オランダ坂から

はかなさは花月の門につるしたる金燈籠の灯より来るらし 勇

杉浦明平記念文学館

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 出版業というのは、僕は「一代限り産業」「創業者産業」だと思っている。

創業者は、こういう本を世に出したいと志を持って創業をするが中々継続的に世に

支持されるまでに時間と金がいる。そうそう売れる本は造れるものではない。

本は、いい本だからといって2冊3冊買おうという性格な物ではない。読者は、無料で

図書館でも読める。あるいは、他人から借りる。古書市場から買えば出版社に金は

落ちない。掲題の河出書房は2回実質破綻している。中央公論社も人手に渡っている。

筑摩もたしか1度実質破綻している。企業規模が大きくなればなるほど創業の理念から

離れ異分野にでも進出しないかぎり企業の存立も揺らいでくる。

 そこで、強みを発揮するのがシリーズ物の確立・定着である。

岩波の文庫・新書、早川書房のHPB、平凡社の東洋文庫などが代表ですが

出版社の特性と顔と云うべきシリーズ物が確立できれば固定客も付き経営に安定性が

生まれるがこれも容易いことではない。河出は、文芸に特色がある。文学

全集も過去いい本を出してきた。ここから育った作家も多いがそれでは「河出の顔」

というべきシリーズ物があるかと言えば思い当たらない。掲題の「文芸読本」シリー

ズはたしか以前には雑誌「文芸」の特別号で出していたような気がする。それを

昭和50年に独立、シリーズ化している。作家の代表作品、評、年譜が解り中身のある

出版だと思うが経営の貢献度は判別し難い。後に新装版を出しているので一定

部数は出ているのだろう。

 本題の杉浦明平の作品がこの「文芸読本」に掲載されているのは以下の通りです。


   1・「太宰治」昭和50年10月刊に「太宰治への公開状」が収録。

   2・「ドストエーフスキイ」昭和51年1月20日刊に「罪と罰」の約本ーが収録。

   3・「折口信夫」昭和51年2月5日刊に「折口信夫ー釈迢空」が収録。

   4・「石川啄木」昭和51年4月9日刊に「啄木のエゴイズム」収録。

   5・「萩原朔太郎」昭和51年6月30日刊に「萩原朔太郎」が収録。

   6・「堀辰雄」昭和52年6月20日刊に「堀辰雄」が収録。

   7・「川端康成」昭和52年8月11日刊に「川端康成」が収録。

   8・「坂口安吾」昭和53年6月26日刊に「坂口安吾」が収録。

   9・「正岡子規」昭和57年3月25日刊に「薄っぺらな城壁」をめぐってーが収録

 以上の9タイトルになります。叉、同社には「人生読本」という同型のシリーズ

物がある。杉浦明平の収録本を捕捉しておきたい。

   1・「読書術」昭和54年8月10日刊に「一月・一万ページ」が収録。

   2・「学校」昭和55年4月10日刊に「学校の騒音公害」が収録。

   3・「本」昭和55年10月15日刊に「古本屋彷徨」が収録。

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 杉浦の作品で「文庫本」に収録されている本をまとめてみよう。

他者の書いた本の「解説」とかは除外してる。

 1・「白黒年代記」昭和23年7月1日発行、世界古典文庫32、日本評論社刊。
    コムパーニュの訳書、332頁、70円

 2・「フィレンツエの人々・上」昭和24年2月1日、世界古典文庫59、日本評論社刊
    フランコ・サケッテイの訳書、330頁、100円

 3・「フィレンツエの人々・中」昭和24年10月1日発行、世界古典文庫60、日本評論
    社刊、317頁、130円。※ 下巻は刊行されていない。

 4・「婦人問題講和」昭和29年11月30日発行、国民文庫412、株)国民文庫社刊
    トリアッテイの訳書、119頁、50円

 5・「レオナルド・ダ・ヴインチの手記・上」昭和29年12月5日発行、岩波文庫刊
    293頁、

 6・「古典を読もう」昭和30年3月1日、岩波文庫の非買品、94頁。
    60頁に「戦争と文庫」が収録されている。

 7・「チボリーノの冒険」昭和31年12月10日発行 岩波少年文庫 岩波書店刊

 8・「黒い手と金の心」昭和32年12月10日、岩波少年文庫153、岩波書店刊
    ファッビーニの訳書、278頁、190円


 9・「レオナルド・ダ・ヴインチの手記・下」昭和33年6月25日、岩波文庫刊
    362頁。

 10・「ピノッキオの冒険」昭和33年11月10日発行、岩波少年文庫、岩波書店刊
    コッローデイーの訳書、306頁、230円

 11・「杉浦明平著作選(上)」昭和53年3月15日発行、講談社文庫刊
    「ノリソダ騒動記・町会議員一年生」が収録、346頁、380円。

 12・「杉浦明平著作選(下)」昭和53年4月15日発行、講談社文庫刊
    「田園組曲・椿園記・妖怪譚」が収録、340頁、380円。

 13・「ルネッサンス巷談集」昭和56年12月16日発行、岩波文庫刊、
    サケッテイの訳書、407頁、500円

 14・「小説 渡辺崋山(一)失意」昭和57年2月20日発行、朝日新聞社刊
    312頁、460円

 15・「同 (二)再起」昭和57年3月20日発行、308頁、460円

 16・「同 (三)多忙」昭和57年4月20日発行、308頁、460円

 17・「同 (四)飢饉」昭和57年5月20日発行、302頁、460円

 18・「同 (五)焦燥」昭和57年6月20日発行、259頁、420円

 19・「同 (六)挑戦」昭和57年7月20日発行、258頁、420円

 20・「同 (七)捕縛」昭和57年8月20日発行、267頁、420円

 21・「同 (八)自尽」昭和57年9月20日発行、284頁、440円

 22・「日本史探訪17・歌舞伎のヒーローたち」昭和60年3月25日発行、角川文庫
    「大久保彦左衛門」が収録、384頁。

 23・「わが家の夕めし」昭和61年6月20日発行、アサヒグラフ編、朝日文庫
    「雑炊入り水炊き」小文と家族食事風景の写真。214頁、580円。

 24・「泥芝居」昭和61年9月16日発行、福武文庫、福武書店刊、262頁、550円

 25・「カワハギの肝」昭和61年10月20日発行、光文社文庫刊、231頁、380円

 26・「温泉百話ー西の旅」種村季弘・池内紀編集、昭和63年2月23日発行
    ちくま文庫、筑摩書房刊、「観光旅行の季節ー片山津ー」が収録、
    446頁、630円。

 27・「立原道造詩集」杉浦明平編集・解説、昭和63年3月16日発行、岩波文庫刊
    453頁、500円。

 28・「早雲と道三」−戦国覇者の戦略1−昭和63年4月1日発行、小学館刊
    「応仁の乱」収録、286頁、600円。

 29・「アンチグルメ読本」大河内昭爾選 日本ペンクラブ編 昭和64年1月19日発行
    福武文庫刊、298頁、550円「土屋文明先生の弟子」が収録

 30・「私の家庭菜園歳時記」昭和64年2月20日発行、朝日文庫、朝日新聞社刊
    271頁、460円

31・「日本名城紀行2・南関東・東海」5月20日発行、小学館

 32・「織田信長」平成3年11月25日発行、河出文庫、河出書房新社刊
    「聖地での大虐殺ー叡山焼き討ち」収録、272頁、580円

 33・「養蜂記」平成7年4月18日発行、中公文庫、中央公論社刊、279頁、640円

 34・「今昔物語」平成7年6月8日 岩波少年文庫 岩波書店刊 257頁、650円

 35・「ノリソダ騒動記」平成10年11月10日発行、講談社学芸文庫、講談社刊
    225頁、1100円

 36・「歴史小説の世紀 地の巻」平成12年9月1日発行 新潮文庫 新潮社刊
    「秘事法門」が収録、806頁 933円

 37・「古典を読む 歎異抄」平成15年9月17日発行 岩波現代文庫 岩波書店刊
    238頁 900円

 38・「江戸・東京を造った人々2」平成15年8月6日発行 ちくま学芸文庫 
    筑摩書房刊 「寺門静軒と江戸繁盛記」が収録 478頁 1400円

 39・「短編小説再発見15 笑いの源泉」平成15年10月10日発行 講談社文芸文庫
    講談社刊「海中の忘れもの」が収録 238頁950円

 40・「夜逃げ町長」平成23年2月10日発行、講談社文芸文庫 講談社刊
    301頁、1500円。

 41・「中国書人伝」平成27年7月25日発行、中公文庫 中央公論社刊
    「祝允明 文徴明 董基昌」が収録 365頁 1200円


   ※ 再刊本 新装本は除いた。

 

 

 土屋文明は、杉浦を訪ねて伊良湖に4度来訪している。

最初の訪問は、昭和7年8月14日杉浦19歳の時であった。杉浦が文明と同郷の旧制一高

の同窓生芥川に連れられてアララギ発行所で面会を果たしたのは前年の2月15日であ

る。この8月の伊良湖行きには、吉田正俊、柴生田稔も同行している。

 この頃より、杉浦は「一高校友会雑誌」「アララギ」誌上で盛んに作歌を始めて

いる。次の歌は、土屋文明が「伊良湖岬」と題してこの来遊時歌ったものです。


      友ありて遠きなぎさを伊勢の国の見ゆる岬にめぐり来にけり

      若き友は水瓜を二つ持ちてゆく上衣をぬぎて吾はつかれぬ

      しほ気だつ荒磯の上に眼鏡はづして天てらす日はさわやかなり

      伊良湖のありその山に飛ぶ鳶のおりてゆきたり松山の中に

      眞なごより白き貝殻を拾いけりしばらくにして手にあまるまで

      石の上にすてし食物に寄りて来る生物は思ひかけぬ所より

      しただみをはさみて食う蟹見ればたはむるるが如くむさぼる

      高波は沖さへしろき灘といへど神島をみれば心やすらむ


 杉浦の友人であり同じアララギ土屋門下で近所に住んでいた八木喜平は、

昭和49年、土屋文明の来遊を喜び、懐かしむ次の歌を詠んでいる。


      土屋先生とひとつ鶏鍋をつつきしもああもう遠いむかしとなりぬ

      明平さんの家に先生居たまひし五日間吾は通ひつづけき



     ○ 参考文献「改版 放水路」土屋文明著 昭和24年7月白玉書房刊
           「八木喜平歌集」八木喜平著 杉浦明平編 昭和56年6月刊
                               私家版

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「人間の自由と誇りと」ー学生とヒューマニズムー

学生新書1

理論社(千代田区神田神保町2-4番地)

発行 1950年12月15日

著者代表 高島 善哉(他14名)

サイズ 18.5×13.5 262頁、180円。

杉浦は、この本の中で「イタリア・ルネサンスのひとびと」と題し、ブルネルレスキ・

ビイルラーニ・ダンテ・ジオット・ベトラルカ・ポツカチオ・ダバドバア・ブラツチオーリ・

ブアルラ・アルベデイ・ダビインチ・サボオナーラ・カツポーニ・マキアベルリ

・フエルルツチオ・ミケランジェロ・プルーノ を紹介している。

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     平凡社「世界大百科事典 第19巻」

     1988年4月28日発行

     項目「デカメロン」を107ページに執筆している。

 百科事典は、昭和40年代大手各社こぞって発刊した。その中で平凡社は、「百科事典

の平凡社」と言われるくらいこの「世大」は他社の追随をゆるさない。今ではこの手の

一般百科を出しているのは平凡社だけではないか?。百科とピアノは私の世代だと

ある種あこがれの品目であったがこの2つとも凋落が激しい。場所を取る。重い。

今では古本屋も引き取らない。私は、この1年間で近くのゴミ捨て場に全巻捨てられて

あったのを2回見ている。平凡社版ではないが胸中は複雑である。教養志向の衰退、

PCで簡便な知識は吸収できるというのが背景にある。ブリタニカはとっくに紙版の

百科の販売を中止している。映像を挿入しての百科となるとPCが俄然便利なのは

解るが百科事典は金があれば出来るのではない。出版の総力が問われる事業といって

いい。これだけ売れなくなると平凡社の世界大百科事典もいつまで刊行されるか

解らない状態であろう。私としてはこの発刊システムは国の文化事業として税金を

投入してもいいくらいに思っているがいかがなものであろう。


 捕捉・第17巻に「ダンテ」は河島英昭」が執筆しているが杉浦の説も紹介
    している。


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