英語上達と癒し

更新してほしい内容があると嬉しいんですが。。。

月9のドラマ

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「月9のドラマ」第9話「新月9ドラマ始まり、始まり」



ドラマは突然始まった。

画面にアラビア湾に浮かぶロケットのような、またヨットの

帆の形をしたホテル―バージュ・アル・アラブが現れた。

数秒ほどで画面が変わった。おそらく同じ角度から撮影された

ものだろう。しかし、夜になっており、ホテルは青いキャンドル・

ライトに変身していた。また数秒すると、その部屋の中が写され

ていた。贅の極みのような部屋だ。部屋が広いのは勿論の事、

そこに設置された家具や、調度品全てが高価そうなものばかり

だった。カメラがまるで部屋案内をしているかの如く―玄関から

室内を全て写し終える。そして、阿部寛と上戸彩が窓際に肩を寄り

添い立っている場面へと変わった。彼らは窓際で星空を眺めていた。

『大学の助教授って儲かってるんだなぁ?』宇藤はそんな事を思った。

というのも、彼もこのホテルが自称7つ星ホテルと言われるくらい高級

ホテルである事を知っていたからだ。またドバイは現在最も人気のある

リゾート地だが、また高額な費用がかかるのだ。更にその中でも彼らが

今いる『バージュ・アル・アラブ』はドバイの中でも最高級ホテルである。

「由利、俺と結婚した事後悔してないか?」

阿部演じる五郎が由利(上戸彩)に問うた。

「勿論後悔なんかしてないよー!五郎さんはどうなの?」

「俺か?あぁ、俺はちょっとだけ後悔してるよ」

「えっ、五郎さん。どうして?」

由利は口を尖らせながら問うた。

「だってさぁ、由利。俺たち結局できちゃった婚になっただろ?

 俺はできればその前に由利に結婚申し込みたかったんだ」

「もうびっくりした。五郎さんのバカー!」

由利は五郎の胸に飛び込み、彼の胸板を何度も太鼓を打つように

叩いた。

(彩ちゃん、カワイイなぁー。こんな事されるだけで気絶しちゃうよ)

「そんな事なら、私全然気にしてないよー。私は五郎さんと結婚

 できただけで幸せなんだから」

「由利、有難う。本当に愛してるよ。そして一生愛し続けるよ。万一

 俺が浮気したり変な事でもしたら、即刻死んでやるよ」

「五郎さん、愛してるよ私も。一生離さないでね、お願いだから」

由利は五郎にジャンプしながら頬にキスをした。そして五郎は

彼女のバスローブを脱がした。

彼女の生肌が背後からズームアップされている。

やがて、二人はベッドに入り、抱き合った。ライトが消され、

五郎と由利の「愛してる」「好きだ」という言葉だけが何度も

繰り返された。






第8話「準備完了」

「月9のドラマ」第8話「準備完了」



「そろそろお帰りにならないといけませんよね?」

「はい」

「よろしければ、ご自宅までお送りしますよ」

「いいえ、さっきの所までで結構ですよ」

彼女は警戒した訳ではないが、丁重に断った。

(そうだよな?初めて会ったばかりのよく知らない男に家まで

 送ってもらいたくないよな?)

「分かりました。そこまでお送りします」

彼はソファーから立ち上がり、玄関の方へと歩いていく。

外は激しく雨が降ってきているので、玄関でセリーヌの傘を

1本だけシューボックスから取り出した。あわせて自分の靴も。

そして、玄関に置かれた彼女のミュールを余った左手に

持ち、玄関ホールの右側の扉を開けた。そこは直接ガレージへと

繋がっている。そこには2台車が停めてあった。普段乗っている

レクサスとその左隣にはシルバー・メタリックカラーのBMW M5が

威風堂々とした様相で。

「では、どうぞここで」

彼はそう言いながら助手席のドアを開け、彼女に乗ってもらうよう

手招きをした。

彼は車を動かし、ガレージを出た所で右手に持つリモコンを背後に

向けた―ガレージのシャッターを閉める為に。

「今日は本当に有難うございました」

彼は車を走らせてすぐに彼女に再度礼を述べた。

「どういたしまして」

「ところで、最上さんはどうしてもうあいつは現れないと

 思われるんですか?」

「きっともう私はあの人を必要としてないってそう思われたん

 でしょうかね。きっと」

「本当に最上さんはもうあいつを必要としないで大丈夫って

 思えるんですか?」

「正直まだよく分かりません。でも、あの人がいなくっても

 一人でこれから何とかやっていけるかなとは思います。だって、

 あの人は私に何度も幸せに生きていく術を教えてくださったので。

 私はきっとそれを理解できたはず。私はそう思ってます」

「それはそれで素晴らしいですね。でもやっぱり時々不安になったり

 とかは……あぁ、着きましたね」

彼は話の途中だったが、引き止める訳にもいかないと思った。

「本当にどうも有難うございました。では、また明後日ここで。

 それとこれを持っていってください」

彼女に傘を差し出した。

「わかりました。お休みなさい。傘有難うございます。明日お返し

 しますので」

彼は彼女の後姿を見届けるのも良くないと思い、すぐに車を走らせた。


自宅に戻った宇藤は4帖半ほどのウォーキング・クローゼットで

スーツを脱いで、ハンガーに掛ける。下着姿のまま隣の10帖

ほどの洋室へと移動して、カステルバジャックの薄手のセーターと

エヴィスジーンズに着替えた。彼は自宅で一人の時も、スウェットや

パジャマなど着るのを嫌っていた。何となくだらしない気がするらしい。

彼は冷蔵庫へ行き、2本目の350mlのラガーの缶ビールを

取り出した。ソファーに深々と腰を下ろして、缶ビールをグラスに

移し、口へと運んだ。彼はイタリア製のガラステーブルに着替える前に

置いた携帯電話を掴む。アドレス帳のさ行へと画面を移動させ、

電話をかけた。彼は近所の寿司屋へ出前を注文したかったのだ。

―はい、寿司正ですが

「出前お願いします」

―いつも有難うございます。宇藤様ですよね?

その寿司屋の電話は携帯電話と同様のナンバーディスプレイ表示

になっているようだ。

「はい、そうです」

―ご注文お願いします

「中トロ2カンと、マグロ2カン。それと……あぁ、巻きはこれ、

 1皿って一口サイズのが4個でしたよね?」

―そうですが

「そうしたら、鉄火巻を4皿と、ねぎとろ巻を2皿で。以上です」

(ひょっとして注文したのって、まぐろばっかりか!?)

彼は電話を切り、壁掛け時計を一瞥した。壁掛け時計は直径50センチ

ほどの円形で、縁には18金が施されている。

時間は8時を少し過ぎたところだった。

彼は2本目のビールを飲み干してから、浴室へと向かった。

シャワーを浴びようと思ったのだ。

彼は風呂に浸かるのは盆と正月くらいだった。また、彼は

普段シャワーを浴びてから、ドライヤーで髪をきれいに乾かし、

ムースをつける。身だしなみには余念がない。夜の自宅でも。

ただ彼がそれをするには服装とは別に理由があった。

というのも、彼の自宅には夜間でも取引先や顧客、そして会社

の仲間が頻繁に訪れるからだった。しかし、月曜日だけは基本的に

誰もそうしなかった―彼が月9ドラマに没頭するのを知っているからだ。

それでも稀に会社の仲間はその事を失念してか、彼を飲みに誘ったり

するのだが。

彼はシャワーを終え、ドライヤーで髪を乾かした。ムースはつけずに。

セーターとジーンズを身に着けて、台所の方へと進んだ。

そして冷蔵庫から3本目の缶ビールを取り出し、ダイニング・テーブル

まで運ぶ。その時玄関のインターホンが鳴り出す。

いや、突然にメタリカのThrough the Neverの激しいギターのリフが

流れ出した。彼は玄関へ向かった。ヴィトンの黒いサンダルを履き、

玄関の扉を開けた。やはり、寿司屋の出前だった。

彼は3500円と引き換えに寿司を受け取り、ダイニング・テーブル

へと戻った。寿司屋の袋から注文した寿司の入った使い捨て容器を

取り出す。鉄火巻から箸をつつき始めた。彼はまた壁掛け時計に

目をやると、ドラマ開始まであと25分あった。

彼は箸を置き、ふと立ち上がり、2階へと向かった。

彼は書斎に入り、8段になっている本棚の扉を開け、自分の目線と

同じくらいの高さ―上から2段目の右端に並べてある本を取り出した。

それは彼が今読みかけている東野圭吾の「秘密」という小説だった。

彼は主人公の妻である直子は事故で亡くなったが、魂だけが生きて

おり、娘に憑依する。そのあたりまでしかまだ読んでいなかった。

彼はその本を持って、階下のダイニング・テーブルへ戻った。

彼は本を読みながら、寿司をつまむ。

突然彼の母親の事を思い出した。

彼はまだ小学生の時、母親に食事中に漫画の本を読んでいて

叱られた事が何度かあった。

彼は母親の叱る理由は当時から分かっていた。というのも母親は

彼にその理由をはっきりと説明していたからだ。

『ながら』をすると、気が散って集中できない子になる。そんな理由

である。今も彼女の言わんとする事はよく分かる。しかし、一方

この情報化社会において、こうした『ながら』も必要ではないか。

そんな気持ちも彼は大いに持っていた。

彼はしばらく食べながら、小説に没頭した。

『でも小説みたいな話だなぁ!今までまったく算数が苦手だった直子が

 突然算数もまたほかの勉強もすごくできるようになるなんて。しかし、

 やっぱり彼の小説は面白いな!』

彼は一人で誰もいないのに感想を声に出して述べていた。

彼はそこまで読み終えて、そのページに栞をはさんだ。

時間があと5分ほどで9時になるからだ。

彼はテレビに近づき、テレビをつける。そしてブルーレイ・ディスク

がちゃんとセットされているかどうか再確認した。

彼はダイニング・テーブルに戻り、ビールがまだ半分残っている

グラスを掴んだ。そのまま冷蔵庫へ行き、もう1本缶ビールを

取り出し、テレビの前へ戻ってきた。彼はテレビの前で

ペルシア絨毯の上に正座を始めた。隣に缶ビールとグラスを

置いて。これで、彼はドラマを見る準備が全て完了した。




第7話「アポイント」

「月9のドラマ」第7話「アポイント」



宇藤は彼女がビールを飲んでくれるのを暫く

待っていた。しかし、彼女は一向にその気配がなかった。

しかたなく、彼はラガーの350ml缶ビールをグラスに

注いだ。几帳面に自分でグラスを傾けあまり泡が立たないように。

彼は注ぎ終わるとすぐに喉へと一気に流し込んだ。

<別に早飲み大会じゃないんだぞ!>というぐらいの勢いで。

彼は話を戻す事にした。そして核心に触れたかった。

「ところで、どうしてそんな事がわかったんですか?」

「あぁ、うまく説明はできないんです。ただそんな感じがしたし、

 そんな匂いがあなたから漂ってきたんです。ほら、まったく

 知らないモノ同士でもゲイの人がこの人はゲイだって分かる

 って。そんなのあるでしょう?そんな感じです」

「ということはひょっとして、あなたもあいつがいなくなった

 って事なんですか?」

「そうですよ。わたしはあの人がいなくなって1ヶ月近くになり

 ます。でも最近はもうきっとあの人は私の所に現れないんじゃない

 かって、そう思っています。あなたはどうなんですか?」

「私はあいつがいなくなって2週間になります。でも私はまだまだ

 あいつが必要です。だからあいつには早く戻ってきてほしいのです」

「あの人とはどれくらいお付き合いされているんですか?」

「そうですねぇ。確か5年くらいになると思います。あなたは?」

「ほぼ3年ですね。私はあの人に何度か助けていただきましたし、

 あの人のお陰で自分自身すごい成長できたって思っています」

「私もあいつには何度かここぞって時には助けてもらってます。

 それで自分自身はあいつのお陰で少しは成長したかなとも

 思っています。あぁ、ところで今頃失礼ですが、お名前は

 何とおっしゃいますか?」

「私はもがみしょうるです」

「もがみしょうるさん。珍しいお名前ですねぇ!漢字はどのように?」

「もがみは最上川の最上です。しょうるは清く流れるっていう清流と

 書きます」

「素敵なお名前ですね」

「有難うございます。ところで、あなたのお名前は?」

「私は宇藤御堂といいます」

「そう言えば、私名刺をいただいてたんですね。結構こんな

 ところもぼけてたりするんです(笑)失礼しました」

(しかし、彼女可愛いなぁ……ダメダメ俺には春菜が!)

「いえいえ、気になさらないでください。最上さんは今日お会い

 したあたりにお住まいなんですか?」

「そうですが。どうしてですか?」

「あぁ、突然不躾な質問ですみません。いやぁ、今日はあまりお時間

 もないとおっしゃってましたし。もし宜しければ、また近いうちに

 お会いしてお話させていただきたいと思ったものですから。どうして

 も私はあいつの事が気になってまして。如何ですか?」

「そのような事でしたら、一向に構いませんけど。実は私もあなたに

 お聞きしてみたい事がいくらかありますので」

「そうですか?それでしたら、早速ですが明後日は如何ですか?

 あぁ、失礼しました。どうも仕事柄話をてきぱきとまとめたり、

 次のアポイントとる癖がついてまして」

「気にしないでください。私は構いませんよ」

「本当ですか?」(俺は純粋に話がまた出来る事を喜んでるよな?)

「はい」

「有難うございます。では、明後日で今日と同じくらいの時間に

 先ほどの場所でという事でいいですか?」

「分かりました」

「ところで、最上さんは月9のドラマってご覧になられますか?」

「時々ですが」

「是非ご覧になられた方がいいですよ。何しろあのドラマからたくさん

 の事を学ばせてもらえますからねぇ」

(これって完全にあいつの受け売りだな?)

「そうですか。では見るようにしてみます」



「月9のドラマ」第6話「同じ穴のムジナ?」



二人は玄関へと入っていった。

女性は一瞬『ここはハードロック・カフェ?』

そんな印象を持った。

というのも玄関を入り左手の壁には木枠のガラス・

ケースに入った、ブラック・メープルのフェンダー・

ストラトキャスターが飾られている。そして、反対の

右手の壁にはチェリー・サンバーストのギブソン・レス

ポールが飾られているのだった。

そして、それぞれのギターにおそらく有名なギタリスト

なのだろう。ボディー部分にサインがされている。


彼はストラトキャスターが飾られている下の檜の香りが

漂うシュー・ボックスに靴を入れた。そして彼女に「どうぞ」

と言わんばかりに大げさに上がるようにと手招きをした。

二人は広い玄関間を抜けて、廊下の左側最初の部屋に入る。

そこは40帖ほどのリビング・ルームだった。

どれを見渡しても高価そうな家具や調度品ばかりだ。

彼は彼女を部屋の一番左奥にある応接セットの方へと

誘導し、4人くらいは十分に座れるほどの大きなソファに

座らせた。彼女の体が沈んでしまうくらい、ふかふかだった。

部屋の中央には巨大な液晶テレビがそれぞれ反対向きに

置かれていた。一つは応接セットから見れるように。

そしてもう一つは、ダイニング・テーブルから見れるようにと。

「何か飲まれますか?」

彼は彼女に問うた。

「いいえ、結構です。私はただ……」

「いや、そんな遠慮なさらなくっていいですよ」

彼女は『そういう意味じゃなくって……』と内心思いながら、

「いいえ、本当に結構ですよ。気になさらないでください」

「ビールでいいですか?まぁ、どうぞ」

「あっ、有難うございます」

「これ300円。本当に有難うございました」

「いいえ、そんな大したことではないので」

「ところで、どうして私にあいつの事を話しかけたのですか?」

「あぁ、それはきっとあなたも私と同じ穴のムジナなのかなぁと

 思ったものですから。きっと、あなたもあの人がどこかへ消えて

 いったんですよね?そうじゃないですか?」

「あぁ、そうですが」

彼は『同じ穴のムジナ』という意味が完全に理解できていなかった。

雰囲気はなんとなくは分かったのだが。

彼は電子辞書を引きたい気分だった。

第5話「動揺」

「月9のドラマ」第5話「動揺」


「突然不躾で申し訳ないのですが、宜しければ300円貸して

 いただけませんでしょうか?たばこを買おうと思ったんですが、

 小銭も千円札もなかったもので……」

宇藤はご丁寧にも自分のコムサの皮財布の札入れを彼女に見せながら

丁重に依頼をした。

「あぁ、勿論お返しいたしますので」

彼はのジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、そこから

自分の名詞を1枚抜き取った。

「これ、私の名刺です」

その女性は彼の言動から安心感を覚えたのであろう。ジャケットの

内ポケットからライトゴールドの長財布を取り出した。財布の中央に

シャネルのロゴが入っている。ファスナーを開け、300円を

取り出した。

「はい、どうぞ」

「どうも本当に有難うございます。いつもここを通られますか?」

「はい」

「それでしたら、明日ここでお返しするという事でよろしいですか?」

「別にそれくらい構いませんよ」

「いいえ、そういう訳にはいきません。明日も今と同じ時間にここで

 お返しいたしますので。宜しいですか?」

彼はそう言いながら、自動販売機からラークマイルドのロングを

体を折り曲げて取り出した。

「分かりました」

「では、有難うございました。そういう事でまた明日」

レクサスに乗り込みながら彼は彼女に念押しをした。

彼は車を走らせようとしている。

その時だった。

「きっとあなたもあの人がどこかに行ったんですね?」

その女性が彼にそう言ったように彼は聞こえた。

(はぁ?たしかに彼女は今そう言ったよな。どうしてだ?)

彼のレクサスは3メートル程進んでいたが、彼は

車を停め、あたふたと車の外に出た。

「ちょっと待ってください」

彼はその女性の背中に向かって、彼女を呼び止めた。

彼女は振り返り、

「何ですか?」と言葉を返した。

「すみませんが、今すぐに300円お返ししたいんですが」

「どうしてですか?」

「すみませんが、今から一緒に私の家まで来ていただけませんか?

 そこですぐにお返ししますので。私の家は近くです―ここから

 車で5分とかからないですから。時間はそんなに取らせませんので」

「でも、失礼ですが。私、知らない男性の方と車でご一緒なんかは

 出来ませんので」(それはごもっともだな)

「そうですね。勿論何も変な事しませんよ、神に誓って!ちょっと私の

 気が変わって、すぐに返したくなっただけですので。それでお返し

 したらすぐにまたここまでお送りいたしますので。あぁ、まだ不安

 で疑われるなら、私のオフィスに電話してください。先ほどお渡し

 した名刺に番号が書いてますので」

彼女は彼が話している間ずっと彼の顔、表情を見ていた。

彼があまりにも一生懸命熱弁していたので、彼女は少し可笑しく

なったのだろう。彼女の顔がほころんでいる。

「分かりました。一緒に行きますよ。ただあまり時間がないので。

 帰って夕食の支度をしないといけないので」

「大丈夫です、そんな時間は取らせませんので。そうしたら、

 乗ってください」

彼はレクサスの方へと小走りで向かい、助手席側のドアを

開けた。彼女は彼に『どうも。お邪魔します』というような

メッセージを顔の表情、動きだけで伝えた。


彼は彼女を呼び止めてからのこの短い時間―彼女に熱弁を

振るいながら―いろんな事を考えていた。

彼は彼女からどうして彼女が私からあいつが消えていった事

を知っているのかを聞きたかったのだが……それくらい彼は

生き肝を抜かれていた。

彼は車を走らせた。元々彼は結構安全運転をする方だが、

いつもより慎重に運転していた。道はかなりがら空きだった

にもかかわらず。

2号線を横断して、最初の辻を右に曲がると彼の自宅だ。

そこは袋小路のような全長50メートル、幅5メートル

ほどの通りで、左右に6件づつ家が立ち並んでいる。

どの家も立派な大きな家ばかりだ。彼の家はその通りの

右側2件目だった。彼の家もやはりかなり大きい。

ただ、彼の家だけが他の11件の家とはまったく異なり

別世界のようだった。そこだけが、異国の様相だ。

ギリシャのパルテノン神殿を思わせるようなつくりの

威風堂々とした外観だった。

彼はアメリカで確立された『フェデラル様式』の家を

注文建築したのだ。アメリカのホワイトハウスもこの

建築様式らしい。レンガ色の壁、高さ3メートルほど

ありそうな大きな玄関。玄関先の屋根を支える4本の

柱。どれもが彼のこだわりであり、お気に入りでもある。


彼は家の前に車を停め、リモコンでガレージのシャッター

を開ける。

「車をガレージに入れますので、降りてお待ちください」

彼は車をガレージにいれて、外に出てきた。

「お待たせしました。どうぞ、お入りください」

彼は彼女を部屋に招きいれようとした。

「いいえ、ここでお待ちしてますので」

彼女は顔と右手を同時に左右に高速運動をしながら

丁重に彼の申し入れを断った。

「でも、ここだと濡れますから。ほら!」

彼は彼女のジャケットを見ながらそう言った。

先ほどの自動販売機から彼の自宅に戻る途中で、

雨が降り始めていたのだ。

「ご心配はいりませんよ。すぐですから。さぁ、どうぞ」

彼は玄関の前に立ち、そこに設置されているセンサーに

指を置いた。どうやら指紋センサーのようである。

玄関の扉を開けて、彼は半ば強引に彼女を中へと入れた。

そして。。。









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