オランダ坂から

はかなさは花月の門につるしたる金燈籠の灯より来るらし 勇

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さよならだけが人生だ

 この言葉は、太宰治が最後の作品「グッド バイ」で引用しているので知られる

こととなった。

 自殺未遂を2度やり雨のふりしきる玉川上水で自死した太宰らしいと本人の言葉と

誤解している人もいる。本当は、太宰が師事した井伏鱒二が「中島健蔵に」と題した

小文の中にある。この文は、漢詩7編を井伏流に翻訳している内の1編、「干武陵の

歓酒」という詩である。

         歓 君 金 屈 巵 (コノサカヅキヲ受ケテクレ)

         満 酌 不 須 辞 (ドウゾナミナミツガシテオクレ)

         花 発 多 風 雨 (ハナニアラシノタトヘモアルゾ)

         人 生 足 別 離 (「サヨナラ」ダケガ人生ダ)

 井伏がこれを発表したのは、「作品」という雑誌に昭和10年3月であったが

執筆は1月2日にしている。井伏が38歳でこの軽妙洒脱な翻訳をし、井伏の家に

押しかけてきて散々迷惑をかけた太宰は40歳でこの言葉を引用した作品を残して

自死した。青森のあの重い暗い雪を知っている僕にはどうしても太宰文学の「不健康

」さには太宰の育った風土がのしかかる。


   参考文献 「文士の風貌」井伏鱒二著 1991年福武書店刊

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