ドキドキ出来事奇っ怪猫島(21)★今までのあらすじ
超天才科学者と、地元の人々から称される無茶大路博士。その博士から、わたし「ジュリ」は、「夏休み期間中のボロい儲け」というバイトを頼まれた。まさしく、わたしのタイプ、イケメン里仁模君と、三河湾内に浮かぶ猫島に住み込み、猫たちの世話をすることになったのだが…、 な、な、なんと、そのネコは、博士の開発した新種ネコ・手乗りサイズのミニ猫!! けれども、ペットプームの火に油を注ぐような、そのビックリミニ猫に、博士の怪しげな策謀が見え隠れする!!?? 二一、ビックリすることばかり 「それから、水はこの溝に自動的に流れてくるから、このタンクの水を時々見て、切らさないようしてくれればええ。」 博士がそう言いながら、タンクの上の蛇口をひねると、水が、タンクから、ブタたちのいる脇の溝に流れてきた。 ブタたちは「びちゃびちゃ」言わせながら、おいしそうに水を飲んだ。 「そんな所じゃ。何か質問はあるか?」 「ブタの糞とかの始末は?」 「糞や屎尿は、あの隅っこの枠の中に集めておいて貰えばええ。上にある装置が完全に分解してくれる。」 「それで、ブタ小屋臭くないのね…。」 「これも、まんだ、研究中やが、その内に大々的に売り出したるつもりや。」 「何から何まですごいんですね。ビックリすることばかりです。」 里仁模君もわたしも、心底から感心して驚いていた。 「ま、他に、何か問題でも起こった時は、わしのケータイに電話くれ。」 博士は胸ポケットから名刺大の紙を取り出し、そこにサラサラと自分の携帯番号を書いた。 そのあと、わたしたちはブタ小屋棟を出て、元の本館に戻り、自分たちの食事を作る炊事場や、洗面・風呂場に、くつろげるリビングルームとそれぞれの寝室を案内して貰った。 今まで夫婦者が管理していたということで、わたしたちが、夏休みの間、住むのに申し分ない、冷暖房も、炊事・洗濯等も、テレビの娯楽や、日常必要なモノはすべて完璧に揃っている建物だった。 電気は海中に設置した「潮力発電機」が全自動で働いていて、供給しているのだという。さすが博士は「蒲郡の発明王」だけある。博士の発明品並べれば、この島だけで「万博」が開けそうだ。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←こちらのサイトから、月島衣音の他の小説もお読み頂けます。
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ドキドキ出来事「奇っ怪猫島」
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二〇、怪しい換気口 ブタ小屋の向こう側は屋外に面していて、今はブラインドが下がっているが、採光用のガラス窓になっている。換気のファンもあり、温度調節も自動で行われている、かなり快適な「ブタ小屋」のようだ。 側面はコンクリートの壁で、片方の壁は天井に近い部分に、高さ一五センチくらいの長い切り込みがある。切り込みの穴は隣の部屋に続いているようだが、穴の向こうは真っ暗で何も見えない。 「博士、あの長い切れ込みの穴は何です?」 わたしが聞くと、 「あ、あれは、その、か、換気口だ。」 と、博士は、またまた、ごまかすような口調で答えた。 「換気ならあそこにおっきな換気扇がついてるじゃない。」 「あ、あれは排気用で…。」 また、口ごもって、曖昧な言い方をする。 「向こうの部屋には何があるんですか?」 里仁模君も不審に思ったらしく、そう尋ねた。 「あっちは、まあ、倉庫みたいなもんじゃ。おみゃぁさんたらは、あっちのことまで気にせんでもええ。」 どうも、博士は都合の悪いことをみんなごまかそうとしている。話をはぐらかすように話題を切り替えた。 「ブタのエサやりは、必ず、朝明るくなってからやること。七時以降。ブタどもが腹をへらすからあんまり遅くなってはいかんが、七時前はいかん。晩も五時前までに済ますこと。明るいうちにやって、暗くならんうちに戸締まりし、こっちの建物には夜は一歩も近づいちゃならん。」 「ええ〜っ、なんで?」 「なんでもじゃ。そういう規則じゃ。」 「変な規則。ま、朝、遅くてもいいんなら、その方が有り難いけど…。」 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←この小説はこちらのサイトでも公開しています。
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一九、猫島のブタたち 中に入った途端、今度は「ブヒー、ブヒー」と鳴くブタの声が聞こえてきた。けれども、ここはブタ小屋独特の臭さがない。 「ブタたちも腹を空かしておるわい。」 と言いながら、博士は通路の脇のスチールの棚に積まれた大きな紙袋を指して言った。 「ブタたちのエサはこれじゃ。」 ブタ小屋の前には口の開いたエサ袋が載った一輪車があった。袋の中にステンレス製の小ぶりのスコップみたいなものが入っている。 「そんなにようけ飼っとるわけじゃにゃぁから、これでエサ箱に『ガバーッ」と、放り込んでくれればええだけじゃ。」 博士は、そのスコップみたいなものを指して言った。 このブタ小屋は、どうやら、空調設備もしっかり整っているらしい、博士の言う「ブタ小屋」というイメージからはほど遠い、ガラス戸で囲われたバイテクの研究室みたいな、ブタが住むにしてはかなり立派な部屋だった。その部屋のドアにも頑丈そうな鍵がついている。 「ここの鍵はこれや。この鍵束はおみゃぁさんに預けておく、ゼッタイ盗まれたり、失えたりせんように。えっか?」 「はい。」 博士はガチャガチャ言わせてブタ小屋の鍵を開けてから、鍵束を里仁模君に渡した。 そこには五頭くらいの小ぶりのブタがいた。丸々と太っていてつぶらな瞳はなかなかかわいい。 けれども、見ると、どのブタも首筋のあたりに無数の刺されたような異様な傷がある。里仁模君もそれに気付いたようで、 「どのブタも肩のあたりにみんな傷があるようですけど…。」 と、博士に質問した。 「こ、これは、みんな、研究用だから、いろいろ、注射とか…。あるんじゃ。血液採取とか…。」 あせったような言い方で、博士はそれに答えた。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←この小説はこちらのサイトでも公開しています。
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一八、猫の秘密は企業秘密 「冗談は置いといて、そのお父さん役の『特殊な猫』ってのも、ここにいるの?」 「それがさっきのケージ入りのアビーだがや。一匹しかおらん大事な猫やから、しっかり守ってもらわんと。でも、ま、おみゃぁさんたらは、そんな企業秘密の中のことまでは心配せんでもええ。ただ…。」 「ただ?」 「父猫は、ま、つまり、病気の心配せなかんから、おみゃぁさんたらは、そのインフルエンザ防ぐ、エサどもの世話してもらやぁええ。」 「え? エサどもの世話? エサそのものを世話するの? どういう意味?」 「ま、ええ。企業秘密、企業秘密。そんじゃ、そう言うことで、ここは、このキャットフードと水を適当にやってくれりゃええから、次へ行こみゃぁ。」 なにか、博士の言い方には引っかかるものがある。どうも博士は、さっきから何かを隠そうとしているように感じられる。 「次は、ブタ小屋へ行く。おみゃぁたらにはブタの世話もしてもらう。」 「ブタ〜ッ? 唐突に何ですか? 猫島にブタだなんて。ブタも飼ってるんですか?」 「ちょっとな。ま、研究用っちゅうことで何頭か…。いや、ま、次はミニブタも造っちゃおうかなぁなんて…。あははははぁ。」 わたしたちが、博士に続いて、本館の裏口を出ると、草むらの空き地で隔てられた向こうに、もう一棟の平屋の建物があった。 その入り口のドアにはさっきの本館よりももっとしっかりした鍵が付いていた。博士がその鍵を開け、中に入り、続いてわたしたちが入った時、里仁模君が言った。 「えらい、こちらの方が厳重な感じですね…。こっちの棟にも重要な『企業秘密』があるってことですか?」 「いや、なに、そ、そう言えばそう言うことになるかも知れんがな…。ま、ちょっとしたブタの研究だ。」 どうも、博士の言葉は歯切れが悪い。 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←この小説はこちらのサイトでも公開しています。
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一七、普通の猫たち 博士が次の間のドアを開ける前から、扉の向こうで「ニャーニャー」と鳴きながら猫たちが扉を引っ掻いているのが分かる。 ドアを開けると、その部屋にいた十匹くらいの猫たちも、博士を見上げて取り巻き、エサをねだってまとわりついてきた。こっちの猫は小ぶりだが、どうやら普通サイズの猫のようだ。 「よーし、よし、ええ子や。腹減ったやろ。」 博士は手にしていたキャットフードの袋の口を開け、床に直にそれをばらまいた。猫たちはそれに飛びつき「ガリガリ」言わせて食べ始めた。猫皿はちゃんとあるのに、さっきの猫たちに比べると明らかに扱いが「ぞんざい」だ。 「この猫達は? 普通の猫みたいですね。」 里仁模君が聞いた。 「ああ、こいつらは第一世代の猫だ。ちょっと他の猫より小ぶりの個体を選りすぐって集めた、言わば、さっきのミニ猫たちのお母さんや。」 「お母さん?」 「そうや。ここから先は企業秘密じゃで、アンポンタンたらには、詳しくは教えれぇせんのやが、ミニ猫は、父親役の特殊な猫と、この母猫たちを掛け合わせることでしか生まれてこんのじゃ。」 「それは、もしかして、父親猫と、この母親猫たちは『種』が違うってことじゃないんですか? あのミニ猫たちは種を越えて掛け合わされてできた子供ってことと違います?」 「さすが里仁模じゃのぉ。よう知っとるがや。あのミニ猫たちは『不稔性』、つまり、ミニ猫同士掛け合わせても子孫をでかすことが出来んちゅうこっちゃ。」 「でも、それはビジネスとしては非常に有利な条件ってことですよね。」 「その通り! つまり、ミニ猫はここでしか、生産できにゃあってことや。ブリーダーが勝手にミニ猫を繁殖させて売るなんてことができんてことじゃ。」 「なるほど。ついては、ジュリさんはともかく、ボクまで『アンポンタン』で括るの、撤回してもらえます?」 「そやな。里仁模はアンポンタンっつったら可哀想や。」 「『そやな』じゃないでしょ! わたしだってアンポンタンは可哀想でしょ!」 つづく ドキドキ出来事ミラクルワールド ←この小説はこちらのサイトでも公開しています。
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