オランダ坂から

はかなさは花月の門につるしたる金燈籠の灯より来るらし 勇

杉浦明平記念文学館

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 2重箱入りの豪華写真集である。

毎日新聞社が昭和52年の5月に刊行している。縦37センチ・横26,5センチもある。発売時定価2万円。

東海4県の四季を春・夏・秋・冬と題して各県の自然を撮っている。写真家も土門拳等当代1流の

メンバーが名を連ねている。

 巻頭に「序詩 ふるさと」を伊豆出身の井上靖が寄せている。奥付けに著者として山本健吉・河野

南畦・杉浦明平・早船ちよ・伊藤桂一・荒正人・菊池貞夫が名を連ねている。杉浦は、解説の中で

「尾張・三河の自然と人生」と題して寄稿している。文をよむと「徳川になって3百諸侯の本貫の

60%は尾張・三河の出で旗本八万旗の半分、1人前以上の才能はことごとく流出、後に残ったものは

禄なものはいないが・・・・・加藤唐九郎だけは別格、ピカソに匹敵する」と書き、「昔からの白砂青松

は大企業の工場の進出で消えた。大企業と自然は共存できるのだろうか」と結んでいる。

 唐九郎氏は、年齢は10以上も杉浦より上であるが杉浦は親しく交友を結んでいる。酒席で唐九郎

氏より仕入れた「猥談」を家に帰り出入りの若者に話して聞かせるのを楽しみにしていた節がある。

酒が入れば饒舌な杉浦もさすがに唐九郎氏の前では豊富な体験と饒舌の前に聞き役に回ることが

多かったようだ。

注・「尾張・三河の自然と人生」は、杉浦の著書「老いの一徹、草むしり」1984年PHP研究所
     刊に収録されている。

 

 

 この本は、朝日新聞社刊で昭和62年8月に朝日新聞社文芸部編集で出版されて

いる。283頁、1300円です。

 初出は、昭和61年4月から62年4月までに54名の方が朝日新聞に発表したものである。

その中で、杉浦明平は「紅楼夢」について寄稿している。時代が暗くなっていく

昭和15年に岩波文庫から第1巻が発行されて「国内の思想風紀の取り締まりで呼吸の

つまりそうなわたしたちの前に何と甘美な別世界がくりひろげられたことだろう」

と書いている。文化大革命で他の傑作が全て否定されたのにこの作品が残ったのは

毛沢東の愛読書であったとも書いている。

 杉浦にとってこの「紅楼夢」は、よほど強い印象をもった本である。昭和15年6月

3日の帝国大学新聞に「紅楼夢について」を発表し、彼の第1作品集といわれる

昭和25年の自費出版本「暗い夜の記念に」にも収録している。

 

 「思い出の本」昭和59年10月、(株)出版ニュース社刊、273頁、定価1,800円。

この本は、出版ニュース社の旬間書評雑誌「出版ニュース」に昭和44年1月から同46年12月まで

91人が「私の思い出の著書」と題して執筆したものを刊行したものです。

 杉浦明平は、「レオナルド・ダ・ヴインチの手記」と題して寄稿している。

同本は、岩波文庫で上巻が1954年12月、下巻が1958年6月に刊行されている。版を重ね今でも多く

の方に愛読されている。ダ・ヴインチ、ルネッサンス研究の必須の文献となっている。

杉浦は、この本が翻訳から出版まで18年の経緯を説明し、岩波に原稿を渡して5年の事情を

書いている。青年期の暗い時代に志したルネッサンス研究の成果である同本には杉浦の発刊まで

の執念が感じられる。尚、杉浦の同文は出版ニュース昭和44年2月上旬号が初出である。

 「時間の香り」1997年9月八坂書房刊、高砂香料工業(株)広報室編。

265頁、1600円。

この本は、いい香りがする。さすがに香料専門会社が創った本である。

同社の広報誌「高砂香料時報」に各界の士が「匂い」に関係するエッセイを発表し、それを

本にしたものである。杉浦明平は、「食べもののにおい」と題して寄稿している。他執筆者は、

阿川弘之、荻昌弘、豊田譲、斉藤茂太、江藤淳、加藤武、辻井喬など50名が書いている。

帯文は「匂いに纏わる50の記憶」と書いている。なるほど「匂い」の中に執筆者の人柄と

人生の断面が浮かび上がる。いい本である。

 因みに付着している匂いは「薔薇」である。中扉に薔薇の香りをしみこませた紙が添付されて

いる。

 「日本の酒」昭和51年1月朝日新聞社刊

大部な本である。30cm×21,5cm、292頁、カラー写真多、定価4500円。

これは、朝日新聞社の日本の酒調査書ともいうべき本である。全国の醸造元の銘柄の写

真、説明、酒造りの歴史、酒にまつわるエッセイが「美酒礼賛」「ふるさとの酒」「日本

の地酒地図」「焼酎」「現代と日本酒」の中に収められている。杉浦明平は、「中部・北

陸の酒 三河の酒」を書いている。

 杉浦明平は、「カワハギの肝」という名エッセイを書いているために知らない人はよほ

どの「食通」だと思いがちであるがみてくれの京料理を嫌い、全国の有名品の到来物で食

のエッセイを書く吉田健一を揶揄している。彼の食のエッセイにどこそこの店の料理がう

まいというのはない。店名が登場するのは、新宿の「三平」「あずま」名古屋の「大甚」

などがある。三平は、昭和30年代に人の待ち合わせに便利である日、安部公房が隅で原稿

を書いていたと書いている。この店

は今は綺麗なレストラン風になっているが昔からの大衆食堂であり、あずまは、たしか岩波の塙作

楽に最初につれられた店で2度ほど場所を変わっているが最初の店は狭く、5人も入れば満員で

奥の席の人が立つときには全員がたたねばでられないような店だったらしい。小便は、外の電柱

にやった。無論、昭和20年代の話ですがここも今は小奇麗な店になったが作家、歴史家、編集者

が多くあつまる店であり、杉浦も上京の時にここにいけば旧知の人と会え楽しい酒が飲めた。

名古屋大甚も菊正の樽酒と安い伊勢湾の魚介が小皿に乗ったつまみを勝ってにケースから取り出し

て飲める場所で有名な店である。この本のエッセイに「大阪丸冶の菊正の樽酒」「新宿ぎゅうやの

剣菱の樽酒」がうまかったと書いている。杉浦の生活は夜型である。お元気な頃は朝3時半頃

寝る前に台所におりて冷酒を1合か2合飲んで寝るのを習慣としていた。この文もいかにも

杉浦らしい「安くてうまい酒」として「秋田の新正の2級酒」「木曾福島の七笑の2級酒」を

あげている。杉浦にとってのうまい酒は、これらの安い辛口の酒と旧知の友人との語らいが

なによりのつまみとなったことはまちがいない。新正、七笑とも私は飲んだことはないが覚えて

いて機会があれば購入してみることにしよう。


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