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面白かった小説…勝手書評

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ionが読んで良かったと思う作品を勝手に書評♪
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「幻夜」 東野圭吾  集英社文庫

 「幻夜」は、「白夜行」の続編みたいな作品だと知って「白夜行」を読んだと、「 白夜行書評」の時に書いた。

 両編を貫いているのは「謎」。美少女「雪穂」と、暗い目の少年「亮司」を包む、迷宮入り事件の「謎」の糸が、ほぐれかかって、だが、「亮司」の死で、真の「謎」へと沈み込んで行った。その「謎」の糸が、「幻夜」では、もっと大きな「謎」となって、様々に絡んで、主人公「雅也」と読む者を包み込む。

 「幻夜」の「新海美冬」は「雪穂」か この連作を読んだ人だれもが突き付けられる問いだ。「白夜行」の刑事「笹垣」が、少女「雪穂」に最初に合った時、彼女が読んでいた本が、この問いの答えを暗示している。

 だが、「幻夜」では、さらに新たな疑問に、我々は苛まれることになる。「新海美冬」はいったい何者なのか この女を突き動かすものはいったい何なのか

 主人公「雅也」の犯した罪は、大きな「謎」を産む「胎」となってしまったのか どさくさにまぎれて犯してしまったこととは言え、「殺人」の咎は重い。秘密を共有してくれる人が目の前に現れたら、誰でも「共に生きていこう」と思うに違いない。だが、「雅也」が守ろうとした秘密を共有する連帯の赤い糸は、「幻の夜」の産物に過ぎなかったのか

 「人が生きる意味」とは何なのだろう 人の「欲望」には限りがないという。早々に「欲望」を打ち止めにしてしまったionには計り知れないものがあるが、一旦、欲を叶えたいという、その渦に巻き込まれ始めたら、欲求の奈落は無限の口をさらに開くものなのだろうか 女性の美しさへの欲求もまた、美しさが至高であれば、あるほど、それを保ち、また更に磨き輝かせたいと思うものなのだろうか 美しくありたいという欲求は、止めどもなく膨らみ、拡大して行くものなのだろうか

 「幻夜」のテーマは暗い。 人が他人を犠牲にしてでも、欲望を満たそうとし始める時、人はその欲望自体に突き動かされ、その欲望が産む深い渕に、はからずも人は呑み込まれて行く。
 東野は、一人の若者の人生を支配し、青春も幸福も奪って、ついに命さえ奪い取る怖ろしい「女」を描こうとしているのか それとも、女をそこへ追いやった悲しすぎる「業」なるものを描こうとしているのか
 そこまで考えながら読み進むうち、「これはミステリーじゃない、背筋も凍るヒストリーが描かれているんだ」と、東野の「幻惑」の罠に、すっかりはまり切っている自分に気付く。 だから、だから、「新海美冬」のヒストリーは、きっと、これで「終わり」ではない… 

 超おすすめです 面白いです。でも、これ読んだら、もう「東野ワールド」から抜けられなくなる ♪

    〈ion〉

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「天使の耳」 東野圭吾  講談社文庫

 「交通もの」ばかり集めた短編集だが、小品ながら、「カァーッ!」と、唸ってしまう作品ばかり。
 自分も年中ハンドル握っている身で、描かれた状況は、違法駐車やポイ捨てなど、日常、いつも遭遇することなので非常に良く分かる。でも、そこから、こんなにもたくさんのミステリアスなストーリーを産み出す東野の才能には、ただ、ただ、驚くばかり。

 違法駐車はいけないと分かっていても、ポイ捨てをやるのはいけないと分かっていても、ついやってしまう交通マナー違反。人がやっているのを見て、腹が立つマナー違反。運転する者、誰もが交通モラルの欠如を感じていても、そんな場面、場面に、そこから先に繋がって行く最悪の事態にまで思いをいたす人はまずないだろう。
 ここに出てくるどのお話も、そんな、ハンドルを握っていれば、自分にもいつでも起こりうる違反や事故の顛末も、された側、被害者の側に、視点を置き換えてみると、「アッ」と驚くお話に変わってしまうんだ、という物語だ。

 「天使の耳」は、運転手が死んでしまった軽自動車側が本当にだったのか? 信号無視が引き起こす悲劇と、目の見えない聡明な少女による、事故当時の信号を証明するいきさつは。スゴイけど…結末はドキッ?!
 「分離帯」は、永年無事故無違反だったトラック運転手の、夫を失った妻の事故原因究明の執念と、ラスト驚くべき復讐劇に、ビ、ビックリ!
 「危険な若葉」は、一人の若者が、若葉マークの車に対して行った「煽り」が、とんでもない悲惨な代償を払うことになろうとは。これまたなんとも、やられた方にとっては痛快なお話。タイトルの「若葉」は当然、初心者マークの意味だが、「危険な」の意味が…?! あははははーっ! 笑っていられない!
 「通りゃんせ」は、違法駐車が引き起こす悲喜劇を描くが、ラストは血の気が引く。もう決して違法駐車はすまいと決意!
 「捨てないで」は、空き缶のポイ捨てが描かれるが、殺人事件の証拠品が、なんと 事件の起こる前から存在し、それが犯人の命取りになるという、登場人物の誰にも分からないいきさつが、読者だけは分かっているという、構成がユニーク!
 「鏡の中で」は、日本と海外では、人と車の通行が違う。そしてハンドルの位置が違う。そこからこんな事故が。…だけど、世の中には最後まで隠し通した方が良いってことも

 「車は走る凶器」なんてよく言われるが、自分を含め、日常そのことをどれだけ認識しているかは問題だ。
 サア! 暴走運転、煽りを繰り返す若者どもよ 違法駐車、ポイ捨て、信号無視を繰り返す中年どもよ どれも、これからは、死ぬ覚悟、投獄覚悟、死刑覚悟で、、、、やるならやってちょ〜〜〜〜〜っっっっ!!!!

    〈ion〉

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「嘘をもうひとつだけ」 東野圭吾  講談社文庫

 加賀刑事の活躍が描かれる短編集。
 東野作品のあちこちに顔を出すこの加賀刑事、いったいどんな刑事なのか? この短編集で、この男の容貌や性格を少し理解することができる。
 年齢は三十過ぎ、長身で肩幅が広く、だが顔は痩せて頬が尖っている。鋭い目つき、聡明で深い洞察力。
 友人思いで、義理堅い。たぶん、東野の理想像なんだと思う。刑事としてはかなり好意的に描かれている。
 刑事なんて、だけど、どんなに好意的に描いたところで、憎らしいだけの存在なんだ。物語が優れて、面白ければなおさら、登場人物に感情移入してしまって、その登場人物が犯人であれば余計、刑事なんてヤツは憎く、ウザく思えるだけ。たぶん、東野は分かっていてなお、それを際立たせようとしているんだ。言葉で表現されなくても、悲しい刑事の宿命として、加賀刑事をことさらに(紳士的で、聡明であればなおさら)憎まれ役に徹する配役を演じさせているのだ。

 表題と同じ「嘘をもうひとつだけ」は、現役を退いたバレリーナ「寺西美千代」の殺人を描く。寺西美千代と加賀刑事がひとつづつついた嘘、それが見もの。
 「冷たい灼熱」は、矛盾した言葉のタイトルが示すとおり、炎天下で起こった、冷えた心が起こした悲しい事件の謎に加賀が迫る。
 「第二の希望」は、「楠木真智子」の「夢」を描く。ダンサーになるのが夢だったという彼女が、しかし、第一の志望は他にあった。その第一志望を娘が叶えてくれようとしている。殺人事件はそんな中で起こった。
 「狂った計算」は、「坂上奈央子」とその恋人が企てた殺人計画を描く。計画には誤算がつきものなのだ。
 「友の助言」に出てくる「友人」は、加賀刑事に他ならない。高速道路の入口付近で居眠り事故を起こした「萩原保」は、友人である加賀の助言を得ようとしていた。だが、今、加賀の言うことは、自分に都合が悪すぎる。認めたくない。この作品で、加賀刑事の人となりが、描かれている。

 どれも短いが、人間の心の機微や葛藤みたいなものが描かれて面白い。時間つぶしのつもりで買ったのに、面白くって一気に読み終わってしまい、結局その日の大半、何もすることがなくって、ネットサーフィンに時間を潰してしまった。

    〈ion〉

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「白夜行」 東野圭吾  集英社文庫

 実は「幻夜」を読んだ方が先だった。「幻夜」は、だけど、「白夜行」の連作で、続編みたいな作品だと知って、「白夜行」、読まないわけにいかなくなった。

 、オイルショックの直前頃。時代は昭和何年とハッキリ書かれていない。大阪の下町で殺人事件が起きた。完全な密室ではないが、子供が秘密基地にするような、建設途中で捨てられたビル工事現場。捜査を担当したのが笹垣刑事だった。挙げられた容疑者はみな不審な死に方をして、捜査は行き詰まる。だが、笹垣の意識に深く印象が刻まれたのは、被害者「桐原」の息子「亮司」と、「桐原」が妙な形で関わっていた「西本文代」の娘「雪穂」の二人。
 殺人事件は迷宮入りするが、ストーリーはそのまま、「亮司」と「雪穂」の周辺に沿って進んでいく。中学、高校時代、そして、いつか二人は社会人になっている。「雪穂」は、母の不審死のあと、茶道家の伯母に引き取られ、美容室・ブティックをいくつも経営する女起業家となり、「亮司」は、いくつもの顔を持つ闇に生きる男となる。

 二十年も経ち、笹垣は定年で引退していたが、昔のあの事件が胸のしこりとなって離れない。「雪穂」の過去の調査を依頼されていた探偵「今枝」が失踪し、今になって、過去のあの事件の謎だった部分がほぐれてくる。
 とっくに時効になってしまったあの事件の真犯人はいったい誰だったのか?! 「亮司」と「雪穂」を結ぶは、やはり、あの事件から始まっていたのか?!
 作者は、いっさい二人に直接語らせることはしない。美少女から知性と美貌を兼ね備えた完璧な美女となった「雪穂」は、けれども、ストーリーの進展する中で、怖ろしくも、冷酷な悪魔的とも思える内面を持った女として描かれる。それは、読む者に「憎しみ」すら感じさせるもの。だが、ラスト、過去のあの事件の謎が解明されるに従って、それは、深い深い悲しみを湛えた「同情」へと変わっていく。
 「亮司」と「雪穂」の二人は、深く、暗く、切なく、いたたまれない程に悲しい、幼い少年少女心の深層つながっていた

 分厚い。「幻夜」も長編だが、「白夜行」もさらに長編だ。なのに、緊張感を保ったまま、一度も飽きさせることなく、「アッ」と言わせる最終章まで、ぐいぐい引っ張る東野の筆力の凄さに、感動させられる。

 「幻夜」の「新海美冬」は「雪穂」なのか この連作を読んだ人だれもが突き付けられる問いだ。この問いの答えは、、、あ、これは次回、「幻夜」の勝手書評までのお楽しみってことで、それまでとっておこうっと(ionなりの勝手な回答ですけど…)♪

 おすすめです 面白いです。でも、これ読んだら、もう一冊分厚い「幻夜」も読まなきゃいけなくなるのを覚悟でね ♪

    〈ion〉

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「ゲームの名は誘拐」 東野圭吾  光文社文庫

 「おれ」佐久間は得意先の日星自動車のキャンペーンの仕事を委ねられていた。だが、突然、その仕事から降ろされた。指示したのは日星自動車副社長の葛城勝俊。納得できないおれは、葛城勝俊に挑んだ。これはゲームだ!
 ゲームは思わぬ形で「プレイ」が掛かる。なんと葛城勝俊の樹理」から狂言誘拐を持ちかけられた。

 ゲームの勝利は、徹底した読みと、緻密な計画、そしてなによりも「勝ちへのこだわり」が必要。樹理の協力で、まんまと身代金三億を手に入れ、おれは葛城勝俊に勝った。だが、思いもよらないどんでん返しがある。

 「勝ちへのこだわり」と書いたが「おれ」にとっての「勝ちへのこだわり」は何だろう それは、完璧と信じた企画を、副社長の肩書きで潰した男への「リベンジ」に他ならない。けれど、「勝った」と思った相手に、実は…。
 だが、相互の周到な読みに裏打ちされたゲームの真のウィナーは、最後の最後にならないと分からない。「最後の切り札」を出したのは、さあ! どっちだ!!

 どんでん返しは、なんとなく予測できる。狂言誘拐にせよ、すんなり身代金獲得の流れを描いて終わらせて、それで良い訳がない。「どんでん返し」がなくてはつまらない。ゲームの相手の葛城勝俊なる人物がただ者でないことは明白。表立って対決する場面はなくても、裏では熾烈な頭脳戦が繰り広げられていたのだ。
 と、まあ、憎いまでに巧みなプロット。随所にさりげなく置かれた伏線。最後に「なるほど!」とうならせる切り札のアイテム。どれもいかにも東野作品らしい光る切り口

 いや〜っ! 久しぶりにサイエンティスト東野の真の姿を見た気がして、読後、なかなか清々しかったです。お奨めです

    〈ion〉

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