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2010年のギリシャ危機は、アメリカの三大格付け会社が一斉にギリシャの国債の格付けを引き下げたのを引き金にして始まった。ギリシャ国債は、投機の嵐に見舞われ、暴落した。
つまり2009年12月アメリカの三大格付け会社は次のようにギリシャ国債の格付けを一斉に引き下げた。
フィッチ A- → BBB+ ((12月8日)
S&P A− → BBB+ (12月16日)
ムーディーズ A1 → A2 (12月22日)
格付け会社は、国債、債券、証券にたいして優・中程度・投機水準などの格付けをおこない、投資家にリスク判断の材料を提供する会社である。今日アメリカの三大格付け会社、すなわちムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングスが、世界の格付けを支配している。
格付けにあたって、S&PとフレッチはAAA(最優良)やBBB(中程度)、ムーディーズはAaa(最優良)やBaa(中程度)などという記号を用いている。
金融グローバリゼーションが進み、世界を舞台にして投資が盛んになされる。それとともに、リスク判断をする格付け会社の役割がますます重要となった。しかし、他方で、企業と金融機関との格付会社の密着性が指摘され、その判断が客観的であるかどうか、疑念も出されている。とくにサブプライムローン証券の評価付けは、格付け会社の信用を一挙に落とした。
ギリシャ危機に始まるユーロ危機に際しては、三大格付け会社と国際投機資本が手を携えて国際金融を混乱させているという批判も出た。格付け会社に対処するために、2013年5月13日、EU(欧州連合)の理事会は、新しい規制を採択している。
なお、2011年8月5日にS&Pが米国国債の格付けをAAAから一ランク引き下げて、全米のみでなく世界を震撼させた。この時、S&Pは、計算間違いやインサイダー取引などが指摘され、”フルボッコ”、すなわち袋叩きにされたという。
上条勇『日本を貧しくしないための経済学―ほんとうにだいじなお金の話』ナカニシヤ出版、2015年、136-137ページより
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ギリシャ危機とユーロ危機
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政府債務残高世界No.1
2014年の政府債務残高は、対GDP比で日本が246.42%で世界ダントツである。2位のギリシャ177.19%をはるかに引き離している。
しかもギリシャの政府債務残高は、危機が生じた2010年の3290億ユーロから2014年の3170億ユーロへと減っているのだ。にもかかわらず対GDP比の借金が2010年の145.67%から2014年の177.19%に増えているのは、計算の際に分母にくるGDPが激減しているせいだ。ギリシャは、厳しい緊縮財政の押しつけによる景気悪化によって、同じ時期GDPは2260億ユーロから1790億ユーロに激減している。
ちなみに、政府債務残高の順位は、第3位ジャマイカ140.64%、第4位レバノン134.41%、第5位イタリア132.11%と続く。アメリカは第14位104.77%、ドイツは38位73.11%である。
投機の役割
先進国中最悪というべき深刻な財政危機をかかえる日本で円危機が生ぜず、なぜギリシャの財政危機がユーロ危機を生み出したのだろうか。
わたしは、そのカラクリが「投機」にあると思う。ユーロ危機に際しては、アメリカの格付け会社が必ずこれらの国々の国債の格付けを下げる。これを受けて猛烈な投機の嵐が吹き荒れる。その結果、国債が暴落し、信用の危機に陥って国債が発行できなくなる。返済期限のきた国債は借り換えることができない。現金が必要になる。しかしその現金ない。2010年のギリシャ危機は、かくして生じた。
私はギリシャと日本の明暗は、ギリシャの方が、国際投機資本(ホットマネー)に狙われやすかったことにあると思う。
もし日本に国際投機資本が襲来したら
ちなみに、日本の2014年度の国債発行額が約180兆円である。その4分の3以上が借金支払い引き延ばしである「借換国債」をなしている。日本に国際投機資本がどっと押し寄せて、日本国債に対する嵐のごとき投機をおこなうことになったりしたら、と想像するとゾッとする。
いくら国内金融機関の日本国債保有率が高いと言っても、国債のカラ売りの前にはどうしょうもない。日本国債の暴落によって、国債を多数保有する銀行は、かえって経営危機におちいる。国債を対象に運用している年金資金も破綻の危機にみまわれる。
何よりも、国が国債の借り換えをできなくなれば、どうなるのか。この時、借金返済のために国は、日本の一般会計予算総額を超えるぼう大な現金を必要とする。国債発行に携わる日銀関係者は、このことを考えて、冷や汗を流しているかも知れない。
財政危機の解決策はあるのか?
雪ダルマ式に増えつづける政府債務残高を見るにつけ、政府が責任逃れして問題を先送りすることは、これ以上許されない。わたしは、安倍政権が大型公共事業に走り、財政支出を増やしているのは、無責任な政策だと思う。
ただその際、わたしは、政府が闇雲に増税と財政削減に走ることも愚策だと思う。この場合、景気悪化をとおして経済に悪い影響を与え、税収もかえって減り、「またやっちまったね」となりかねない。
また日銀が国債の大半を買いまくって、超インフレを引き起こし、国のいわゆる「借金帳消し」によって解決をはかることも許されない。これはインフレによってお金の価値をただの紙切れに近づけて借金を目減りさせる方法である。それとともに国民の「虎の子」の預金も目減りし、かぎりなくゼロに近づくことになってしまう。
バラ色の道はなし
それではどうしたらよいのだろう。財政再建は、
財政支出の削減、
増税による税収増、
経済成長による税収増
国の財産の切り売り
日銀による国債の買い取り、
そして物価上昇による借金の目減り・借金の帳消し
の6通りの方法の計画的な組み合わせによる長期的な道しかない。今までいいだけ問題先延ばしをし、ここまでこじらせ、将来につけをまわしたのだから、バラ色の道はない。みなさんはどう考えるのだろうか?(結)
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よくギリシャがダメな理由として、
・公務員が多い(勤労者の4分の1)
・ギリシャ人は怠け者である
・ギリシャ人の年金は高い
ということが、言われる。ほんとうかな。脳梗塞後のせいで細かく調べる根気がないのが残念だが、これらの指摘は、一種の「神話」であると思う。
第一に、世界でも極端に公務員数が少ない日本から見ると多いようだが、ヨーロッパでは、公務員が勤労者の4分の1、あるいはそれを超える数字は、福祉・社会保障が充実している多くの国でみられる。人口1000人当たりの公務員数はギリシャよりドイツの方が多い。
第二に、労働時間の統計では、ドイツ、フランス人よりギリシャ人の方が長時間働いている。昼にビールを飲み、昼休みに2時間の休みをとり、夕方5時かっきり家に帰る。これはドイツ人の話である。だからと言って、我々はドイツ人を怠け者とは言わない。
第三に、ギリシャ人の所得がEU平均よりはるかに低いこともあって、2010年からこの間、緊縮財政で年金は随分削減されてきたこともあって、現在ギリシャの年金額はドイツ人やフランス人よりはるかに低い。
2010年のギリシャ危機の本当の原因を調べたことがあるが、真の原因は別のところにあった。ギリシャの経済の主軸は、観光業と海運業にあった。この2つは、世界の景気に左右されやすい。だから、これらは国際金融危機後の世界的不況によって深刻に業績が落ち込んだ。ギリシャは不況による税収減、景気対策による財政支出増、銀行救済で巨額の財政赤字におちいった。
ギリシャの経済を特徴づけるのは、その他に、繊維、皮革などの軽工業である。これは後進国が経済発展する際の主力産業である。それが新規EU加入の東欧諸国の競争にさらされ、そして中国との競争にさらされ、不振におちいる。
他にとるにたる輸出産業がない(オリーブ油の輸出があるが)ギリシャにとって、これは痛手だった。.
ギリシャは、緊縮財政でここ5年間の景気後退でGDPが30%減ったという。これまでの緊縮財政は、ギリシャの経済破壊であったと思う。今回の支援合意で、ギリシャはいっそう厳しい緊縮財政をとらなければならない。いったいどうなるんだろう。
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7月13日ユーロ圏首脳会議でギリシャ支援で原則合意した。いつもながらのドタバタ劇であったと思う。
いつもの私ならば、ギリシャ問題を細かく徹底して調べて論じたことだろう。しかし、脳梗塞後の今は、そんな気力も根気もない。それで、感想めいたことだけ述べよう。
今回のドタバタ劇を見て、何度もあったギリシャ危機の初期のパパンドレウ政権を思い出した。パパンドレウの全ギリシャ社会主義運動は、福祉・社会保障の充実を公約にして、選挙に勝利した。しかし、前政権の財政の粉飾決算を暴露して、ギリシャ危機を生んだ。 公約に反し、緊縮財政に走る。
パパンドレウのもと、第二次ギリシャ危機が生じた時、ドイツがギリシャに厳しくあたる今日と同じ場面が展開された。ギリシャのユーロ離脱を語るドイツ政府高官も出てきた。苦境にに陥ったパパンドレウは、国民投票に打って出ると宣言した。そしてドイツ、フランスの袋叩きに会い撤回した。
その後、全ギリシャ社会主義運動は総選挙に敗北し、今日見る影もない。
今回の動きを見ると、この事実をつい思い浮かべる。チプラス首相は、国民投票の実施のこぎつけた。しかし選挙公約に違反し、国民投票の意向に反し、ドイツの押し付ける緊縮財政を飲んだ。
ギリシャは国内で合意できるか。チプラスはパパンドレウの道をたどるのか。今後ギリシャはどうなるか。
少なくとも、支援合意は問題先延ばしで、根本的な解決にはならないとだけは言える。
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ニュースによると、ギリシャへの配慮を示すフランスのオランド大統領を押し切り、ドイツのメルケル首相がギリシャに緊縮財政の厳しい最後通牒をおしつけたようですね。
昔は、(西)ドイツは、EU統合において、「金は出すけど、口は出さず」という態度をとっていました。
「独仏枢軸」のEU統合といわれながら、ドイツは政治において謙虚に振る舞い、フランスのリードに任せていました。
今日、ドイツは、「金はあまり出したがらず、口は出しすぎる」という事態になっています。昔日の感があります。
いったいいつの頃からそうなったのでしょうか。東西ドイツの統一からだと思います。
この時、ベルギー、オランダなどの小国は、ナチス・ドイツの復活の悪夢に震えました。当時のフランスのミッテラン大統領は、モスクワに飛び、ゴルバチョフ大統領に、東西ドイツの統一を支持しないように訴えています。
結局、ヨーロッパ統合にドイツを繋ぎ止めるために、「マルクをなくして単一通貨へ」という掛け声のもとに、ユーロが導入されました。そして、ドイツの未来はヨー ロッパ統合とともにあるという時のコール首相の約束とともに、東西ドイツの統一が認められたのです。
それが、EUにおけるドイツの天下が実現しようとは。私は、ドイツが強く介入するほど、EUの雰囲気が悪くなっていると思うのですが。
輸出大国ドイツはユーロ安の恩恵を一番受けているということも指摘しなければなりません。
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