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海の話 入野うさぎ
海の話をしても反応しない
波を見に行っても
風に当たりに行っても
少し退屈みたい
お洒落なカフェに行っても
興味なさそう
こんな二人だけど
20年以上一緒に暮らしている
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Seasons plus2013
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夏の忘れ物 入野うさぎ
子供の頃は夏になると思い出す
ひまわりに麦わら帽子
蚊取り線香の香り 打ち上げ花火
大人になると
夏の終わりには
やりわすれてしまった何かを思い出すように
少し手遅れで残念に思う
好きだったあの人も忘れかけてきた。
少し寂しい夏の忘れ物
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短編『春の雪』入野うさぎ
「あなたの生まれた日はもう春だというのに雪がちらつく寒い日だったの。」
静香の母はこの季節になると毎年この会話をする。
3月31日生まれ静香は顔の小さな細身の女の子で17歳になる。
母は兄を21歳で出産し静香を27歳で出産し、現在は44歳だ。
母は、短大を卒業し見合いで結婚。ハネムーンベイビーの兄は姑さんのお気に入りであった。
年齢も6歳違うと、兄弟というよりは一人っ子が二人いるような家庭環境だ。
父の母で母には姑の祖母は、男尊女卑の家系で育ったのか長男の兄ばかり可愛がる。
兄は長男らしく賢くて紳士で男気も持ち合わせる性格でこれは姑だけでなく女性陣にもかなり人気である。23歳といえば結婚対象になるのが普通だか、親との同居を強いると消えてなくなる縁も少なくはない。
静香は家族が意識の中心が兄になっているので、あまり干渉されないのでかなりのん気な性格をしている。もっぱら話し相手は母である。
「お母さんは早く結婚して嫌ではなかったの?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「もっと、ボーイフレンドと遊んだりできたのにね」
「あら、そうね。山ほどのボーイフレンドができていたら楽しかったかも」
母は笑った。
「山ほどより本命一人探すのが大変なのよね、お母さん。」と、静香が自分でフォローした。
母は、兄がいたから特にボーイフレンドは必要ないのかもしれない。
父は、静香や母より長男が大切のようである。と、いうより姑さんが大切で、姑さんが長男を可愛がるのでつられて可愛がっている感じである。
昔は長男が一家の後継ぎだったが今は兄弟が少なくて時代も違うが、祖母が同居しているだけで家の家風は昔かたぎになることも多い。
母は第一子が男の子だった為、二人目は男女どちらでも良かったらしくプレッシャーも少なく
静香を出産した。
子宝に恵まれない人も多い中、母は幸せな人だと思った。
そう思うと早い結婚も悪くないと思うのだった。
窓の外を見ると、雪がちらほら降ってきた。
「まぁ、春だというのに雪ですね。今日は底冷えしますね。」
「私が生まれた時みたいに?」
「そうね。そういえば、もうすぐ静香のお誕生日ね。」
「まだ先よ、お母さんこそ自分の誕生日忘れていたじゃないの?」
「忘れていたわよ。3月3日なんてひな祭りに隠れちゃってね。
お誕生ケーキは毎年ひなケーキだったわ。」
「お母さんは女兄弟だけだったから叔母さんの手前もあってそうなったのかもよ」
「そうね。お母さんの誕生日も春だというのに雪の降る日だったそうよ。
でも、静香の出産日ように3月31日に雪がふるのは異例だったわよ。」
「お祖母ちゃんが喜んだわよ。女の子が欲しかったから」
「お祖母ちゃんが?」
静香は兄にしか興味がない祖母だと思っていたので驚いた。
「お祖母ちゃんちゃんは自分に男の子しか生まれなかったものだから喜んだわよ。
ちょうどお兄ちゃんも大きくなって少し手が離れて寂しがっていたので特にね。」
「初めて知ったわ。」
「女の子の扱い方を知らないのよ。」
「やぁ、なんだか嬉しいな。自分には興味ないと思っていたから」
「あら、あなたのことよく観察しているわよ。昨日は友達の家に11時までいたでしょ。
帰ってくるまで眠れないのよ、お祖母ちゃんったら。」
「はい、そういうのはちょっと堅苦しいかな。はは・・・」
ドアが空き、祖母が入ってきた。
「おやおや、私の噂ばなしかい?」
「あらお祖母ちゃん、聞こえていたの?」
「そうだよ、11時まで帰ってこないなんてお祖母ちゃんの時代は考えられなかったからね。」
「お祖母ちゃんの時代と比べられては困ります!」
「はは・・・時代は変わりましたからね。なんにも言いませんよ。」
静香はちょっと、ふてくされて部屋の戻った。
今年は3月29日だというのにかなり底冷えがする。
また、静香の誕生日に雪が降るかもしれない。
3月30日の朝
目の覚めた静香は白い雪を窓ガラスに見た。
寒い朝だった。部屋の外が騒がしかったのでドアを開けた。
母がいて、言った。
「静香、お祖母ちゃんが急に老衰で亡くなったの。今、最寄りのお医者様に見てもらったところよ。」
静香は驚いて祖母の姿を見に向かった。
「お祖母ちゃん!」
手を握ったらまだほんのり温かい気がした。
「お兄ちゃんは赴任先に連絡したわ。葬儀屋さんもそのうち来るから忙しくなるわね。」
「お祖母ちゃん、お祖母ちゃんの大好きなお兄ちゃんも帰ってくるよ。」静香が言った。
「静香の事も大好きだったじゃないか?」
父がぼそっと言った。
葬儀屋が来て お通夜の支度を始めた。
亡くなった祖母の顔に静香と母で化粧をした。
「今日は静香のお祖母ちゃんの事を話そうか。」父が言った。
父と改まって話をするのは珍しい事だ。
「お祖母ちゃんは女の子を幼い頃亡くしている。
お父さんの妹だよ。生きていればお母さんと同じ年かな。
5歳の時に事故で亡くなったのだけれど、ひどく可愛がっていたから相当なショックだったと思うよ。静香が生まれた時は女の子でかなり喜んでくれた。お兄ちゃんが大事で静香はそうでもないということは無いよ。お祖母ちゃんはしつけの厳しい家庭で育っているから、自分の娘は自由に育てたかったとよく言っていたよ。静香が自由に育ってほしいといつも思っていたようだよ。」
「お祖母ちゃん、喜んでくれたのね。嬉しいな。でも、お父さんに妹がいたなんて知らなかった。私みたいなのは自由というよりのん気なのです。お婆ちゃんがいつも気にかけてくれたなんて感激だわ。」
「お祖母ちゃんの日記が出てきたわよ」母がノートを差し出した。
『3/29 孫の静香の帰りが遅かった時に心配していた話を、嫁と静香で会話していたのを聞いた。私の娘時代には夕方5時には家にいて食事の支度をしたり箸を並べて準備をしたりしていたものだが近所に遊びに行って11時まで帰ってこなくて心配したものである。女兄弟がいないので、友達が随分大切なのもわかるが先様に迷惑がかからなければと思っている。静香が大人になるまで危なっかしくて心配ばかりだよ。もうすぐ静香の誕生日。今年はよく冷える。静香生まれた年のように雪が降るかもしれない。お母さんも難産で大変だった。お誕生日はどうやって祝おうかね。』
「お祖母ちゃん、誕生日を楽しみにしてくれていたのね。なんだか、お祖母ちゃんはお兄ちゃんばかりだと思っていたけど誤解していたわ。ありがとう、お祖母ちゃん。」
お通夜の支度が進むにつれてやっと涙がこぼれてきた。
忙しくて泣いていられないというのは本当だと思った。少し落ち着いてからの方が悲しい。
外は雪がまだぱらついている。
「ただ今!」兄が帰ってきた。
一人ではなく女性を連れていた。
「はじめまして」
お兄ちゃんの彼女が手伝いに来てくれたので、家族は感謝をして迎えた。
静香はこの人とお兄ちゃんと縁があればいいと思った。
そうすればずっとお祖母ちゃんの話ができる、そんな気がしていた。
そして、無事にお通夜に葬儀を無事終えた。外は雪がパラパラと舞っていた。
「きっとお祖母ちゃん忘れて欲しくなくて神様にお願いしたのね」
春の粉雪は静香の誕生日を通り過ぎ、まるで祖母が亡くなるのを一部始終見守っていたかのように4月1日の朝まで優しく舞っていた。改めて凍えた手を合わせてお祖母ちゃんに感謝とさようならを告げた。
「あなたの生まれた日はもう春だというのに雪がちらつく寒い日だったの。」
母の言葉が、祖母の声に重なって移り、頭の中を何度もこだました。
Fin
※この物語は舞台背景や登場人物など架空にものです。
Seasons plus 2013 spring 参加作品
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「君が恋」入野うさぎ
君が 笑う
君が 泣く
君が 歩く
君が 走る
君が動く
君が跳ねる
何をしていても
僕は嬉しい
僕が恋
君が恋
Seasons plus2013 spring 参加作品
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「100年たっても」入野うさぎ
100年たっても
君を守るよ
100年たっても
傍にいて 笑ってよ
100年たっても
僕は変わらない
君を愛している
この身が枯れても
いつまでも残る
愛の誓い
イラスト・ポエム Season plus2013 spring 参加作品
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