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第12話 「アポイント」
「ほんならあがろか?」
「うん、わかった」
私は望より先に浴室を出て、ドアにかけてあった
バスタオルを左手に抱えて彼女の出てくるのを待つ。
「では、お体をお拭きしますんで」
私は田村正和が『そんなんじゃねえよ!』って怒って
くるだろうが、彼の声真似で彼女にそう言った。
「そんなの先生、お店で私がするような事だけど」
「ええやん。いつもと逆のパターンもたまには」
そう言いながら私は彼女の顔からバスタオルで
拭き取っていた。
私は彼女の全身をくまなく、そして丁寧に拭き取って
あげると、
「先生も拭いてあげるよ」と望が別に対抗意識を
燃やした訳でも、職業病でもないだろうが、
そんな言葉をかけてくれた。
「あぁ、おらはいいべー」
私はおどけた声で、すこしメロディーをつけて答えた。
「どこの言葉なの、それ?」
「知らねーべー」
「うふっ(笑)」
「その代わり、望さんに一生のお願いがあるんやけど」
私はモミモミともみ手をしながら、彼女に申し出た。
「お願いってなーに?」
「きっと、難しい事やから無理やとは思うねんけど。
でも清水の舞台から5回くらい飛び降りた気になって、
思いきって打ち明けるわ。実は…ここにキスしてほしいねん」
私はそう言いながら、右手の人差し指を唇につけた。
「何だ、そんな事?もう、何かと思ったよ」
そう言って、彼女は私と唇を合わせる。
2秒と経たないうちに、私の舌が自動回転、自動走行を
開始した。それに応えるように、彼女の舌が絡み合う。
も、縺れるんじゃないかと思うくらい絡み合った。
3分ほどその場で、下着すら身につける事もなく二人は
激しくキスをしていた。
私はそっと望の体を押し、ゆっくりと重なる唇を離した。
「有難う。俺はもうこれでいつ死んでもええわ」
「もう、大袈裟なんだから!」
「そんな事ないで。ほんまそれくらい嬉し恥ずかし女子高生
って感じやし」
「何か意味わかんないけど。まぁいいっか」
二人は下着を身につける。望は先にリビングの方へと
歩いていく。
「先生、ビール飲む?」
「ごっそさんでーす!」
私も彼女の後を追い、リビングへと向かった。
彼女が私にラガー350mlの缶ビールを手渡して
くれた。
「そしたら、乾杯しよか」
「乾杯!」二人同時に、缶を合わせて、ほぼ同時に言った。
「ところで、望さん。今日は勉強する?」
「今日はちょっと疲れたから」
私は思わずダイニング・テーブルの下で
デストラーゼがホームランを打った後のポーズを
決めた。(いわゆるその彼流のガッツポーズ)
「そしたら、それはまた次回にしよか。ところで、
今度いつ来たらええかな?たとえば、今週の金曜
か土曜日は?」
「それなら土曜日がいいなぁ。だって、その日はお店
公休だし」
「分かったわ。そしたら、また土曜日に来て、そん時
は勉強しよか」
私は今日の目的を果たしたと思った。
だから体が素直に反応し、服を着始め、帰ろうと
していた。
それを望は悟ったのだろうか、
「先生、ひょっとしてもう帰るの?」
「あぁ、そうやけど。何で?」
「だって……」
甘ったれた声を出す望の瞳を見ると、そこには
大量のマグマが流れていた。
『また噴火させなあかんな!』
私はそう思い、着かけていた服をまた、脱いだのだ。。。
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