気配はない。 嵐はさらに激しくなり、「ゴゥワーーッ!」という恐ろしい風の音で、建物全体を包み込んだ。恐怖心が高まってくる。長椅子のソファーに、里仁模君と二人並んで掛けていたわたしは、思わず里仁模君の胸にすがった。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」 里仁模君は子供をあやすように、優しくわたしの頭を撫でてくれる。こんな時、余分な泥棒男二人が、向かい側の席にいるのが恨めしい。 「アニキ、オレもカノジョ欲しいです。」 「泣くな、ゴンジ。ここ、無事に抜け出せたら、オレが世話してやっからよぉ。」 向かい側の席で、そんなことを言いながら、男二人も撫で合っていた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三九、壊れた発電機 「停電だ!」 里仁模君が叫んだ。まだ、日中なのに、台風の黒雲に覆われて、外は暗くなっている。明かりが消えると、建物の中は急に怪しく陰ってしまった。 「こんな時に、停電かよ!」 「発電機が台風の波でやられちゃったのかも知れない。」 「どうするの?」 「これから、夜になったら、真っ暗で何にも見えなくなっちまう。そうなる前に直せるもんなら直したいな。ちょっと、行って調べてくるよ。」 里仁模君は、わたしに超音波銃も預け、物置から工具を取り出し、カッパを着て外に出て行ってしまった。 わたしは右手に超音波銃、左手にボウガンを持って構え、二人の泥棒を牽制した。けれども、二人ともすでに抵抗する気力は失っているらしく、薄暗いロビーのソファーに沈み込んだまま、宙を見ておとなしくしている。 ほどなくして、里仁模君が戻ってきた。わたしたちは期待の目を彼に向けた。けれども、里仁模君はその明かな絶望の顔をみんなに向けて言った。 「ダメだぁーっ! 発電機の主軸が波でボッキリ折られてる。直らんっ!!」 「うわーっ」「うっへーっ」 わたしたちの少なからぬ期待は、「ボッキリ」と言った里仁模君の言葉に「ボッキリ」折れた。 「どうすんだよーっ!」 「このまんま、夜になったら、真っ暗ってことですか?」 「テレビのニュースも見れないの?」 里仁模君は、「ビタビタ」と滴の垂れるカッパを脱ぎ、わたしから超音波銃を受け取ってから、 「そういうことです。」 と、みんなを見回して言った。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三八、逃げる場所がない 「いかん。ボクらは、吸血猫と言えども、この島を守る義務がある。」 「そうよ。それに、今までずっと、なんともなかったんだし。エサさえちゃんとやれば、わたしたちの血を吸うことなんてないわよ。あの子達。」 そう言いながら、わたしはめちゃめちゃ不安のどん底にいた。今までは何も知らなかったから、「かわいい」なんて言って一緒にいられたけど、真実を知ってしまったら、もう一緒にはいられない。 「でもさ、吸血コウモリ猫や、あの吸血猫たちが、何かの拍子に一斉に襲ってきたら、オレ達、逃げる場所ないんと違う? その時になってボートで逃げても、ヤツら翼持ってるんだぜ。」 アニキが不安げな表情をすると、ゴンジも里仁模君に聞いた。 「身を守るモノ、あるんですか?」 里仁模君は、さっきからずーっと手放さずにいた「超音波銃」を二人の前に突き出した。 「この『超音波銃』がある。」 「これかよーっ…」 それで痛い目に遭わされたアニキが顔をしかめながら、銃に手を伸ばした。 「だめ! あんたたちには持たせられない!」 「まだ、お前ら信用した訳じゃないからな。」 共同戦線を張ったと言っても、こいつらに銃を渡すわけにはいかない。取り上げたボウガンもわたしの手にある。 「オレ達は丸腰ってことかよ。」 アニキが心細げにそう言った時だった。 「ブィンッ」 と、どこかで音がした。その途端、ロビーの真ん中に下がっていたシャンデリアも、向こうの廊下の蛍光灯の明かりも、全部、瞬時に消えてしまった。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三七、島を捨てて逃げる? 「ちょっと凶暴…?」 わたしの膝の上には、食事の時間を過ぎておなかを空かせたミニ猫たちが、「ミャー、ミャー」と鳴きながら、すり寄って乗ってきている。そのミニ猫の頭を撫でながら、わたしは呟いた。 「それに、おかしいと思うのは、このミニ猫たちって、妙に噛み付きたがりじゃない?」 「そ、そうだ! オレも思いっきり噛み付かれた。」 アニキが叫ぶようにして言った。里仁模君も続けた。 「吸血コウモリの血を引いてるってことか!」 「そうよ! わたしが噛み付かれた時の博士の反応もおかしかったもの。やっぱり、隠そうとしてたのよ。間違いない!」 「血ィ吸いたがってるってことかよ! こいつらみんな!」 ゴンジの声がうわずった。その途端、みんな、「ギャー!」と叫び、膝の猫を振り払って、思わず立ち上がった。 「ウギャーッ!」 ほとんど同時に、今度は、そのミニ猫の部屋から、争って一斉に飛び出した。里仁模君が、追いかけて来るミニ猫を足で突き戻し、大あわてでドアを閉めた。 全員、玄関ロビーのソファーに体をうずめ、「フゥーッ」と息をついた時、アニキが言った。 「なあ、もう、オレらミニ猫なんていらねえから、こんな島、オレら逃がしてくれん?」 「だめよ! あんたたち、泥棒には違いないんだから、警察に突き出してやる。それに、あんたたち逃がしたら、第二、第三のミニ猫泥棒がやってくることになる。」 「聞きたいんだが、お前ら、どうやって、この島のこと知ったんだ? ミニ猫のこととか。」 里仁模君がアニキに聞いた。 「どうやってって、たまたま飲み屋で、おっさんが酔っぱらってしゃべってるの小耳に挟んじゃったんだ。新種のミニ猫がいるって。そんで、ミニ猫同士じゃ子が生まれねえ仕組みになってるって。」 「前にここにいた夫婦者ってヤツだな。それで、漏れちゃってるのか。」 「オレらは、ゼッタイ、しゃべんねえから。それに夕べ、あんだけ恐ろしい目に遭って、オレらはもう、十分罪は償ってると思うけど。」 「ねぇ、お二人も、もう、こんな島、逃げ出しません? 一緒に、島、捨てて逃げましょ?」 ゴンジも情けない声で言う。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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