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「ピッピ、小さな僕の妹」 イラスト&短編小説/入野うさぎ
僕は、発明工作が趣味な中学2年生の理系男子。
僕には年の離れた妹がいる。
4才で幼稚園の年中組さん。〝ピッピ”というニックネームで呼んでいる。
何故かって妹が自分で決めたのさ。
ピッピは暇があるとお絵描きしているよ。
まだ、幼いので絵画と言うよりは設計図のよう。
たくさんの童話や絵本に影響されて、自分の創った物語の妖精の名前らしい。
名前:ピッピ
身長:98cmの女子
特長:帽子にアンテナが付いていてテレパシーや最新情報がキャッチできる。
:左右柄違いのシマシマの靴下を履いている。
:背中に羽根が付いていて空を飛ぶことができる。
:靴のカカトを鳴らすと異空間に飛ぶことができる。
これがピッピの設計図の説明文はいつもキャラクターデザイン付きさ。
自分でも妖精になりたくて今日は衣装を揃えているよ。
母さんの留守中に洗濯物から靴下を拝借。
シマシマのハイソックスは大人用でロングサイズ。
柄合わせも結構難しいようだ。
「お兄ちゃん。どう?」
「そうだね。段々似てきたね。僕がアンテナ帽子と羽根を創ってあげるよ。」
電池やモーターを使ってハタハタと動く羽根と七色に光るアンテナを作って,
ブーツに毛糸のボンボン付けて、アレンジできました。
魔法の杖は棒に星を付けたらいい感じになりました。
「私はピッピ!自由に空を飛べるわ!
ピピルプ!ピピルプ!メタモルフォーゼ ピッピ!」得意げに呪文を唱えているけど
僕に言わせれば、知っている単語を並べているだけで、ちょっと、違うなって思うこともあるけど、何となくイメージにハマっているので感心しているよ。
それにしても、よく動く。
さっきまでクルクル回っていたと思ったら今度はジャンプ!
自分では遠くまで飛んだつもりらしい。
面白くって見ていたら、急に動かなくなったから、驚いて近寄ってみたら、
グーグー眠っていたよ。僕は心臓が止まるかと思ったよ。
ピッピは本当にお騒がせな妹さ。
ふとんを掛けて添い寝をしたら、寝言を言い始めた。
「私は妖精!靴のかかとを鳴らして不思議の国へ行くわ!」
ムニュムニュ…。
「不思議の国ってどんな国?」
面白がって聞いてみたよ。
「こどもだけの国でお菓子の家があって、そこへ行くとお菓子が食べ放題なの」
ムニュムニュ…。
「どんなお菓子?」
「ビスケットにチョコレート、オレンジジュースに、ココアにラムネ・・・」
ムニュムニュ…。
「食べたら何処へ行くの?」
「お菓子の家の金庫に宝の地図があるの、
その地図と方位磁針を持って宝探しの探検に行くの!」ムニュムニュ…。
「へぇ、凄いね。何が見つかるだろう?」
「ダイヤモンドにルビィや真珠、金貨に札束の山…し・あ・わ・せ…」
ムニュムニュ…。
女の子はやっぱり生まれた時から金銀財宝が好きだね、きっと。
ガチャ!ドアが開いた。「ただいま!」母さんが帰って来た。
ムクッと起き上がってピッピが母さんのそばに駆け寄った。
「お帰りなさい!お帰りなさい!お土産はある?」
「今日は仕事だからお土産はないけど、何か好きなものを作ってあげましょうか?」
「は〜い。オムレツを注文します。
玉子は半熟でデミグラスソースをたっぷりかけてね。」
「かしこまりました。今日は何をしていたの?」
「妖精ピッピのなって、宝探し探検に行っていたの。」
「今日も衣装は念入りね。それでお母さんの靴下を履いているのね。」
「へへ…ちょっと借りて変身しました。」
「それで、ピッピは宝が見つかったらどうするの?」母が聞いた。
…僕もそう思う。宝の持ち腐れって言葉もあるしね。
「ピッピは、発明博士のスポンサーになって、あっと、驚く発明をして世界中が喜び騒ぐのだ!」
「まぁ、大きな夢ね。発明博士ってどんな博士?」
「お兄ちゃんみたいな博士!私に羽根やアンテナを作ってくれるの!」
「まぁ、二人とも頼もしいわね。」
・・・。
僕は知らん顔してもジンと心に染み込んだよ。
ありがとうピッピ!
僕はそんな偉い人物になれないけど少しは目指してみようかな。
来年は受験でこれでも結構プレッシャーを感じているよ。
母は中学の理科教師で、父は元劇団員で今は小さな脚本家。僕は母似で妹は父に似ている。
発明博士なんて褒めてもらったのは小学生の低学年以来だよ。
でも、それはかなり嬉しかったよ。ピッピを見ているとそんな楽しい時を思い出す。
僕は君が生まれた日の時を凄く覚えている。
女の子が欲しかった母が高齢出産に臨んだ。
そして、文芸好きの父親に似た女の子が文化の日に生まれた。
ひとりっ子の僕が兄になった。
まるで本当の妖精のこどもが生まれ落ちたみたいに家族は喜んだ。
僕は君を抱きしめたよ。
柔らかく温かいホッペはピンク色だったね。
〝はじめまして、僕がお兄ちゃんです。どうぞ宜しく。″と、
生まれたての小指に、指切りをした。
かわいいピッピ!僕の大切な妹。
「ピッピ、小さな僕の妹」Fin
※この物語はフィクションです。
20年ほど前に考えたキャラクターをアレンジして物語を付けてみました。
※イラスト・文章と共に、著作権は入野うさぎにあり無断使用・複写・乱用は法律で禁じられています。
※ポエム季刊雑誌Seasons-plus-2012 春号参加作品
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Seasonsイラスト&小説
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小説『魔女とエレベーター』イラスト・文/ 入野うさぎ
「レイラ」は魔法使いの11歳の女の子。
口うるさい家庭教師から逃げ出して人間界に魔法のホウキに乗って家出しました。
たどり着いた場所は大都会。たくさんの高層ビルが建ち並びます。
「ふー!魔法のホウキで無事着陸!夜は暗いけど、今夜は月が明るくて良かったわ。」
黒いマントと三角帽子、ちょっと、時代錯誤みたい。
24時間営業のコンビニエンスストアの明るい電灯に誘われるように入って、
ファッション雑誌を手にとって、コーディネイトを考えたものの結構難しい。
「困ったわね、そうだ!猫になろう!魔女といったら黒猫よね。」
魔法の杖をくるりと振って黒猫に大変身!
ガラスに映った自分を見て満足気のレイラ。
「それにしてもこれがファッションビルと言うものなのね。ファッション雑誌によるとエレベーターで最上階に上ってエスカレーターか階段で降りていくとイメージが良くわかるらしいわ。」
と、言っても、猫がエレベーターに乗るのは背が低くてボタンが押せないからかなり難しい。
そこへひと組のカップルがやってきて、ちょうどレストランへ行く様子だった。
足元にそっと忍び込んでみた。
上手く乗り込んだ魔女猫レイラ、降りたところは高級レストラン。
ちょっと、面白そうでフロントの隅に目立たないように丸まって見ている事にした。
本日のご予約は3テーブル。
ひとつ目のテーブルは窓際の夜景の美しい席。
どうやら、お見合いの最中の様子。
「ご趣味はなんですか?」
「はい、お茶とお花を少々。」
「子供は何人ほしいですか?」
「二人ほど。男の子と女の子が欲しいです。」
と、かしこまったスタイルのカップルがお決まりの会話をしていた。
2つ目の予約は、ファミリー。
「ねぇ、パパ今度は電車のおもちゃ買ってよ。」
「よしよし、お前の好きなものをかってやるぞ。」
「ママ、今日はステーキの後に三段積みのデコレーションケーキを食べたいよ。」
「いいわよ、ちゃんと、オーダーしてあるわ。」
ひとりっ子で小太りの幼稚園位の男の子がおねだりをしていた。
かなりの物欲の独占者らしい。
3つ目の予約は、不倫相手同士。
「いつになったら奥さんと別れてくれるの。」
「もうすぐに別れるさ。君が1番さ。」
「本当?」
「本当さ、君のためにプレゼントを持ってきたよ。」と、
誰が見ても安物の指輪をあげていた。
いろんな人がいるなと思いながら、猫のレイラはキッチンに入っていった。
ひとりの見習いシェフがいた。16歳くらいの様子。
猫のレイラを見つけ抱きかかえた。
「かわいい猫さん、お腹がすいたでしょ?」
レイラはうなずいてみた。
少年はキャビアを少し手にとって口までもってきてくれた。
「コラ!何をしている!」
かっぷくのいい責任者らしき人が怒ってきた。
「猫を入れては不衛生だぞ!
それにいくら下に落ちて客に出せないキャビアといえども、贅沢すぎる!」
猫のレイラにフライパンを振り回して追い払いに来た。
「助けて!」
慌てた猫のレイラはレストランの外へ走った。
階段を下りようとしたのに、着いたのはエスカレーター。しかも、逆向き昇り運転!!
短い足でがんばって2・3段降りたらまた昇ってしまった!
「も〜!最悪。」
廊下の方角を変えたら、ちょうど、エレベーターのドアが開いていた。
駆け寄って中に入ったら、追いかけてきた少年も中に入ってきてドアが閉まった。
少年は、すぐさま猫のレイラを抱きかかえた。
「ごめんね。こわかったでしょ? 僕がちゃんと、外へ連れて行ってあげる。」
そういって、エレベーターの1階のボタンを押した。
エレベーターは1階に付き、少年は外へ出て近くの公園の入り口でレイラを腕から下ろした。
「待って!」少年が帰るのを呼び止めた。
BOM !!
レイラは魔法を解いて人間と同じ姿になった。
「え!!コレはどういう事?」
少年は目を丸くして腰を下ろした。
「実は私、魔法使いなの。信じて本当よ。人間界の様子を見ていたのよ。」
「本当?なにか魔法を使って?」
「魔法よ、魔法! 少年を青年に変えて!」
BOM !!
少年はあっと言う間に25歳位の青年になった。
「本当だ!凄い!」
「今日は助けてくれてありがとう。私の名前はレイラ。紳士さん、お名前は?」
「僕はダニエル。」
BOM !!
レイラも変身した。20歳位の淑女になった。
「ダニエルさん、私も大人に変身しました。」
「凄いな?これも魔法だね。さぁ、大人になってどうしよう。」
「ひとつお願いがあるの。私ね、貴方の働いていたレストランのカクテルが飲みたいの。」
「なるほど、この姿では誰も気がつかないかも。」
二人は最上階のレストランに行き、カクテルを注文した。
窓際の夜景の美しい席である。
二人はmoonlight(月光)という名前のキラキラ光るカクテルを頼んだ。
ロマンティックなカクテルで本物の恋人同士みたいでレイラは満足気。
上手い具合に誰も少年をダニエルとは気がつかない様子。
「仕事に戻らなくて店長に叱られないかな?」
「私が魔法の耳で店長が怒っていないか聞いてあげるわ。」
店長の声が聞こえてきた・・・『ダニエルは何処へ行った!本当に心配ばかりかけるよ!』
「へぇ、心配している。」
・・・・『ダニエルは先代の妹の子供だけど優秀でね・・・』
「へぇ、そうなの。優秀なの?」レイラがダニエルに聞いた。
「さぁ、でも、僕はこのレストランで大事にされている。」
・・・・『猫を外に連れて行ったまま帰らないのさ。優しい子だからね。
まぁ、その内帰ってくるさ。』
「当たり!僕は猫が心配だっただけさ。でも、仕事を抜けたのは反省しているよ。」
ダニエルが苦笑いをした。
「そんなに店長が心配して無いならゆっくりしましょう。わたしは口うるさい家庭教師から逃げてきたのよ。夜景も綺麗だし、嫌なことは忘れて乾杯しましょう。」
「では、魔女と人間との出会いを祝して、乾杯!」
二人は都会の夜景を眺めながら月光の中で乾杯をした。
小さなパーティーを終えたふたりは元の公園で魔法を解き、自分の本来の姿に戻った。
「さようなら、今日はありがとう。」レイラが言った。
「こちらこそ、また、いつでも、遊びに来てください。」少年がなごりおしそうに言った。
「では、また、私が20歳になったら、ここへ来ます。ちゃんと顔も覚えてくれたでしょうか?」
「えぇ、かわいらしいお嬢さんでしたよ。」ダニエルはレイラの手の甲にお別れのキスをした。
レイラは魔界に戻って、自分磨きや、勉学に励んだ。
ダニエルに再会したときに恥ずかしく無いようにだ。
「ダニエル君、今頃何をしているかしら・・・」レイラがダニエルの事を思い出す日が続いた。
そして、9年後。
レイラは、20歳になった。
「人間界に出かけていいですか?」と、両親に尋ねた。
「あなたにダニエルさんという男性から手紙が届いていますよ」と、母が手紙を渡してくれた。
ちょうど、誕生日に両親とレイラ宛てに届いたとの事。
手紙にはこう記してあった。
『あれから9年経ちました。いかがお過ごしですか?20歳の貴女の姿を今でも覚えています。
僕は田舎に1軒のレストランを任されるまでに成長しました。貴女の好きなカクテルを用意してあります。よかったら、月光の夜にお店に来てください。また、貴女にお会いしたいです。』
両親はダニエルの思いをくんでレイラが人間界に行くのを許可した。
ダニエルに好意的でたくさんのお土産を持たせた。
そして、これが両親とレイラと暮らす最後になった。
しばらくすると、両親に結婚式の招待状が届いた。
「ママ、もう結婚式ですよ。少し寂しいですけど、これで安心できますね。」
「パパ、どうなることかと思いましたね。この遠距離恋愛。」
「それにしても魔女と都会の高層エレベーターは似合わなかったけど、今度は自然の中でゆっくり暮らせそうで良かったよ。空飛ぶホウキも似合う所なら安心さ。ママもそう思うだろ?」
「そうですね。パパ」
パパとママは気付かないフリをしていても、実のところは色々お見通しのようです。
そして、パパとママが若い時のように、二人で安心のKISSをした。
まるで月光の中のダニエルとレイラのように、幸せそうに手を取り合って・・・。
※Seasons-plus-2011 秋号参加作品
✩この物語はフィクションです。イラスト・文章共、著作権は入野うさぎにあり無断使用・転載は法律で禁じられています。
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