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冬空に紅梅が咲いている。
愛子と初めて「まぐわい」をしたころにも匂うように紅梅が咲いていた。
あれからもう3年が経った。
あの夜、少しだけの「まぐわい」の約束が激しいものになってしまった。
(「あと1回で半ダースよ」と愛子が言ったから、半ダースは頑張ったのだろう)
あのまぐわいから、1回が2回に、2回が5回に、5回が100回に重り合っていった。
清は愛子とまぐわいを始めてから石焼き芋屋をやめてしまった。
(清は石焼き芋を売らずに・・、自前の芋を売ったか、と、自嘲した。)
あの激しいまぐわいは愛子のご主人が戻ってくるまで数ヶ月続いた。
ご主人が戻ったの機に清は携帯電話を変えてしまった。
携帯電話を変えてから愛子とは、一度も会っていない。
もう3年が経つ。
清は愛子からお土産に貰った宝石原石と金の延べ棒の使い途を考えた。
金の延べ棒は直ぐに換金した。
山とあった宝石原石は加工を思いついた。
すぐ、山梨県に足しげくかよって甲府市郊外に宝石の加工工場を作った。
加工した宝石を横浜の元町商店街に販売した。
「きよしジュエリー」店を開業したのだ。
原石の仕入れ値がないので周りの店より2〜3割は、安く売ることができた。
そんな、こんなで「きよしジュエリー」店は順調によく繁盛した。
清は冬空に紅梅の咲いているのを見ながら思った。
ナルシストの清は自分の輝きにうっとりしてばかりで人に与えるのを知らなかった。
そのうっとりは容姿ばかりでなく知識についても同じであった。
何も与えないから人からも与えて貰えない。
ニートになった源がこのあたりにあるのだろう。と・。
愛子はこの清の与えないところを、心を、強引に引っ剥がした。いや、奪った。
一皮どころか二皮も七皮も剥く荒治療だった。
ああ、あれは・・、
物理か何かで習った「作用反作用の法則」を清は思いだしていた。
力を加えると反対から等しい力が戻ってくる。
よく愛子は清のもの握りながら輝く宝石だといっていた。
あの貰った宝石原石類は反対からの等しい力なのだろうか。
キリスト教の「与えよ、さらば与えられん」という言葉もある。
(清はしごく素朴な基本をないがしろにしていた気がした。)
清は愛子の荒治療によってナルシストから、また4年も続いていたニートから抜け出すことができた。
横浜が余り繁盛して儲けたので先週、東京銀座に「きよしジュエリー」支店を出した。
お金持ちの女性の首を飾ってやりたい。
女性の首をジュエリーで死ぬほど締めてやりたい。
(清はこんな荒唐無稽を考えた)
銀座支店を開店した日の午後のことであった。
見覚えのある顔がショーケースを見ている。
あの豪邸住いの愛子だ、だった。
清は一瞬、ぐきっとなったが開店を指揮している手前、その場を立ち去るわけにもいかない。
愛子は若い男と二人づれであった。
清と同じ位の年齢に見えるがインテリぽっくてか弱いな感じがした。
(清の目には新しいご主人のようにも見えた)
愛子も清をみてすぐわかたようだ。
お互いに軽く会釈らしきをした。
微笑んだ愛子はモナリザの微笑みを思わせた。
ベットで見たあの艶笑とはあまりも違う顔だ。
(愛子は「きよしジュエリー」の開業の顛末をすぐ直感したようだ)
あの開店の日、愛子は店で一番高価な9000万円するジュエリーにお買いになった。
ダイヤのネックレスであった。
「また、買いにくるわ・・ね!!。買いに・・、きよし。」
愛子は・、こんど清の何を買うというのだろう。
(完)
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