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三六、禁断の遺伝子操作? 「り、里仁模君、も、もしかして、あの時博士が、ミニ猫同士掛け合わせても子孫が出来ないって言った時、何だった?、何とかって言葉、言ってたじゃない?」 「『不稔性』っての?」 「そう! それよ! 『不稔性』。あのミニ猫たちは種を越えて掛け合わされてできた子供って言ってたでしょ。」 「そうだったけど、それが?」 「も、もしかして、あのミニ猫のお父さんって、あの『吸血コウモリ』なんと違う?」 「ええーっ!」「なにぃーっ!」 里仁模君も、泥棒の二人も同時に声を上げた。泥棒二人組も、ミニ猫の「タネ猫」を求めてこの島に来たくらいで、ミニ猫の父親猫は最大の関心事なのだ。あの『吸血コウモリ』が、ミニ猫の父親役かも知れないと言うわたしの言葉に、二人とも目をまん丸く見開いた。 「博士は、『吸血コウモリ』に『ミニ遺伝子』を見つけたのよ。それできっと、あのマッドサエンティストの博士のことだから、禁断の遺伝子操作かなんか駆使して…、吸血コウモリに猫の遺伝子を組み込んで『吸血コウモリ猫』をこさえたのよ。」 「あいつらは『吸血コウモリ猫』ってこと? あいつらを母猫に掛け合わせて、ミニ猫を生ませる…と、そういうこと?」 里仁模君の問いに、わたしは黙ってうなずいた。みんな「コウモリ」の体に「猫」の頭を載せた「異様な異生物」を想像し、「ブルッ」と体を震わせた。 「でも、それだと、あのケージの中にいた猫は?」 アニキが聞いてきた。 「アビーも、実は他のミニ猫と一緒。『吸血コウモリ猫』の子よ。ちょっと短毛で、他の子よりきれいな猫だったから分けといただけじゃないの? きっと。それにアビー、ちょっと凶暴だし…」 「確かに、あの時の父親猫の説明の時、博士って、妙にあたふたして、怪しげだったな。」 里仁模君も顎に指を当てて、眉間にシワを寄せて言う。わたしはわたしで、自分で言った最後のフレーズに胸が騒いでいた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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ドキドキ出来事「奇っ怪猫島」
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三五、吸血コウモリ 「見た?! 見ただろ? あ、あいつらだよ! あいつらに思いっきり血ィ吸われたんだ! 夜中じゅう血ィ吸いまくられたんだ!」 ブタ小屋棟を出て、男達は、後ろ手に縛られたままの体を小刻みに「ブルブル」震わせながら、わたしたちに訴えた。 外は、すでに台風による強い風が吹き始めていた。大きな雨粒も落ちてきている。 「か、可愛そうだったね。」 「『可愛そう』じゃねぇよ、全く!」 「どうしよう? このままじゃ、オレ達みんな、吸血コウモリの餌食だぜ。」 「だ、だいじょうぶだよ。ドアは閉めて来たもの。あそこからは出てきやしないよ…。」 里仁模君の言い方はずいぶん自信なさげだ。 「あんたたち。いいわね! ここは、吸血コウモリに共同戦線張るため、ロープをほどいてあげるけど、絶対、もう悪さしないって約束するのよ。」 「約束します。」「約束するよ。オレだって吸血コウモリ、怖ぇもん。」 本館に戻り、二度と悪さしないと男達に約束させてから、ロープをほどいてやり、雨で濡れた体を拭いてあげた。けれども、超音波銃や、ボウガンは手放せない。全面的にこいつらを信用する訳にはいかない。 そのあと、ミニ猫の部屋で、わたしたちは四人車座になって話し合った。 「どうもおかしいと思ってたけど、あのブタたちは、あの『吸血コウモリ』のエサとして飼われていたのね。」 「そういうことだな。だけど、博士は、なんであんなもの飼ってるんだろう? 『吸血コウモリ』飼って何しようとしてたんだろう? ボクらに隠してまで…」 「何って…、分からないわよ。でも、研究用にしても、隠そうとするなんて、やっぱ、怪しいわね…。ってことは…。」 その時、わたしの頭に、一瞬、稲光の様に、空恐ろしい想像が閃いた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三四、恐怖の正体? 「知らなかったのよ。ここにそんなモノがいるなんて。」 「と、とにかく、早くこっから出してくれ!」 「何でも、あなた達の言うことは聞きますから、お願いします! 出して! 助けてください!」 ゴンジは、昨日とは言葉付きまですっかり変わってしまっている。よほど、ここから早く出たいのだ。 「血を吸う生き物って? なんだろね? 里仁模君。」 「空中を飛んで、血を吸う生き物って言ったら、『吸血コウモリ』ぐらいしか考えられない…。」 里仁模君がそう言った途端、 「それだよ、それ、『吸血コウモリ』だよ、きっと! 『吸血』の『コウモリ』に違ぇねえ!」 と、アニキの方が目を剥き出して言った。 「キ、キ、キ、キッ!」 と、その時、コンクリートの壁側、天井近くに空いた切れ込みの穴の向こうで、不気味な鳴き声がした。 四人同時に、その暗い、不気味に空いた一五センチ位の幅の長い切れ込みの「換気口」を見上げた。 穴の暗い影が「バサバサ」という音と共に動き、なにやら、二〇センチ位の翼を広げた黒い生き物が、穴の向こう側に止まったのが見えた。そして、そいつが、頭を下にして、翼をすぼめてぶら下がった時、なんと、逆さの顔の上についた真っ赤な口を開き、「キラーン☆」と怪しく光る二つの目でこっちを見た。 「ウギャーーッ!」 途端に、わたしも、男三人も、ひきがえるの潰された様な悲鳴を上げ、一斉にブタ小屋を飛び出した。 里仁模君は、こんな時でも職務に忠実なのかと思ったが、さすがの彼も、鍵もかけずに、真っ先にブタ小屋棟を飛び出した。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三三、恐怖のブタ小屋 翌朝は、朝から、不穏な風が吹く、嫌な予感のする日だった。予報では、台風はこの辺りを直撃すると言っている。博士のケータイは相変わらず繋がらない。 博士の言いつけ通り七時になってからブタ小屋棟に行ってみると、ブタ小屋から「ヒー、ヒー」と男達の泣き声が聞こえて来る。わたしたちが来たのを知ってか「助けてー!!」と叫ぶ声までする。大の大人の男が、本気で泣き叫んでいるようだ。 わたしも里仁模君も、それぞれ護身用に持ってきた、ボウガンと、超音波銃をしっかり握りしめ、ブタ小屋の部屋に走った。 鍵を開け、中に入ると、男達は後ろ手に縛られたままの格好で、わたしたちにすがりついてきた。驚いて、見ると、後ろ手に縛られた男達の首にくっきりと、いくつもの赤い刺されたような歯形が残っている。 「な、何があったの?」 「何がって、オレ達だって分からんですよ!」 ゴンジが涙声で訴えた。それを引き継ぐように、青くなった唇を「ブルブル」震わせて、アニキが言った。 「お前らが電気消して行っちゃったあと、真っ暗な中、「バサバサ」って、空恐ろしい羽音がして、何匹も、小さな獣みたいのが飛びかかって来たんだ。首とか背中に飛びついてきて、そう思ったら、そいつらが首に噛み付いて、「チューチュー」って血を吸いやがるんだ!」 アニキはそう言って「ブルッ」と、体をよじった。恐怖で引きつったままの顔は、目の下も鬱血で真っ黒になっている。 「血を吸いやがるって? どういうこと?」 思わず聞き返したわたしに、アニキが縛られた体で掴みかかった。 「お前ら、知ってて、ここに入れたんだろぉ! 人でなし! それが一晩中だぞ、一晩中! 悪魔! 鬼!」 「恐ろしくって、気が狂いそうだったですよ! いくらオレ達が悪いことしたって言っても、ここまでやったら『人権蹂躙』ですよ!」 大の大人が、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、代わる代わる訴える。本気で相当の恐怖を味わったと見える。二人の顔は血の気が失せて、完全に真っ青だった。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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三二、嵐の前兆 わたしたちは、アニキからボウガンを取り上げ、二人をロープでギリギリ巻きに縛り上げた。ゴンジが背にしていたリュックも取り上げた。中にはロープの他、タモ網や、ノコギリ、トンカチ、それに今、おびき寄せに使っていた煮干しの袋まで、周到に用意したらしい道具類が詰まっていた。 「さあ、こいつらをどうしよう。」 「警察に突き出しましょ。」 「その前に、どうしたらいいか博士に聞こう。」 里仁模君の言う通り、ことは企業秘密が絡んでいるのだ。博士の判断に任せた方がいい。けれども、この日は運悪く、里仁模君がケータイに何度電話しても、博士は出なかった。 「もう、暗くなり始めたから、どこか、鍵の掛かる部屋に放り込んでおいて、明日になったらじっくり考えましょ。」 ただ、予報では台風が近づいているらしい。明日になったら、よけい動けなくなる恐れがある。 「仕方ない、留守電に入れといて、明日になって博士と連絡取れたら、指示を仰いでそっから動こう。ただ、それまで、こいつらどこに入れとくかだ。」 「あのブタ小屋がいいんじゃない? ブタと一緒に放り込んでおきましょ。」 この時、わたしたちは、「ブタ小屋棟には夕方五時以降は入ってはならない」という博士の「禁」を破ってしまった。二人をブタ小屋に連れて行き、嫌がる二人をロープで縛ったまま、ブタと一緒の部屋に放り込み、それから鍵を掛けて、本館に戻った。 ミニ猫の部屋に戻ってみると、逃げ出していたミニ猫たちも、父猫のアビーも、みんな、おなかが空いたらしく、おとなしく、部屋に帰ってきていた。 噛み付かれないように注意しながら、アビーをケージに戻し、やっと一息ついた頃には、外はすっかり暗くなっていた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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