|
パイプオルガンの音色というものは、無論演奏者の技量にもよるが気品のある荘厳
な音の中に唯一「希望」という音を出せる楽器ではないだろうか。
活水学院は、オランダ坂が入り口である。この近辺ほど旅人を魅了する場所はな
い。石畳、石垣の上を蔦がからみあっている。この九州を代表する名門女子大学は、
明治12年の創立である。日本でも屈指の古さである。キャンパスは場所柄、決して広
くはないがいかにも大学キャンパスの上質な雰囲気を持っている。大きな楠が校内に
あり幾たびか映画のロケで使用されている。
この学院の大チャペルの中で掲題の催しがあり、バロック音楽好きの家人は、
「あなたは、心が汚れている。これを機会に心を綺麗にしなさい」というご命令が下
り、同行することになった。私は、丁度バッハが仕えた教会の下僕と同じであるから
命令を拒否することはできない。
演奏者は、椎名雄一郎氏、東京芸大大学院を卒後ウイーン国立大学を満場一致の首
席で卒業し各国のコンクールで入賞している日本の第1人者といえる方でありここで準
教授を務めながら各地で演奏会を開催している。
梅雨が明けた長崎は、夏の青い空と暑さが戻ってきた。チャペルの中に荘厳な音色
が響く。窓の外は楠の濃い緑と青い空。休憩時間に平戸からバスで3時間かけてこられ
た80歳近い品のある女性と知り合った。チャペルが3階にありカバンを持ち杖を使っ
ての階段の登りに家人がみかねてカバンを持ってあげたことからこの方が椎名準教授
にオルガンを習っていることその度に平戸から3時間かけて通っているとの由。失礼な
がらご高齢の身でこの好学心には若輩者は圧倒されるだけで言葉もない。
平戸に誘いのお話しを頂いた。平戸は、未訪の地である。
この学院の女子学生は、来訪者に気楽に挨拶をする。家人の言うように心が綺麗に
なった1日であった
。
|