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タイトル: 養老孟司の<逆さメガネ>
筆者: 養老孟司
出版社: PHP新書(PHP研究所)
第一刷: 2003/08/25
面白い節:
都市化社会は、自然を「ないこと」にしている (p.26),
都市で働くときの原理 - 「ああすれば、こうなる」(p.36),
コントロールできるという錯覚 - 親子の根本的対立 (p.42),
団塊世代との世代的違和感 - 村社会と民主主義 (p.54),
日本社会はいまだに村の掟で動いている (p.57),
相互不信は誰の得にもならない (p.60),
都市生活は生老病死を見ない (p.70),
脳への出力と入力 - 知行合一と文武両道 (p.88),
現代社会の常識は「変わらない私」 (p.126),
人間の脳はわかり合うという共有化へ向かう (p.151),
なぜ若者の社会的価値がなくなったのか (p.153),
共同体か、機能体か - 一元論に偏ってはいけない (p.189),
「都市こそ進歩」という思想を変える - 脳化社会の歯止め (p.192),
哺乳類では、メスが基本 (p.201)
コメント:
大都会の渋谷の歯医者の息子が妹を関節でバラバラにする今日、
養老孟司の<逆さメガネ>の表扉にある『「世の中おかしくなった」
と誰もがいう。』という一文に否定的な見解をもつものはもはや少
ないのではないかと思われます。この本は、そんなおかしな世の中
の根本原因が『都市化』と『脳化社会』化であるということを気づか
せてくれ、主観的に考えるに、養老氏の指摘は本当に的を得ている
ように思われます。
養老氏の専門は医学の解剖学とのことで、人体をバラバラにする
専門家ということになる。しかし人体をバラバラにすることを専門
的な仕事にしてきた氏のこの本はなんと暖かみがあるのであろうか。
氏の書く文章には、本当に氏の人間に対する慈しみが溢れています。
人体をバラバラにすることを長年やってきた人間の人間観の一つが、
『知行合一』または『文武両道』というものなのであろう。脳への
インプットがあって、アウトプットがある。勉強で脳ばかり鍛えて
いてもだめで、鍛えた頭で体を使いなさい。人間は頭だけではない。
体も大事なのだ。そういう手とか足とか目とか鼻とか脳とか、学術
的には人体をバラバラにできるけれども、実際どこまでが手で、ど
こまでが足なのかを権威のある説なしに区別することは難しい場合
が多いのではないだろうか。
人間は秋葉原のフィギュアではないので関節では切っても切れな
いものなのだとわたしは思う。しかるに 2007 年の正月の食事をの
どが通らないものとしたニュースは、脳しか鍛えない教育の問題に
もあるようにわたしには思われます。そして養老氏のこの本を読め
ば、都市化至上主義という世界的宗教を崇拝することによる脳化社
会の実現による弊害が、端的にあらわれた出来事である、ような気
もしてきます。
ちょっと半ば強引に渋谷の怪事件とからめてコメントとしている
のですが、脳化社会問題だけではなく、<逆さメガネ>なるメガネ
をかけて医学なる学問を長年やってきた氏のこの本は本当におもし
ろいです。是非、おすすめいたします。
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