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第17話 「打って変わって」
青年:「そうしたら美園さん、また3階のレッスン・ルームへと
移動してください」(とうとうお別れなのかな?でも、きっと
また彼と会えるよね?)
私: 「ひょっとして、私一人でですか?」
青年:「はい、そうですよ」
青年は淡々と事務的な口調で返事をした。
私: 「分かりました」
私は部屋を出て廊下を歩き始めた。自分でも肩が落ちているのが
分かった。(それだけ、ちょっと彼とお別れするのはショック
なんだなぁ。あんなに自己中で面白みのない男だったけど)
階段を下りて、私は前日一番最初に入ったレッスン・ルームの前に
立っている。部屋を入る前に大きく深呼吸をしてから、部屋のドア
を開けた。
そこで私を待ち受けていた新しいトレーナーを一目見た私は思わず
部屋のドアを再度閉めようとしていた。
(うっそー、今度は新手のいじめ!?)
その新しいトレーナーは、私の目測では身長170センチ、体重80
キロ、メタボ体型。身につけている服は服ではなかった。イケメンの
青年はおしゃれなドレス・シャツにジーンズ。しかし、そのトレーナー
が身に着けていたのは上下紺色のジャージ。しかも、ジャージの上の
腕の所には真っ白な2本線が。(お前は仮面ライダーか?ヤンクミか?)
私は別に自分が美人だとも可愛いとも正直思っていない。だから、
他人様の容姿についてとやかく言える立場じゃない。しかし、それに
しても彼の顔はまさに大仏様そのものだった。彼が大仏様でない事が
分かるのは顔が金色に光っていないから。それだけだった。
大仏:「美園さんですね?」
私は返事をせずに、首だけ1度縦に振った。
大仏:「どうぞ、ここにおかけください」
そういって大仏様は私が座るだろう椅子を引いてくれ、
手招きをしていた。「まぁ、座ってくださいませ!」と
丁寧に言わんばかりに。
(きっと、新手のいじめなんだろうなぁ、これって?私また耐えれる
かなぁ?)
私は、大仏様が引いてくれた椅子に腰をかけ、座ったまま椅子を
少し前に動かした。
大仏:「美園さんは昨日が初めてでしたよね?」
私: 「はい、そうですが。今日も昨日と同じような事をするんですか?」
(まさかこんな人と一緒にお風呂に入ったり、あれをするなんて絶対無理!)
大仏:「基本的には同じになりますが。ただ、進め方は昨日とはかなり
違うことになるとは思いますが」
(えぇー、やっぱり一緒?無理、む・り・で・す・よーー!)
私: 「では、最初は自己紹介で、そして……」
私は夕食の所まで話して、その後を言うべきかどうか一瞬迷った。
私: 「それから、一緒にお風呂に入って、一緒に寝る?あぁー寝る
ってナニもするんでしょうか?」
大仏:「最後の方は少し変わると思いますけどねぇ」
大仏様は、にっこりと優しく微笑みながら私に答えてくれた。
(大仏様が笑うんだ!そして大仏様が笑うとこんな顔になるのね!)
私: 「少し変わると言うのはどういう事ですか?」
大仏:「まぁ、それは夕食の時にでも説明させていただきます。
それより、自己紹介をする前に昨日のレッスンを受けての
美園さんの感想を聞かせてもらえませんか?」
私: 「感想ですか?」(あんまりネガティブな事とかルックスの
事とか言わない方がいいんだろうなぁ!)
大仏:「はい。正直に思ったまま言ってくださっていいですから。
私が感想を聞く理由は、少しでも美園さんが今日1日私と
楽しく過ごしていただける為だけですので」
(楽しく?私が?どういう事なんだろう?どう答えよう?)
私は10秒ほど考えた。
私: 「昨日は初めてだったので、要領を得ない事が多かったので
正直疲れました。それとあまりトレーナーの方と楽しく話が
出来なかったのは少し残念でした。そんなところです」
大仏:「分かりました。では、今日は私と出来るだけ楽しくお話して
いただけるよう努めさせてもらいますね」
大仏様はまた私の目を見つめて、にっこりと微笑んだ。
(今日はなんだか昨日とまったく様子が違う!打って変わったように
トレーナーがすごい低姿勢だ!何かあるんでは?)
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