憂国烈士

政治はこの国をどこへ導き、社会は何を求めるのか。

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2011年08月

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今日、民主党の新役員人事が両院議員総会で承認された。昨日から内定人事は報道されているのだが、
改めて顔触れを見てみよう。
 
幹事長  輿石東参議院議員会長
慣例では幹事長は衆議院議員が就くものとされているが、異例の参議院からの登用、しかも議員会長である
輿石氏の起用は党内融和の象徴とも言えよう。トロイカ+1の鳩山氏、菅氏、小沢氏、輿石氏で、二人は総理
経験者、一人は党員資格停止では残る選択肢は一つしか無かった事になる。小沢グループでも鳩山グループ
でもない点も中立性を保つには重要、あえて参議院からなのも衆議院からでは不平不満が言い難いという
利点も有る。反主流派の大物議員が、党の要に就く事に反主流派としては異論は有るまい。これが噂に
上がった川端前文科相では抑える力が弱く、鹿野農相では代表選の遺恨がそのまま持ち越されたのは
間違い無い。
ただ輿石氏にも問題は有って、参議院議員故に衆議院の特に選挙区事情については詳しく無い。また選挙
其の物も落選経験が有り、昨夏の参院選も自民党新人に詰め寄られるなど、決して強い訳ではない。更に
政策に関して明るいという印象は無い。彼の口から政局の話を聞く事は有っても、政策の話を聞いた記憶は
無いと言って良いだろう。そしてあのルックス、野田総理共々、国民受けするビジュアルでは無い。これが何を
意味するかと言えば、選挙を戦う布陣には程遠く、総選挙は全く考えていないというメッセージが込められて
いると読んで良いだろう。
これは参議院の選挙制度改革を進めるに有効とされた人事にも見える。一般に参議院は衆議院からの指図を
嫌う。衆議院の優位性に対する反発が根に有ると思われるが、菅前総理が議員定数削減に言及した時も
西岡参議院議長は不快感を示した。参議院の一票格差は違憲状態に有り、この二年で選挙制度を大きく
改める必要に迫られている。其処に民主党のマニフェストに記載されている定数削減を盛り込む(野田総理も
代表選での演説で言及している。)には、輿石氏に旗振りをして貰った方が良いと判断していると推測出来る。
 
幹事長代行  樽床伸二元国対委員長
昨日迄の内定人事では幹事長代理だったが、代行に昇格させた様だ。やはり輿石氏では衆議院の勝手が
分からないという事になったのだろう。樽床氏は鳩山内閣退陣後の代表選に小沢系議員の応援を得て
出馬したが、以降は自前のグループを結成し、小沢氏とも一定の距離を取る中間派とされている。本人は
入閣希望だったと思われるが、今回もその思いは叶わなかった。樽床氏も松下政経塾出身でかつては民主党
七奉行の一人だったが、他の6人は全員、閣僚を経験する中、未経験。本人が焦るのも無理は無いが、その
意味ではこの人事、問題が無いとは言い切れない。彼もまた郵政選挙で落選するなど、選挙は強い方では
無い。やはり総選挙は野田総理の念頭には無い様だ。
 
政調会長  前原誠司前外相
民主党は政権交代後、小沢氏の意向により政策調査会を廃止した。これは自民党の様に族議員を輩出しない
為の措置だったのだが、鳩山内閣の政務三役との連携が上手く行かず、また幹事長室が巨大な権力を握って
しまった為、政府入りも幹事長室入りも出来ない国会議員は政策の検討、決定に関わる事が出来す、党内に
不満を溜め込む結果を招いてしまった。其処で菅内閣では政策調査会を復活させ、調査会長を国家戦略
大臣が兼務する制度に変更した。が政府が決定した政策を連絡する機関に過ぎなかったので、党内に異論が
噴出していた。今回は従来型の党内で政策を立案し、政府に答申するスタイルに改められ、政調会長と閣僚の
兼務も解かれ、専任とした。また政調会長の承認無しには各政策の閣議決定が出来ない事になり、以前の
政策決定プロセスの内閣一元化をした大統領スタイルから、党の意向を強く反映し内閣独自では政策決定が
出来ない様に改められ、政調会長の権限が強化された。其処に前原氏を持って来たのは、前原氏も代表選の
公約としていた衆議院の一票格差の是正と議員定数の削減を行わせたいからか。彼の外国人献金問題に
関しては自民党が引き続き追及の構えを見せたため、各委員会に出席しなければならない閣僚には据え
難かったとも言える。しかし彼を要職に起用する事で、代表選に出馬した他の候補者も要職に就けない事には
党内融和を体現出来ないのだが、三党合意の見直しに言及した海江田氏は閣僚に就任して委員会の答弁は
無事に済むのだろうか。
 
国対委員長  平野博文元官房長官
官房長官経験者として実務能力を評価しての人事と思われるが、一方で民自公の三党合意を巡って、民主
党内の主流派が取決めた合意に反主流派が反発した経緯を踏まえ、反主流派である鳩山前総理の側近を
交渉役として矢面に据えて責任を応分しようする狙いが有るのだろう。自分の身内が関与していれば、批判の
声はトーンダウンせざるを得ない。野党の頑強な抵抗の情報も反主流派に入り、自分達が主流派で衆参で
過半数を得ていた頃とは様相が違う事を、身に染みて分からせようとする作戦を平野氏は理解しているの
だろうか。(そもそもねじれ国会になった責任は菅前総理に全て有るのだが。)
 
要職適齢期の国会議員が民主党には少ないので、段々、使い回し人事になって来て新鮮味が無くなって
しまっているのだが、閣僚人事では初入閣組が出て来るのだろうか。

男の意地

前原氏が民主党代表選に出馬表明をする前、前原氏に協力要請をした野田氏はこう言われた。「あなたで
勝てるか。」この言葉は野田氏と野田陣営を奮い立たせたに違いない。
 
今日、行われた代表選、まずは5人の候補者による最後の立候補演説だった。届出順に前原氏、馬淵氏、
海江田氏、野田氏、鹿野氏と持ち時間15分で行われる。前原氏と海江田氏は原稿を読み上げ、馬淵氏、
野田氏、鹿野氏は諳んじての演説、此処はやはり実質的には日本の総理を選出する選挙、原稿無しで語って
欲しかった。海江田氏と鹿野氏は現況の諸問題を滔々と語るのだが、相手は国会議員、既に理解はしている
だろうし、彼等はそれぞれ経産相と農水相、本来ならば問題よりも実績を語るべき処なのだが、それが聞ける
はずも無かった。馬淵氏と野田氏は生い立ちや政治家を志した初心を語った。この手法、かつて菅氏と
前原氏が代表の座を争った際に前原氏が用い、土壇場の投票会場での逆転を齎したとされている。確かに
聴衆は引き込まれたろう。二人の違いは馬淵氏が田中角栄氏の総裁選勝利と実績を讃える論調だったのに
対し、野田氏は浅沼稲次郎刺殺事件を取り上げて命懸けの政治を印象付けた点。田中氏が整備した制度や
成立させた法律は今日の日本を形成してはいるのだが、破綻が懸念される社会制度や問題視されている特別
会計など、現在では修整すべき点が多い事は誰もが認識している。田中氏の愛弟子の小沢氏や愛娘の
真紀子氏は喜んだろうが、会場内には要らぬ憶測をする者も居たろう。野田氏は落選時期の苦労や支持者の
温かい支援についても語る。これも会場の国会議員には共感を呼んだろうが、決め手は総選挙はしないだった
かもしれない。前原氏は外国人献金問題について詫び、政権を離れてから発生した大震災に対し、一与党
議員の立場としての限界を感じる共に、今迄、政権入りをしていない民主党議員の気持ちが理解出来たと
述べたが、何処迄、彼等の心にその言葉は届いたのだろうか。
 
そして投票が行われる。党員資格停止者9名を除く398名の内、横路衆議院議長、西岡参議院議長が投票を
辞退し、他に1名の辞退者(今朝、掛けゴルフを認めたと報じられた横峯良郎参議院議員だろうか。)がおり、
395名の投票によって争われた。過半数は198票だ。
海江田万里  143票
野田佳彦    102票
前原誠司    74票
鹿野道彦    52票
馬淵澄夫    24票
1回目の投票で過半数を目指した海江田氏だったが届かなかった。そして野田氏が驚異の追い上げを見せる。
前原氏の得票数を上回り、3桁の得票数に乗せて来た。一方、一時は二位もと言われた鹿野氏は四位に
終わり、馬淵氏は推薦人に4票(横峯氏が推薦人なので5票か。)、上乗せしただけだった。
 
規定により上位2名による決選投票が行われる。結果は、
野田佳彦    215票
海江田万里  177票
無効        3票
となり、野田氏が新代表に選出された。野田氏と前原氏の間で決選投票の際は連携をする申し合わせは
成されていた。前原氏が上位の場合に野田陣営が素直に応ずるのか疑問視する声も有ったが、野田氏が
上位だった事でその問題は解消された。実はこの二人の連携に鹿野氏も加わっていた。一時は党内の
主流派と反主流派の対立激化を嫌う人々が中間派の野田氏に集約されて二位の差を確保するとの情勢
分析が拡まり、海江田陣営では決選投票で鹿野氏へ主流派も加わって負けるとの分析が成され、切り崩し
易い鹿野氏の票を引き剥がして、初回の投票で過半数を獲得する作戦を展開した。小沢派の山田正彦
前農水相らが実際に抜かれて鹿野陣営は激怒、かくして二位、三位、四位連合となった。
 
今回の代表選は如何に人の怒りを買わないか、がポイントでも有った。仙谷氏は小沢氏に前原氏への支持を
要請したが、彼等に排除された小沢氏は色良い返事をしなかった。菅氏は仙谷氏に菅下ろしの行動を取られた
ので、前原氏ではなく野田氏を支持した。海江田氏は小沢氏の代わりに皆の怒りを買って代表選に敗れた、
次は党役員人事と閣僚人事、今度は野田代表が怒りを買ってしまうのだろうか。

出揃った候補者達

昨日、特例公債法案と再生エネルギー法案が成立し、菅総理は民主党両院議員総会で党代表の辞任と代表選
後の総理辞任を正式に表明した。これを受けて先の前原前外相の出馬宣言に続き、野田財相、海江田経産相、
鹿野農水相の現役閣僚と馬淵前国交相が代表選への出馬を表明した。そして今朝、正式にこの5名が立候補を
届け出た。各者の推薦人は以下の通り。
 
前原誠司
衆議院
古川元久〈前原G〉、渡辺周〈前原G〉、小宮山洋子〈前原G〉、細野豪志〈前原G〉、山井和則〈前原G〉、
泉健太〈前原G〉、下条みつ〈羽田G〉、高井美穂〈前原G〉、菊田真紀子〈小沢G〉、小川淳也〈前原G〉、
城井崇〈前原G〉、柚木道義〈菅G〉、阿知波吉信、井戸正枝、黒岩宇洋、斉藤進、高橋昭一、仁木博文、小原舞
参議院
小川勝也〈鳩山G〉、林久美子、徳永久志〈前原G〉、中谷智司〈前原G〉、松浦大悟
出馬表明時は本命と目された前原氏だが、意外に支持は拡がっていない様子だ。推薦人も自身のグループ
議員が目立っている。
馬淵澄夫
衆議院
滝実、高山智司〈小沢G〉、長安豊、石井登志郎、磯谷香代子、大西健介、櫛渕万里、阪口直人、杉本和巳、
高井崇志、高野守、高邑勉、玉置公良、福島伸享、宮崎岳志、吉川政重
参議院
ツルネン マルテイ〈菅G〉、藤末健三〈菅G〉、前川清成、横峯良郎
同じ中間派の樽床氏が出馬辞退により、20人の推薦人の目処が付いたと言われている。当初、中心的支持者
だった田村謙治氏は、所属する前原グループで前原氏が出馬すると成るや、馬淵氏の下を離れて行った。
海江田万里
衆議院
赤松広隆〈横路G〉、小沢鋭仁〈鳩山G〉、東祥三〈小沢G〉、川内博史〈鳩山G〉、原口一博〈鳩山G〉、
松野頼久〈鳩山G〉、小宮山泰子〈小沢G〉、中塚一宏〈小沢G〉、山花郁夫〈横路G〉、糸川正晃〈小沢G〉、
辻恵〈小沢G〉、中川治、福田昭夫、岡本英子〈小沢G〉、奥野総一郎〈小沢G〉、初鹿明博〈鳩山G〉
参議院
小川敏夫〈菅G〉、桜井充〈菅G〉、尾立源幸〈鳩山G〉、佐藤公治〈小沢G〉、武内則男、谷亮子〈小沢G〉、
谷岡郁子〈小沢G〉、藤田幸久〈鳩山G〉、安井美沙子
鳩山グループ公認候補を争った小沢鋭仁氏、原口氏の名前も有り、小鳩連合の候補者らしい構成だが、
一部は鹿野氏に流れてしまっている様だ。未だに号泣事件が尾を引いているとも言われ、TPP参加反対派が
多数を占める反主流派を、TPP推進派だった海江田氏が纏められるのだろうか。
野田佳彦
衆議院
藤村修〈野田G〉、荒井聰〈菅G〉、中川正春〈羽田G〉、武正公一〈野田G〉、牧野聖修〈鳩山G〉、
近藤洋介〈野田G〉、手塚仁雄、松本大輔〈野田G〉、山口壮〈羽田G〉、大串博志〈野田G〉、三谷光男〈野田G〉、
森本哲生〈川端G〉、打越明司、江端貴子、岸本周平、柴橋正直、橋本博明、花咲宏基、森岡洋一郎、
森山浩行、谷田川元、山田良司
参議院
広田一〈野田G〉、蓮舫〈野田G〉、長浜博行〈野田G〉
盟友である前原氏の出馬で支持者が被る野田氏、一時は推薦人の確保も怪しいとされたが、菅路線を継承する
部分が他候補に比べて多いので、菅グループからの支持が入った模様だ。
鹿野道彦
衆議院
大畠章宏〈鳩山G〉、池田元久〈菅G〉、小林興起、末松義規〈菅G〉、筒井信隆〈菅G〉、石田勝之、
大島敦〈鳩山G〉、中山義活〈鳩山G〉、松崎公昭〈羽田G〉、吉田公一、楠田大蔵〈羽田G〉、篠原孝〈菅G〉、
田名部匡代〈小沢G〉、佐々木隆博〈横路G〉、橋本清仁〈小沢G〉、川村秀三郎、小山展弘、樋口俊一、和嶋未希
参議院
白真勲〈菅G〉、前田武志〈2〉、増子輝彦、大島九州男〈菅G〉、大野元裕、舟山康江〈菅G〉
特筆すべきは鳩山グループ前会長の大畠氏と鳩山前総理の側近である中山氏が名を連ねている点か。逆に
当初、出馬を熱心に促した山田正彦前農相や、生方幸夫氏の名前が挙がっていないのは、剥がされてしまった
結果なのだろうか。
 
党内最大グループを率いる小沢元代表は鳩山前総理と歩調を合わせ昨夜、海江田氏への支持を表明した。
しかし二人共、意中の人物では無かったらしい。藤井元財相への打診を断られた小沢氏は、西岡参議院
議長を思い描いたが周囲に参議院議員である事を理由に止められたという。一方の鳩山氏も自らが率いる
グループに所属する海江田氏と小沢元環境相から一任を取り付けたものの、彼等に代わる第三の候補として
原口前総務相を小沢元代表に打診したが、経験不足を理由に難色を示した為、断念したという。鹿野氏に
関しては支持を表明すると中間派の票が逃げるので止めたとする説と、前原包囲網を敷く為に立候補断念を
鹿野氏に持ち掛けたが、高圧的だった為、鹿野氏の反発を買ったとする説が有る。(鹿野氏は新進党の
党首選で小沢元代表と競った経歴が有り、未だに遺恨が有るのかもしれない。)藤井氏79歳、西岡氏75歳、
小沢一郎氏69歳、鹿野氏69歳、海江田氏62歳、小沢鋭仁氏57歳、小沢元代表は1年後に出馬する事を前提に
出来るだけ高齢の候補者を擁立したかっただけなのかもしれない。
 
各候補者の推薦人も各グループ入り乱れる代表選、更に民主党には80名にもなる無派閥議員が所属しており、
彼等が誰に投票するのかは、全く読めない状況だ。過去に行われた代表選では投票前演説で前原氏が菅氏に
競り勝った例も有る。各人の提言する政策(各者の政策が分からず議論も行われていないと評する向きも
有るが、民主党のHPに各者の提唱する政策がアップされたので参照して頂きたい。)や演説、また実行力の
有無や覚悟の程を勘案して次期代表、次期総理を決定して貰いたいものである。

本命出馬で方針転換か

野田財相鹿野農水相海江田経産相馬淵前国交相小沢元環境相樽床元国対委員長と候補者が
乱立し、グループの求心力を高める為に民社協会(川端グループ)から川端前文科相(本人は固辞して
いるが。)、リベラルの会から平岡内閣府副大臣まで出馬を探り始めたと言われる民主党代表選、同じく
グループから候補者を擁立していなかった凌雲会(前原グループ)から前原前外相が出馬を遂に出馬を
表明した。此処に来ての党代表経験者の出馬表明に関係者は戦略を練り直す事となった。
 
一番、影響を受けるのは前原氏と盟友関係に有った野田氏。当初、前原氏は外相辞任の原因となった外国人
献金問題が有り、野田氏の応援に回るつもりでいた。しかし野田氏は大連立に突如、言及したものの自民党
からは拒絶される始末、また来年度からの復興増税も他の候補が全員、反増税に回るなど、党内の支持
拡大が出来ず、むしろ前原グループの若手議員にすら批判されるに至り、前原氏は代表選の勝利も怪しく、
自らのグループの結束も乱す恐れの有る野田氏を諦め、若手議員からの主戦論に応ずる形で出馬を決意
している。国民的人気が高く、他のグループや何処のグループにも所属しない議員からの支持も集め易い
前原氏と、自分が率いる花斉会よりも規模の大きい凌雲会の票を失った野田氏としては危機的状況となった。
凌雲会と花斉会の双方に所属する議員もおり、何とか推薦人の20名を集めたとして、その後の拡がりは
期待薄、今更、出馬を取り止める訳にも行かず、かと言って代表選での惨々たる得票数では、今後の政治生命
すら脅かしかねない。
 
ほくそ笑んでいるのは小沢氏か。主流派の分断工作として藤井元財相を担ぎ出そうとして失敗し、次の手を
考えていた矢先の出来事だった。以前、経験と知識の有る人物こそふさわしいとしていたのは、鹿野氏を念頭に
置いた発言ではなく、藤井氏だった事になる。小沢氏と藤井氏とは自民党離党から民主党合流まで苦楽を
共にした仲だったが、政権交代を目指す総選挙前に発覚した小沢氏の政治とカネの問題で、代表辞任を
藤井氏から勧められてからは関係が冷え込み、鳩山内閣での予算編成においても対立関係が生じている。
その様な両者の関係を除いても、藤井氏は元々、高齢を理由に一時は政界引退を表明した身、当時の鳩山
代表に乞われて政権交代選挙に比例単独候補として当選、財相に就任したが予算編成の激務で体調を崩し
辞任、菅内閣でも官房副長官に起用されたが、震災発生後の激務に耐えられず、総理補佐官に退いている。
とても総理の激務に耐えられる体ではない事は、分かり切っていたはずなのだが。
 
小沢氏の元には馬淵氏、海江田氏、小沢鋭氏、鹿野氏が協力要請に訪れており、この小沢詣を自民党の
石破政調会長は20年前と何も変わっていないと批判した。20年前とは海部内閣退陣に伴う総裁選で、候補者の
宮沢喜一氏、三塚博氏、渡辺美智雄氏を小沢氏が事務所に呼び出し、面接した事を指しているのだが、実は
当時とは事情が大きく異なっている。20年前の総裁選での三氏はいずれも派閥の領袖で、推薦人は集められて
いて、竹下派の動向で総裁選の結果が左右される状況に有った。今回の四氏で推薦人が確保出来ているのは
鹿野氏のみ、これには小沢氏も内心、落胆しているに違いない。推薦人の貸出から面倒を見なければいけない
状況は、彼等を小沢氏のコントロール下に置いたとも言える。小沢氏の元をまだ訪れていない樽床氏も自身が
率いる青山会には小沢系議員が多数、所属しており、実際に出馬ともなれば小沢氏にお伺いを立てなければ、
推薦人の目処は立たない。彼等5人の反主流派、中間派を束ねて始めて主流派の前原氏に勝利する事が
出来る以上、事前の候補者調整は欠かせない事になる。まずは前原氏と野田氏が候補者を一本化しない様に、
複数の候補者が立候補すると思わせておかなくてはならない。そして立候補の受付には一人だけが訪れ
(おそらく鹿野氏の役回りになると思われるが。)、主流派2人と中間派・反主流派1人の代表選に持ち込み、
決戦投票で主流派連合が結成される前の一回目の投票で過半数を一気に奪う様な戦術を、小沢氏は描いて
いる事だろう。
 
当然、その様な戦術は同じ穴の狢である仙谷官房副長官が見抜いている。前原陣営は如何なる手を打って来る
だろうか。狐と狸の化かし合い、政権交代を経ても総理の座を奪いあう姿は美しい物ではない。

主役無きレース

民主党議員を欺いてまで総理の座に執着心を見せていた菅総理、意外にも簡単に辞意を表明した。普通に
解釈すれば退陣条件の三法の目処が立った為と言えるが、まだ成立した訳ではないし、郵政見直し法案も
亀井国民新党代表から突かれて審議入りするので、まだまだ波乱要素は残っている。小沢氏を中心とした
集団離党により、政権与党として衆議院で過半数を確保出来なくなる恐れが出て来て観念したと言うのも、
菅総理の何が何でもとする意欲の前には障害でも何でも無かろう。同様に反主流派の海江田氏ではなく、
主流派の野田財相の辞意表明も最悪、閣僚メンバーを全て菅グループで占めてしまう策も有るので、菅総理の
ショックを誘ったとも思えない。残るは唯一つ、例の二つの献金問題だ。外国人から献金を受けた件は、返金の
際に受領した領収書を未だ国会で提示出来ていない。これでは返金したという事実そのものが怪しくなって
来ても仕方無い。更に市民の党への献金だが、こちらは菅総理の政治資金管理団体である草志会のキャッシュ
フローを時間軸で追って行くと、保有資金額以上の献金をした時期が有る事が判明した様だ。出所不明の
資金が混ざっていた事になる訳で、こうなると小沢氏の土地購入立て替え払い金と同様、怪しいお金が存在する
政治とカネの問題となる。菅総理は政治とカネの問題で小沢氏を非難し続けたが、かつて年金を収めて
いなかった自民党議員を未納三兄弟と揶揄しながら自身の未納も発覚し(後に役所の事務手続きの不備と
判明するのだが。)、頭を丸めてお遍路に出た苦い経験が有る。今回の献金が明るみに出れば、お遍路如き
では済まないと判断して、追及を逃れる為に辞意表明に至ったのではなかろうか。
 
菅総理の辞意表明を受けて、ポスト菅レースがスタートした訳だが、顔触れは二ヵ月前の6月と変わっていない。
仙原幸彦の主流派は予定通り、仙谷氏、前原氏、枝野氏が辞退して野田氏が出馬表明した。(前原氏の動向が
曖昧なのは、例の外国人献金問題での世間と自民党の反応を伺っている様に見える。本来ならば禊として
一度、総選挙を経たい処なのだが。)問題はその野田氏が増税か否を代表選の争点とする処までは良しと
して、大連立まで持ち出して来た点だ。代表選は総理を選ぶ選挙、同様だった自民党の総裁選ではお金と共に
ポストの空手形が飛び交った。ポストの半分近くを他党に譲り渡す大連立では、民主党の確保するポストも
半減し、発行出来る空手形も限られて来る。次の総選挙では下野がほぼ確定の民主党において、大臣病に
罹患した患者の方々には到底、受け容れられる方針では無いだろう。それでなくとも主流派の面々は民主党の
主要政策を自公両党の求める儘に取り下げてしまった事に、反主流派ではない中間派にも不満は拡がって
いる。その様な党内の空気を選挙巧者の小沢氏が読めぬはずが無い。鹿野氏、樽床氏、馬淵氏、いずれも
中間派の代表候補者だが、彼等を有効的に利用するだろう。本命は69歳の鹿野氏、他の候補者よりも年配で、
1年後の代表選に出馬予定の小沢氏としては世代交代をさせない事が重要で有り、元自民党清和会所属だけ
あって野党との人脈も期待でき、農水相、総務庁長官経験者の閣僚経験も他の候補者を上回っている。そして
樽床氏と馬淵氏は共に元野田グループ所属議員、野田氏の下を離れた経歴は、野田氏の足元を切り崩すには
貴重な戦力となろう。候補者乱立となれば第一回投票では誰も過半数を得られず、一位と二位の候補者による
決選投票となるが、二位、三位、四位連合の根回しにも抜かりは無い。
 
小沢鋭仁氏は鳩山前総理に睨まれているので潰されるかもしれない。当初の鳩山氏の政界引退方針から、
新たなグループを立ち上げたのだが、鳩山氏の引退撤回に伴い不協和音を奏でている。グループ内の原口
一博氏が日本維新の会を立ち上げて対抗しようと試みたが、橋下大阪維新の会とも距離を置かれ、党内の
支持も集まらず頓挫、鳩山氏はこれも同じグループの海江田氏に白羽の矢を立てたのだが、東京消防庁
職員への処分発言、委員会における自身への辞任追及での号泣、菅総理ではなく自らが指示したとする
経産省事務次官、資源エネルギー庁長官、原子力安全・保安院長の引責辞任が実は定期異動に伴う勧奨
退職で、退職金の1千万上積みが発覚、原発再稼働に関する混乱の責任を取って辞任するはずが辞め時も
見誤った海江田氏に総理の資質は感じられず、党内の支持も集まらない。結果、鳩山氏は資金力を以って
鋭仁氏の20人の推薦人を切り崩す事になるだろう。
 
野田氏と鹿野氏の勝負に成りそうな気がする今回の代表選だが、主役で有るべき国民は今回も不在だ。

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