オランダ坂から

はかなさは花月の門につるしたる金燈籠の灯より来るらし 勇

旅行

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雲仙 旅亭 半水慮

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 静寂というのは、無音のことではない。

光射す木々の陰翳、庭の流水の音、色とりどりの葉の揺らぎ、半水慮の畳敷きの

縁側に寝そべりがら庭を眺めている。ここには、静寂がある。

 この旅館に泊まるためだけに雲仙に出かけた。

6千坪の敷地に14邸があり、直接、自分の部屋に通されるので外の浴場を利用しない

限り他人と会わない。一切の人工音から遮断される。本格的数奇屋造りの建物は26年の

年月が流れたが一分の狂いもない。庭も一から造作したものだが自然そのもの様に映

る一流の庭師がこの歳月を計算して造庭している。私は、築庭風、石庭風は余り

好まないがこの庭は自然、周囲の林の延長としか思へない。建築の専門書にも掲載

される理由がある。ある高名な建築学者は「どの角度からも庭が見えるこの建築は

プロから見ても大変なものです」と地元の方に説明している。

 旅は、芭蕉のような長い行程もあるが距離を指すのではない。

精神の高揚あるいは沈静が起こる非日常の世界があればそれが旅なのだ。

国道から入り緑に囲まれた茅葺門は車が近づくと自動で開く。半水慮の旅の世界は

ここから始まる。

 作家・辻井喬は、実業家としての顔・堤清二としてあの「ホテル西洋銀座」をオー

プンさせている。アメリカ型ホテルにはない真の品質を求めた結果だろう。その彼が

開業間もない半水慮を訪れてこの旅館には「贅沢というより品格といった方が適切」と

書いている。ホテル西洋銀座の洋と半水慮の和とは彼の想像力の中で一致をみたのだっ

た。

 今度行くとしたら秋、邸内の木々が紅葉に変る時、ワーズワースの詩集でも

忍ばせていきたいものだ。


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