不況と景気循環

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私は、『日本を貧しくしないための経済学―ほんとうにだいじなお金の話』(ナカニシヤ出版、2015年)で、こう述べた。

不況とはまことに不可思議な現象である。不況におちいると、一方に売れない商品の山、他方に失業と貧困という、何とも奇妙な対極的現象に我々は悩まされる。

多くの労働者・サラリーマンはリストラされ、本人と家族は地獄の苦しみを味わう。もちろんお金をもたないから、あまっている商品を買うことはできない。

子供ならば、あまっているものを足りないところにまわせば、と単純に思ってしまう。しかし、我々はこの単純な解決策をとることはできない。これは、お金が支配し、お金を増やすことが支配している世の中の「掟」に反する。企業が利潤抜き、損得抜きで、みんなに自慢の製品をタダで配れと言うようなものだ。我々の社会が利潤追求から成り立つ資本主義であるかぎり、この単純な解決策はとれない。

 景気循環と不況は、個々の企業の力ではどうしょうもない。企業はリストラに励み、個人消費を減らして、自分の首を自分で絞めるだけである。そして不況の底で経済のダイエットが進むのを見ていることしかできない。賃金と利子率の低下、在庫の整理など新たな景気循環に向かう条件が整うのを待つことしかできないのである。

 というわけで第二次大戦後、資本主義社会は、需要不足や過剰生産の処理を国家に委ねた。いわゆるケインズ政策の登場である。ケインズ政策は、国家が財政支出の拡大によって需要を創出し、大量の売れ残りを処理し、景気を刺激する(同上、110−111頁)。

 しかし、このケインズ政策も、財政赤字が膨張することによって、行き詰る。日本では、1970年代以降財政赤字を急増させてきた。そして財政危機が生じている。日本は、国だけで現在約1000兆円の借金を抱えている。財務省によると、2015年3月末時点で、国債や借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が10533572億円に達した。

 この巨額の借金の前に、財政政策の手詰まりが生ずる。こうして、アベノミクスので、「第一の矢」として、日銀による「金融の異次元の量的緩和」が実行された。つまり、金融政策に期待したのである。さらに「マイナス金利」が導入された。が、あまりうまくいっていない。「マイナス金利」のもとで円高が進み、株価の下落が生じている。世界は、またしても不況に向かってまっしぐらに進んでいるように見える。
  私は、『日本を貧しくしないための経済学―ほんとうにだいじなお金の話』(ナカニシヤ出版、2015年)で、こう述べた。

 「経済というものはいったん良い方向に転ぶとますますよい方向に向か」(101頁)い、「いったん悪い方に向かうとますます悪くなっていく」(105頁)と述べた。

 つまり良循環と悪循環がなされる。これが景気循環の波を形づくるのである。

 自分で言うのは差しさわりがあるが、この本は、「知の宝庫」である。しかも、誰にもわかるようにと多大な努力をしている。そして、世の中の本質をも深く説明しようとしている。森永卓郎氏は、その書評で、「この本を過半の国民が読んでくれれば、日本の経済社会は、正しい方向に進路を転換できるだろう」とまで述べている。

 と、臆面もなく自分の本を宣伝することから敢えて始めたが、まさに「現在の世界景気の悪循環」が見られている。経済というものは、様々な要因が絡まり、そしてこれらの要因がつながっている。そして、このつながりが悪い方に向かっているのである。

私の本では、また、EUと中国について、次のようにも述べている。

 「EU2012年に首位をアメリカに譲りわたしたものの、これまで中国の最大の輸出先をなしてきた。だから中国はEUの経済動向の影響をもろに受ける。このEU2010年から繰り返しユーロ危機にみまわれてきた。

 この危機を退治せんとばかり、ドイツの女性首相メルケルの旗振りのもとに、EUで過激とも思われる財政赤字削減策が採用された(20131月に発効した「新財政協定」)。厳しい財政削減政策をとってきたEU2012年、2013年と2年連続マイナス成長におちいった。ギリシャ、スペインでは若者の2人に1人が失業者であるという深刻な不況にみまわれている。2014年もEUは景気後退から脱しないだろうと言われている。

 EUのこの景気後退は、中国をはじめとしたアジア主要国のEUへの輸出の減退をもたらした。これは、最近において中国経済が成長の大幅な減速におちいった理由の一端をなしている。現在の中国では不動産バブルが話題になっている。このバブルが破裂したら、中国への経済依存が高い日本は、深刻な経済的打撃を受けるだろう」(173頁)。

 つまり、EUは「超緊縮財政」に走っている。この「超緊縮財政」は、スティグリッツも批判しているが、誤っている。ただタイミングの悪い景気後退をもたらしているだけだ。

 失業の増大と生活悪化に、EUの中では、国民の抗議の声が高まっている。まずギリシャ、つづいてポルトガル、スペインと反緊縮派が選挙で勝利し、緊縮派の政権がくつがえった。イギリスでは、スコットランドの独立の動きは、「反緊縮財政」と連動している。

 EUの景気後退は、貿易を通して中国と新興諸国の経済悪化をもたらした。「中国の輸出と輸入を合わせた2015年の貿易総額は、ドルベースで前の年と比べ8%の減少となり」6年ぶりに前年割りした。EUとの貿易額は、8.2%の減少を示している(TBS<JNN>, 113()1715分)。

  輸出が引っ張ってきた中国の景気も減速した。201510月、以前は毎年10%台の高度成長をとげていた中国の201579月期の実質GDPは前年同期比で6.9%の伸びとなっていると発表された。実際には3%台であるという声もある。中国の経済減速は、そのバブルの崩壊と結びついた。

 中国の経済減速の原因は、これだけではなく、内部的要因もあるのだろう。しかし輸出減少が大きな原因なことは確かだ。輸出減少にしても人件費の上昇などの要因も付け加えられるが。

 EUと中国の経済減速は、新興国の経済不調をもたらした。すでにアメリカの「利上げ」以前に新興国からのぼう大なマネー流出が生じていた。

 世界経済を牽引していた中国と新興国の経済減速は、資源価格の下落とりわけ原油価格の下落をもたらした。これはアメリカのシェールオイルの増産などとあい絡んでのことである。

 今月112日のニューヨーク原油先物相場は一時、約12年1カ月ぶりに1バレル=30ドルの大台を割った。この原油安への不安は、13日のニューヨークのダウ平均株価の36481ドル安をもたらした。

 昨日496.67円高となりようやく年初以来の連続安から脱却した日経平均は今日はどうなるのだろうか?
きのう19日は、日経平均株価が210.63円あがり、19,859.81円となりました。株価は2万円に接近しており、2万円を超えるかどうかが、投資家の関心をなしています。
ただ日経ニュース(2015/11/1915:35)は、こう述べています。

「米国の早期利上げ観測を背景に円安が進み、海外勢中心に買いが膨らんだ。ただし、足元の上げ相場のけん引役は海外ヘッジファンドによる株価指数先物買いとの見方がもっぱら。9月末につけた直近安値からわずか2カ月で一気に2万円近辺まで戻したこともあって警戒感は根強く、いつ「手のひら返し」の売りに襲われるか戦々恐々とする投資家が多い」。

 要するに日経平均株価は外資にいいようにもてあそばれ、日本の投資家はそれにちょうちんでのっているが、ちょっと及び腰というところでしょうか。

 株価というものは、みんなが上がると思って買えば上がります。だから、経済実体から離れてマネーゲームが展開され、バブルが生じるのでしょうね。

 日経平均株価2万円期待がふくらむ中、あえていいますが、私は、今の日本は、軽くて済むかどうかはともあれ、不況だと思います。

 これまで私は、日本が「景気後退局面」に入っていると述べてきました。

……個人消費の落ち込みもあり、民間日本経済研究センターが11月12日に発表したエコノミスト41人による民間予測では、今年79月期のGDPは、年率換算0.13%のマイナスである。46月期につづいての連続マイナスである。」

 内閣府が1116日に発表した「201579月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減だった。46月期(年率換算で0.7%減)から2四半期連続のマイナス成長となった」(日経新聞、2015/11/16 8:50)。

政府の速報値は、民間予測より悪いですね。個人消費の点では、79月期は0.5%増加したということで、明るい材料ととらえる向きもあります。が、消費税導入前の2013年の79月期に比べれば、実質2.4%もの大幅減少となっています。

個人消費の落ち込みと伸び悩みによって売れ残りが生じ、在庫が積み上がります。企業は、売り上げ増を期待できないから、設備投資を控えます。こうして、典型的な不況が生じます。

日経新聞は、こう伝えています。

「……設備投資は1.3%減と、2四半期連続のマイナスだった。企業収益は過去最高水準で推移しているが、設備投資への意欲は高まらなかった」。

安倍首相は、株価高と大企業の最高水準の収益を誇らかに語ります。しかしかつての輸入物価高と消費増税(これらの効果は今でもつづく)によって個人消費が落ち込んだ。大企業は、最高水準の収益を内部留保でためこみ、マネーゲームか海外で使うしかない。国内の設備投資が落ち込む。かくして不況となります。

日本にとって不気味なのは、企業が300兆円を超える内部留保を抱えているので、銀行から資金の借り入れをあまりしないことである。その結果、日銀が金融の「量的緩和」をやって民間銀行にカネをドボドボ投入しても実態的にはあまり効果がない。

日銀の中に国債と民間銀行の当座預金(「ブタ積み」)がたまるだけである。わたしは、日銀の国債購入額と「ブタ積み」額が並行して上昇していくグラフをかつて示した。まるで、日銀の中におカネからなる湖、おカネを満々とたたえるダム湖ができたようである

40年経済学をやってきて、私は、こんな不気味で奇妙な現象は見たことも聞いたこともない。
2015年における景気の動向について、政府は、ずっと「緩やかな回復過基調がつづいている」という判断を示してきた。しかしそのトーンも変わってきている。

政府は、悪いデータが出てくる中で、8月の「月例経済報告」では「このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復過基調がつづいている」に景気判断を修正した。

しかし、悪いデータが次々と出てくる。政府は、9月の「月例経済報告」では、「このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復過基調がつづいている」に判断を修正した。

10月の「月例経済報告」では、政府は「このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調がつづいている」に判断をさらに修正した。

トーンを落としてきているが、政府は、相変わらず景気が「緩やかな回復基調がつづいている」という希望的観測をつづけている。

これに対して、私は、912日のブログで、こう述べた。
大企業が過去最高の利益を上げたという報道がなされ、日本経済があたかも調子がいいような錯覚が生じた。他方では、労働者・サラリーマンの実質賃金は減少し、中小企業は輸入する原材料のコスト上昇に苦しんだ。」

個人消費は相変わらず落ち込んでいる。46月期の個人消費は、実質マイナス0.8%であった。

日本経済をこれまで牽引してきた輸出も46月期には、マイナス4.4%に落ち込んだ。

その結果もあって、今年46月期の日本の実質GDPは二次速報値でも0.3%(一次速報値、−0.4%)、年率で換算すると1.2%と大きく落ち込んでいる。」

私は、結局、こう結論した。
 「個人消費・設備投資・輸出と三拍子そろって悪い。経済学的に見ても景気後退の典型的パターンだ。」

 その後、悪い数字が次々と出てくる。
中小企業の景況指数は、949%、1048.7%と落ち込んでいる。つまり、中小企業の中では、景気が悪いと判断する企業が多くなっている。

そして、きのうの1112日、私は、次のようなニュースを目にした。

「内閣府が12日発表した7〜9月期の機械受注統計によると、企業の設備投資の先行きを示す「民間需要」(船舶・電力を除く、季節調整値)は、前期(4〜6月)比10・0%減の2兆3813億円となった。
 5四半期ぶりのマイナスで、下落率はリーマン・ショック後の2009年1〜3月期(11・4%減)以来の大きさだった。」(読売新聞、 1112()1111分配信)


 日本経済は、私の予想を超えて悪くなっている。今や、景気動向に強い影響を与える日本の設備投資も変調をきたしている。


 私は、10月23日のブログでは、こう述べておいた。
「中国の不動産・株式バブルの崩壊と経済の減速、新興諸国経済の悪化、アメリカの利上げ問題、フォルクスワーゲンショック、日本の景気懸念などと、大本のところで株価に対する悪材料が転がっている。こうした悪い状況の中でも、日経平均の株価の乱高下がつづく。……いや、最近は上昇基調のなかでの株価の動揺といった方がいい。まだバブルの上昇余力があるのかも知れない。」

 その後日本の株価が動揺しながら上がっていっている。景気が悪化する中、株価はどこまで上がっていくのだろうか。
  昨日は、日経平均株価が118.41円下がりましたね。しかし、このところ株価は乱高下しながらも上昇基調にあると思う。

 9月29日に1万7000台を切ったあと、上昇基調に移り、昨日は下落したとはいえ、約1万8400円となっている。

 今日は、景気悪化のなかでのこの株価の上昇基調について私の考えを、不十分ながら述べていきたい。

 
 912日のブログ記事「日本経済はついに「景気後退局面」に入るのか」で、私は、こう述べた。


 「まだはっきりとしたことは言うことはできないが、日本経済は減速し、景気後退局面に入るような気配を示している」。


 そして、個人消費の落ち込み、輸出の減少、機械受注の減少を具体的に分析した後、こう結論した。


 「 個人消費・設備投資・輸出と三拍子そろって悪い。経済学的に見ても景気後退の典型的パターンだ。中国経済の減速が懸念材料となっている」。


 日経平均の株価の動きについて、10月5日のブログ記事「新興諸国からの深刻な資本流出――世界経済に与えるその打撃」で、こう書いた。


 「中国の不動産・株式バブルの崩壊と経済の減速、新興諸国経済の悪化、アメリカの利上げ問題、フォルクスワーゲンショック、日本の景気懸念などと、大本のところで株価に対する悪材料が転がっている。


 この大本のもとに、釈迦の手のひらの上を飛ぶ孫悟空のごとく、株価が乱高下している」。


 状況は、好転していない。むしろ悪化している。


 1023日付の(デジタル)は、こう伝える。


「経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%低下の97.0だった。低下は2カ月連続。生産の基調判断は「一進一退で推移している」から「弱含んでいる」に変更した。……在庫指数は0.4%上昇の114.1。在庫率指数は6.1%上昇の119.1だった」。


 つまり、鉱工業の機械設備の「稼働率」が落ち、生産が減退していくなかで、売れ残りが増えて在庫が積みあがっている状況だ。


 同じ日本経済新聞は、102日付の記事で、こう述べている。


「 総務省が2日発表した8月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.4%で、前月に比べ0.1ポイント上昇した。悪化は2カ月ぶり。」


 つまり、完全失業率も悪化している。日本経済にあまりいい材料はない。むしろ、日本経済は悪化していっているという状況だ。


 これに最近中国経済の減速がいっそう深刻化しているという事実が伝えられた。つまり1019日にロイターは、「中国成長は6.9%に減速。6年半ぶり低水準」と伝える。

 中国国家統計局も、中国の経済減速が深刻であり、7%を切ったと報じたのである


 こうした悪い状況の中でも、日経平均の株価の乱高下がつづく。いや、最近は上昇基調のなかでの株価の動揺といった方がいい。まだバブルの上昇余力があるのかも知れない。

 日本の株式市場関係者は、どんなささいな理由でも見つけては株価を上げたがる。景気悪化も株価引き上げの材料になる。あまりの景気の悪い材料に、日銀がさらなる「金融緩和」を行うだろうと期待しては、株価を引き上げるのである。

 


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