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先週の政界は茶番劇の第二幕だった。3日間に渡って民主党執行部は菅総理に退陣時期の表明を迫ったが
菅総理は拒絶、自公両党との合意も蹴飛ばして70日間の国会会期延長を強行採決して幕を閉じた。そして
菅総理は此処でも消費税増税、TPP参加に続く思い付きの持病を発症する。それが再生エネルギー特別
措置法なのだが、第一幕の目処では福島第一原発の冷温停止状態とか、被災地の瓦礫撤去とか、仮設住宅
への全員入居とか言っていながら、再生エネルギーについては全く触れていなかった。それが半月の間に、
是が非でも通したい法案の一番に躍り出る。本年度の予算執行中ではあるが国債を発行していない為、資金が
ショートする恐れが有るのだが、それを回避する特例公債法案など全く眼中に無い様だ。
この菅総理の姿勢に早くも財界から異議が出ている。米倉弘昌経団連会長は電気料金の値上げは生産拠点の
海外移転を加速すると牽制した。ソフトバンクの孫正義氏が再生エネルギーでの発電事業に参入する為、
定款を変更させたのとは好対照だったりする。正に新旧経営者の対決なのだが、新経営者と言える三木谷
浩史氏率いる楽天も経団連を退会した。表向きは方向性や哲学の違いとしているが、実際の処、電力業界を
保護しようとする経団連の姿勢が許せなかったらしい。
再生エネルギーによる発電された電力を固定金額で電力会社に買い取らせる制度の実現は、実は民主党の
マニフェストに記載が有るそうだ。其れ処か自民党のマニフェストにも記載されているらしい。また既に経産省が
関係各所の調整に乗り出しているなど、必ずしも菅総理のオリジナル政策では無い。またこの制度の実現を
推進する為の議員連盟、再生可能エネルギー促進法を早期成立を求める議員連盟には202名もの議員が
賛同を表明しているのだが、民主党主流派よりも反主流派の議員の参加が多かったりする。震災前、他国に
新幹線と共に原発を売りに歩いていた主流派に対する対抗措置の様相も感じられるだけに、此処でも政策より
政局の匂いが漂っていたりもするのだが、此処に菅総理が同調した事で更なるネジレと混乱を招きそうだ。
この法案、脱原発への第一歩として期待する国民も多い様だが、現実には逆行しかねない。それは電気料金に
起因する。再生可能エネルギーの内、バイオマスを除く自然エネルギーはいずれも発電量が自然条件に
左右され不安定だ。必然的に発電量が安定していて調節が可能な火力発電か原子力発電に頼らざるを
得ない。原子力発電は事故補償の積立金が新たにコストとして加わるだろうが、それでも火力発電コストよりも
安価だろう。日本社会が再生エネルギー発電でのコスト増と火力発電によるコスト増から来る電気料金の
値上げを、容認する姿勢を見せれば問題は無いのだが、今の風潮は電力会社に厳しく簡単に言い出せる物
ではない。また火力発電の燃料となるLNG、重油、石炭は輸入に頼らざるを得ないのだが、国際価格の変動は
激しく、場合によっては著しいコスト高に見舞われる可能性も否定出来ない。故に民間上場企業である電力
各社は、収益を確保すべく火力発電の割合を減らし、原子力発電での発電量を確保する経営方針を
取るだろう。誠に皮肉な結果なのだが、物事は総合的に進めて行かないと、望み通りには行かないという
好例かもしれない。
もう一つの懸念点はやはり日本経済への影響だろう。電気料金の値上げは消費税増税と同様、全国民に
負荷が掛かる。経済よりも国民の安全を優先する主張に対抗するのは難しい。しかし実際には消費が落ち込む
分だけ景気は低迷し、コスト高と不安定な電力供給を嫌って多くの生産拠点が海外に流出し、雇用機会が
失われる。更に問題なのはこの法案の成立で生まれる新たなビジネスが絶対に損をしない制度を基盤とする点
だったりする。再生エネルギーで発電された電力を固定料金で買い取るのだが、その固定料金は新規事業者の
初期投資額を順調に回収し、日々の運用コストを補い、幾らかの利潤を生み出せる価格に設定されるはずだ。
(でなければ誰も参入はしない。)確実に儲かる話、投資するだけの資産を持っている方々は、事業参入から
出資まで様々な形で関与し、利益を得る事だろう。一方、資産を持たぬ者は高額となった電気料金を支払い、
安全や安心を買ったと自分に言い聞かせるのだが、実は資産家の懐を更に温める事に手を貸しているに
過ぎなかったりする。正に富める者は蓄財を重ね、貧しき者は搾取され続ける資本主義の悪しき図式が
展開されると言えよう。
国民はこのバラ色に見える法案の真相を何処まで理解しているのだろうか。
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2011年06月26日
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